2006年5月27日(土)「しんぶん赤旗」

「行革」5法が成立

共産党反対 安全・生活切り捨て


民主は4法賛成

 小泉内閣が最重要課題と位置付ける「行革」関連五法案が二十六日、参院本会議で自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党は、国民の安全・くらしにつながる公共サービスの切り捨てにつながるとして五法案に反対、社民党も反対しました。

 五法は、「行政改革推進」法と「市場化テスト(公共サービス改革)」法、公益法人制度「改革」関連三法。詳細な制度設計は今後にゆだねられ、小泉「構造改革」「小さな政府」路線を継承させる狙いがあります。

 三年間で二割の国家公務員削減を主張する民主党は、「行革推進」法のみ反対しました。

 「行革推進」法は、五年間で国家公務員5%以上、地方公務員4・6%以上の純減目標をかかげました。地方公務員三百万人のうち、国が基準を定める教育、福祉、消防、警察などの分野は二百万人いますが、基準を低めて削減することを打ち出しています。国家公務員については、六月中に具体的な純減計画を策定する方針です。

 中小企業のセーフティーネットの役割を果たしてきた商工組合中央金庫や国民生活金融公庫などを含む政府系八金融機関は民営化や統合で二〇〇八年度に一機関に再編成。融資残高の「縮小」を明記しています。

 「市場化テスト」法は、行政機関と民間企業で公共サービスの担い手を競争入札で決める制度を導入するものです。すべての公共サービスが対象で、民間企業からの提案を受けて政府は毎年「公共サービス改革基本方針」を作成します。


財界が推進 地方からは異議

 「小さな政府」のかけ声のもとにすすめられてきた「行政改革」関連法が二十六日に成立しましたが、国民へのサービスを切り捨てる同法の狙いと本質は、日本共産党の国会論戦でうきぼりになりました。

 審議の中で小泉純一郎首相は「民間でできるものは民間で」と何十回となく繰り返しました。しかし、行政による公共サービスの提供は、「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」との憲法二五条のもと、所管省庁等が法令に基づいて実施しているものです。その民間開放は国・行政の責任を放棄するものです。

 日本は政府も認めるように、主要国の中でも「小さな政府」であり、必要な役割が果たせていません。さらに公務員を減らすのが「行革推進」法案です。

 気象庁は定員を純減して二〇一〇年までに現在ある四十六カ所の測候所を廃止する計画です。他の分野でも、サービス残業や劣悪な労働条件を調べる労働基準監督官は全国五百七十二万の民間事業所に対して二千八百九十二人しかいません。

 必要最低限のサービスを保障するために国は各分野の地方公務員の配置基準を定めていますが、「行革推進」法はその基準を引き下げて削減のてこにしようとしています。

 しかし、保育所の保育士でいえば国基準では必要な保育ができないとして、実際には国基準の平均一・八倍の保育士が配置されています。基準をさらに引き下げれば民間も含めて保育の質の低下を招くことは必至です。

 少人数学級の実現は国民的願いですが、「児童及び生徒の減少に見合う数を上回る数の純減」と特記して、その願いに背を向けています。こうした小泉「行革」の動きに、地方から“異議あり”の声が相次いでいます。

 北海道赤平市議会は「公共サービスの質と量における地域間格差が広がりかねない」(意見書)と指摘。新潟県見附市議会は「公共サービスの民間化」は「地方切り捨てにもつながり、住民生活のセーフティーネットの破壊にもなりかねません」(意見書)と訴えています。

 「行革推進」法、公共サービスの担い手を官民競争入札で決める「市場化テスト」法はいずれも財界・日本経団連が要望してきたものです。

 「市場化テスト」法を推進してきた規制改革・民間開放推進会議の議長はオリックス会長、国家公務員純減の具体化を検討している「行政減量・効率化有識者会議」の座長はセコム・グループ最高顧問といった具合です。財界は「五十兆円のマーケットだ」と企業によびかけています。「『官から民へ』というのは、裏を返せばただの大企業のもうけ話」(大門実紀史参院議員)なのです。

 「行革」関連法は成立しましたが、詳細な制度設計はこれからであり、世論と運動で、押し返していくことが求められています。(村木博)


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