2006年5月22日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

農業の担い手

後継者を育てます


 大多数の農家が切り捨てられる政府・自民党の農政「改革」の下で、“つづけたい人、やりたい人を大事な担い手”として育てようと後継者づくりに力を入れる自治体があります。高知県と愛知県蒲郡市をみてみました。


体験塾開き県が研修

20代−50代 全国から希望者

高知

 何とかして就農者を増やしたい―。そんな思いから高知県が二十ヘクタール余のキャンパスを持つ窪川(くぼかわ)アグリ体験塾(高知県立農業大学校研修課担当)を開設したのが、二〇〇三年四月でした。就農希望者のための長期研修コースがあります。昨年度までに四十六人が研修を受け、うち二十三人が就農しています。四万十町(しまんとちょう)黒石にある同塾をたずねました。

 入り口からメタセコイアの並木が続いています。図書館、宿舎、ビニールハウス、畑、田んぼ…。

宿舎、食事も完備

 長期研修は三カ月、六カ月、一年の三コース。条件は終了後、高知県での就農をめざすことです。いま研修しているのは東京都、埼玉県、大阪府、広島県、高知県出身の二十歳代から五十歳代までの十一人(うち女性二人)です。

 研修料は一日四百七十円、同塾内の寮の宿泊料は一度シーツ代千円を出すだけで無料。食堂あり、食費は日に千円と手厚いシフトになっています。

 午後、ビニールハウスでの稲の種まきが始まりました。研修生六人に講師二人。機械に水稲培土と種を入れ育苗箱(いくびょうばこ)をつくっていきます。研修生たちは講師の話をノートにメモしながら作業に入ります。

 並べた育苗箱にシルバー資材をかけます。そして、その上に目の荒い布の寒冷紗(かんれいしゃ)をかけます。温度を三十度に保つためです。研修生から「何日したら生えてきますか」「シルバーは空気が通りますか」など質問がでます。

 差し入れのコナツ(小夏)が届き一休み。研修生たちの話を聞きました。

 「勤めをしていましたが土をいじるのが好きだから。いい勉強をさせていただいています」(福岡県出身の二十三歳の女性)。「運送会社で運転手をしていました。うちが農業をやっているので将来は農業をやろうと…」(高知県の二十九歳の男性)。「ホテルの支配人でしたが次のステップにと思いまして。ずっと人とのつきあいでしたから後は自然を相手にしたほうがいいかなと…」(高知県の五十六歳の男性)。

基本から指導

 同塾研修課長の川瀬一郎さんはいいます。「この作業をなぜやるかをわかってもらえるようにしています。基本がわかれば応用はできます。『私たち職員は県費で雇われて教えるためにいます。使う側はあなたです。遠慮しないで聞いて』といっています」

 長期研修の定員は二十人程度、寮は三十一人泊まれます。

(藤原義一)


新規就農に市奨励金

農協が遊休地で技術指導

愛知・蒲郡

革新懇が学習会

地図

 「イタリアのミカンが今日、輸入解禁になりました」と話す、岩瀬義人元ひまわり農協組合長。ハウスミカン日本一の生産を誇る愛知県蒲郡市(がまごおりし)で七日、「蒲郡の農業を考える」学習会が革新蒲郡まちづくり学校(=地域革新懇)の主催で開かれました。

 農業委員、新規就農者、消費者、市民、日本共産党市議団など三十人が参加し、「蒲郡の農業は、どうやって生き残るか」と白熱の議論が交わされました。

果樹栽培盛ん

 蒲郡市は、人口八万二千人、三河湾に浮かぶ竹島や、温泉など観光資源に恵まれています。温暖な気候を生かし、果樹(ミカン・イチゴ)の栽培が盛んです。

 しかし、この二十六年間で農家は、二千四十七戸(一九八〇年)から千二百四十五戸(二〇〇五年)に四割近く減少しています。一方、新規就農者は、新規・Uターン(都会から戻る)青年が三十五人、Uターン中高年を含めても六十四人です。

 党市議団はこれまで遊休農地対策や、農・漁業後継者支援を議会で実現を求めてきました。

 蒲郡市は今年度予算に農業・漁業新規就業者奨励金制度を新規事業として組み込みました。後継者を増やしたいと、新規学卒者十万円、Iターン(都会の人が地方に)、Uターン者には十五万円を支給します。

 遊休農地対策では昨年度から、農家が市民農園を開園する際の奨励補助金や、農協が遊休農地を借り上げ技術指導をする制度も始まりました。順調に申し込みがあり、研修して独立する人も出ています。

 定年退職後、農業に取り組み、現在千八百十五平方メートル(五百五十坪)を借りて、自然薯(じねんじょ)などを栽培している市民に聞くと「農協の産直部会で、作り方を教えてもらっている」といいます。

 農家は国の地域農業切り捨て政策の中で生き残れるのか、迷いと不安があります。息子夫婦と四人で専業農家をしている元女性農業委員は、息子がサラリーマンの方が安心だったと語ります。

 観光地を生かして「道の駅」建設の要望が出される一方で、採算がとれるのかという、疑問の声もあります。

 「農業を考える」学習会では、これまでつながりのなかった女性の農業者グループから、「またぜひ話をしたい」と市議団に要望が出されたり、消費者と農家の交流の話が持ち上がっています。

 革新蒲郡まちづくり学校でも第二弾の農業問題学習会を計画しており、農家の熱意に応える取り組みやネットワークの広がりが進みそうです。

(日恵野佳代市議)


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