2006年5月22日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
夢中
300年続く伝統 白根大凧合戦
新潟・「六銭会」
越後平野の初夏を彩る風物詩として親しまれている新潟市白根(しろね)地区(旧白根市)の白根大凧(たこ)合戦。約三百年の伝統があります。古き良き伝統が失われつつある昨今、毎年六月初旬に行われる勇壮な凧合戦に向けて、同市の若者たちが熱い思いを抱いて取り組んでいます。(新潟県・村上雲雄)
半年がかり
「空中で凧が回転し絡まる瞬間、なんともいえない心地よさになる。風の向き、強さ、綱を引っ張ったりゆるめたり、いろんな技術とかけひきがあって絡められる。半年もかけて凧作りと凧合戦する気持ちはやった人でないとわからない」。こう語るのは、巻凧組「六銭会(ろくせんかい)」の凧合戦技能部長の長谷川貞治さん(31)です。巻凧とは、六角凧で縦骨を外して巻くことができる凧のこと。
「六銭会」は、メーンの大凧合戦に参加することが難しいため、巻凧合戦に参加しようと、三年前に二十代と三十代前半の青年で結成。準会員の高校生などを含めると十数人の会になります。巻凧組が五十組ある中で、ほとんどが企業や町内年配者の組。有志でしかも若手で組を作っているのは異色の存在です。
大凧は一年がかりで作りますが、「六銭会」の巻凧(六畳大)は前年の十二月から製作に着手。支柱の竹の骨組み、紙張り、下絵書き、色塗り、鼻緒立て(ひもつけ)を経て、組で決めている武者絵の絵柄を描きます。その巻凧・六十枚を半年がかりで作るのですが、六十枚作っても五日間の凧合戦でほとんど使い果たしてしまいます。
心を一つに
会員の職業は、鉄工所や建築業、植木屋、保育士など多彩。保育士の武田哲也さん(23)は「巻凧なら若い者が自分たちで作り、揚げられると思い、会に参加した。一人ひとりが責任を持ってやれる。みんなで意見を出し合い、同じ思いで揚がったときの楽しさはすばらしい。保育園児が大きくなったら凧合戦に参加してほしい」と語ります。
凧合戦は毎年、けが人が出て救急車で運ばれるほどの激しさ。男性中心の中、紅一点のメンバー・笠原春美さん(28)は「みんな真剣に取り組んでいるから、溶け込むのが大変なときもある。でも凧が絡まる瞬間が一番やりがいを感じる。子どものころから凧合戦を見てきて、凧合戦は盆と正月がくるような感覚になる」といいます。
互いに成長
「六銭会」は、凧合戦でどれだけ多く凧を絡められたかを競う技能の部で昨年、五十組中、六位入賞を果たしました。
五十嵐宣恒会長(34)は「今の世の中は殺伐としてさみしいことばかり。若者が熱くなれるものが大切。凧合戦は伝統行事であり、町の人が夢中になれるもの。作業は大変だが、凧が揚がるのを想像して一枚一枚作っている。年中凧のことを考えており、夢に出てくることも多い。会では自由に意見を出し合っている。ここで若い人に付き合い方や人間として大事なことも教えている。お互いが成長できる重要な場にもなっている」と語っています。
白根大凧合戦は、関係者の努力で年々盛況になっています。長谷川さんはいいます。「十歳のときから凧にかかわってきて、父から教わったり、技術を盗んだりしてきた。今もみんなのアイデアをとりいれ、よりよいものに改良している。凧合戦は伝統あるいいものだから、伝統を守り若者らしく、明日へつなげていきたい」
白根大凧合戦 川幅80メートルの中之口川をはさみ、東軍(白根側)と西軍(味方側)に分かれて戦う世界最大スケールの大凧合戦。町内会からなる両軍の13組が畳24枚大の大凧を揚げ、空中で絡ませ川に落とし、相手の凧綱が切れるまで引き合います。大凧合戦のほか、六角形の形の巻凧が50組で戦う巻凧合戦、子ども凧合戦があります。今年は6月2日から6日までの期間中(毎日午後1時から6時まで)、大小合わせて千数百枚の凧が揚がります。
江戸時代の中ごろ、白根町の人が中之口川の堤防の改修工事の完成を祝って藩主から贈られた凧を揚げたところ、対岸の西白根に落ち、家や農作物を荒らしました。これを怒った西白根の人が対抗して凧を揚げて、白根側にたたきつけたことから凧合戦が始まったと伝えられています。
問い合わせ先、新潟市白根支所商工観光課025(373)2111
お悩みHunter
アルバイトの場合は生理休暇とれるの?
Q 今年、高校を卒業し、会社の採用試験を受けましたが、正社員になれませんでした。家でぶらぶらしてるわけにもいかず、アルバイトをと思ってます。疑問なのですが、アルバイトの場合、生理休暇はとれるのでしょうか。どんなことが認められるのでしょうか。(18歳、女性。福島県)
働く権利・労基法など学んで
A 現在、企業は正規雇用に代え、パートやアルバイトなどの非正規雇用にして、経費の削減を図っています。あなたが正社員になれなかったのは、こうした背景によるものだと思います。
しかし、「非正規」といっても、労働基準法や労働組合法などにいう「労働者」です。人間らしく働く権利があることを忘れないでください。
生理休暇は、労働基準法六八条に女性労働者の権利として定めがあります。アルバイトか正社員かにかかわらず、女性労働者が請求したときは取ることができます。
六八条には「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」とあります。労働基準局長通達でも「原則として特別の証明がなくても、女子労働者の請求があった場合には就業させてはならない」となっています。
ただし、生理休暇を取った日の賃金は、就業規則で有給とされていなければ無給です。
ちなみに、有給休暇も、正社員、アルバイトの区別なく、雇用関係が六カ月以上継続した場合で、労働者が全労働日の八割以上出勤した場合に取ることができます。日数は、週三十時間以上働く者については、一年に最低十日です。短時間労働者には比例して与える制度があります。これらは最低基準ですから、労働契約や就業規則にそれ以上の定めがあれば、そちらが適用されます。
弁護士 岸 松江さん
東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。派遣CADオペレーター、新聞記者などを経て弁護士に。好きな言葉は「真実の力」。

