2006年5月26日(金)「しんぶん赤旗」

自立支援法施行を前に

障害持つ娘と無理心中の母

“利用料払えない”

福岡地裁初公判


 今年三月、障害のある二女(当時二十七歳)と無理心中を図り、二女を殺害したとして殺人の罪に問われた福岡市の母親(53)=無職=の初公判が二十五日、福岡地裁(鈴木浩美裁判長)で開かれました。障害者自立支援法で新たに導入される訪問介護などへの利用料が払えないことを理由にサービスを断り、母親が一人で介護するなかで起きた事件。施設関係者は「障害者の生きる権利を奪うことは許されない」としつつ「介護に疲れ果てた末の突発的なこと」として母親の減刑を求め嘆願書を集めています。


 母親は、三月十一日の早朝、福岡市中央区のマンションで眠っていた二女の首を電気コードで絞めて殺害したとされます。公判で母親は「はい、間違いありません」と起訴事実を認めました。

 冒頭陳述などによると、二女は二〇〇一年、脳出血で倒れました。同時期、障害一級と認定。事件直前には、つえを使い一人でトイレに行けるようになり、少しは会話もできるまでに回復していました。

 母親と二女は長男と三人暮らし。二年前亡くなった夫の遺族年金や、二女の障害年金など月二十五万円で生活していました。事件のあったマンションは夫が亡くなった翌月、親族などに迷惑をかけず暮らしていこうと購入。二女の医療や介護に自己負担はなく、日常生活に支障がでるとは見込んでいませんでした。

 しかし、住宅ローンなどで予想以上に出費がかさみ、貯金を取り崩して生活する状態に。昨年二月時点で二百三十九万円あった貯金残高は、今年二月には四万二千円に「激減」していました。

 さらに、今年四月からは障害者自立支援法が施行され、二女の受けていた訪問介護などに一割負担が導入されることになりました。低所得者には軽減措置がありますが、母親は「(一割負担で月)三万円かかる」と思っていたといいます。

 今年二月「自分で介護しなければお金が払っていけない」と障害福祉施設関係者に漏らし、サービス利用をすべて中止しました。一人で介護を試みたものの「想像以上に負担が大きく今後どのように介護していけばよいか不安を覚え」ました。

 昨年暮れ「死んだら楽になる」と長女に漏らすようになっていた母親は、さらに自殺願望を強めるようになりました。事件三日前には「一緒に死のう」と長女に電話。長女の説得で思いとどまりますが、事件当日「自分だけ死んだら二女が満足な介護を受けられず不幸にしてしまう」と二女を殺害して自殺することを決意しました。「ごめんね、ごめんね、一緒に死のう」と言いながら二女の首を絞めて殺し、自らも両手首を切り腹部を包丁で刺しました。

 初公判の被告人尋問で母親は「今年に入って体が動かなくなった」と何回も繰り返しました。母親は股(こ)関節に障害があり自身も障害四級を認定されています。


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