2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」
ローマ法王 アウシュビッツ訪問
“過去とつながっている”
虐殺の犠牲者追悼
【ベルリン=中村美弥子】ドイツ出身のローマ法王ベネディクト十六世(79)は二十八日、ユダヤ人ら約百十万人がナチス・ドイツによる虐殺の犠牲となったポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所跡地を訪問し、平和を祈りました。
法王は「労働は人を自由にする」とドイツ語で書かれた門を徒歩でくぐって収容所に入りました。多数の収容者が銃殺された「死の壁」で生存者と対面。その後、収容者の身代わりになって殺されたコルベ神父がいた房に向かいました。
法王は収容所での式典で、虐殺の犠牲者を追悼しました。イタリア語でスピーチを行い、「キリスト教徒として、またドイツ出身の法王として、この恐怖の場で話をするのはとりわけ困難で苦しい」と切り出しました。「きょうはドイツ人の子として訪れた」と述べ、「必ずここに来なければならなかった」と語りました。
歴史の教訓について、「過去はいつもわれわれとつながっている。過去はわれわれが選ぶべき道とそうでない道を示している」と語りました。
ローマ法王がアウシュビッツ強制収容所を訪れたのは、ポーランド出身の故ヨハネ・パウロ二世が一九七九年に訪問したのに続き二人目です。ドイツ出身の現法王は収容所を訪問し、犠牲者を追悼することで、ユダヤ教徒との和解を目指しました。法王は青年時代、ナチスの青年組織「ヒトラー・ユーゲント」に所属した過去があります。
法王は二十五日からポーランドを訪れており、二十八日が最終日。この間、首都ワルシャワや南部のパウロ二世の生誕地バドビツェなどを訪問しました。クラクフで二十七日に開かれた若者らとの対話集会には十万人以上、二十八日の大規模な屋外ミサには九十万人が集うなど、各地で歓迎を受けました。

