2006年5月24日(水)「しんぶん赤旗」

天然ガス・パイプライン

インドの戦略に変化

イラン核問題で米国に配慮


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 【ニューデリー=豊田栄光】インドの天然ガス・パイプライン戦略に変化が表れています。背景には、イラン核問題と関連した米国への配慮が働いているとみられています。

 南アジアでは「イラン→パキスタン→インド」(IPI)と「トルクメニスタン→アフガニスタン→パキスタン」(TAP)の二つのパイプライン計画があります。インドはこれまでIPI推進に力を入れてきましたが、シン政権は十八日、TAPに参加することを閣議決定しました。パイプラインをインドまで延長することとなり、名称も「TAPI」となります。

 シン首相は昨年十二月の内閣改造で、IPI推進派のアイヤル石油・天然ガス相を解任。今年二月にはTAP運営委員会にオブザーバー参加し、着々と閣議決定の準備を進めてきました。

 一連の動きの背景についてサラン外務次官は、石油・天然ガス省に送った文書(四月二十四日)で次のように説明しています。

 「イラン核問題で緊張が継続するとの見地から、IPIは、仮に関係当事国が互いに受け入れたとしても、実現は容易ではないだろう」「(TAPは)最近の米国が考える(中央アジア)地域の戦略と調和している」(インディアン・エクスプレス紙)

 サラン次官がこの文書の存在を認めると、インドのマスコミは「IPIへの好意を失いつつある政府」などと報じました。

 インドは核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器保有国になりました。このため国際社会は、核燃料ウランや原発技術などのインドへの輸出を制限しています。

 三月に訪印したブッシュ大統領は、インドに民生用の核技術を提供する協定を結びました。

 インドはエネルギー不足解消のために、原発建設に力を入れています。米国との協定を力に、輸出制限措置の撤廃をめざしています。こうした思惑からシン政権は、米国との良好な外交関係の維持を望んでいます。インド共産党(マルクス主義)は「政府は米国の戦略的利益を優先している」と批判しました。

 米国はIPIには懸念を表明しているもののTAPは支持し、アジア開発銀行も後押ししています。

 インドはIPIの協議は続け、二十二日にはイスラマバードでイラン、パキスタンとの閣僚級会談も開かれています。イランとパキスタンは四月三十日、インドが撤退しても二カ国だけで建設を進めることを確認しました。外交関係者の中には「イラン離れを強めるインドへの決別宣言」との見方も出ています。


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