2006年5月29日(月)「しんぶん赤旗」
主張
日米同盟強化
米英関係がモデルという危険
米軍再編の「最終報告」の合意をうけ、六月の日米首脳会談で日米同盟強化について議論されるといわれています。注目されるのは、日米同盟を米英関係のような軍事同盟に変えようとする議論が急浮上していることです。
久間章生自民党総務会長(元防衛庁長官)が五月初めの「日米安全保障戦略会議」(ワシントン)で、「日米関係を一歩でも米英関係や米豪関係に近づけ、地域と世界の安定に貢献したい」とのべたのはその一例です。自民党国防族の代表格の発言であり、見過ごしにできません。
ともに戦争する関係
米英同盟は条約も持たない、一心同体で侵略戦争をたたかう攻守同盟です。両国は大量破壊兵器をもっているとうそをついて、イラクを先制攻撃しました。NATO(北大西洋条約機構)諸国のなかからでさえ反対の声が噴出しました。ブッシュ、ブレア両首脳が厳しい批判をあび、孤立を深めているのは当然です。
憲法で戦争放棄、戦力不保持を明記した日本が、無法な米英同盟をモデルにすることは許されません。
もともと米英同盟をモデルにするよう圧力をかけてきたのは米国です。二〇〇〇年の「アーミテージ・リポート」は「米国と英国のような特別な関係は米日同盟のモデル」と明記しました。米政府として口にできないことをアーミテージ氏らが代わって日本につきつけたのです。
小泉政権はこのリポートが示した米英同盟に近づこうと、アメリカの求めに応じ、自衛隊のイラク派兵、ミサイル防衛協力の拡大、日米軍事一体化、米軍再編などを具体化しています。イラク多国籍軍から撤退する国が相次いでいるのに、自衛隊を撤退させるどころか、航空自衛隊の軍事輸送地拡大をねらっているのもその思惑からです。
米軍再編の「最終報告」は、日米同盟を「より深く、より幅広く、発展」させるといっています。これは米国防総省が二月公表したQDR(四年ごとの国防計画見直し)にそった米国の対日要求です。QDRは「米軍とともにある英国や豪州との独特の関係」が「他の同盟との間ではぐくもうとしている協力の幅、広さ、深さのモデル」とのべています。米軍再編が日米同盟の攻守同盟化を目標にしているのはあきらかです。
米国大使館のメア政治部安全保障部長は、防衛庁主催「米軍再編シンポジウム」で、「同盟能力を向上させる」「米軍と自衛隊をもっと融合して、ある意味で統合する必要がある」とのべました(二十日)。イラクに派兵したものの後方支援に終始する自衛隊を、米軍の作戦統制下でたたかう英軍と同じ戦闘集団に変えるねらいをむきだしにしたものです。アメリカの思惑通りに自衛隊を英軍並み軍隊に変え、日本を「戦争する国」に変えさせるわけにはいきません。
憲法九条を擁護し
米英同盟は集団的自衛権の行使を認める攻守同盟です。集団的自衛権はベトナム戦争をはじめとした戦後の侵略戦争の手段となってきました。攻守同盟は国連憲章の戦争違法化を実現するための障害物です。この解消が国際的課題です。日本国憲法は政府見解でも集団的自衛権の行使を禁止しています。
紛争を戦争でなく話し合いで解決するとの主張が国際社会の大勢だという事実を見ずに、米英並みの攻守同盟をめざすのは誤っています。
日本は、憲法九条を守り広げ、国連憲章下での平和のルールづくりに貢献することこそ目標にすべきです。