2006年5月22日(月)「しんぶん赤旗」
「法で強制は誤り」
学習指導要領の「道徳」
教育基本法改悪法案の「徳目」
ぴったり符合
教育基本法改悪法案は第二条「教育の目標」で、「愛国心」など二十項目もの徳目(徳を分類した細目)を並べています。もとは現行の学習指導要領の「道徳」であることは一目瞭然(りょうぜん)(表)。法律化によって強制力を持たせれば「内心の自由」をいっそう侵すことになります。
改悪法案「教育の目標」と学習指導要領の関係はどうか。たとえば「教育の目標」の「我が国と郷土を愛する態度」という項目は、中学校向け指導要領「道徳」の「郷土を愛し」「国を愛し」と符合します。
「告示」のはずが
小坂憲次文部科学相は「(「教育の目標」の)事項については現行の学習指導要領に規定され、各教科や道徳などにおいて実際に指導が行われており、今後、その指導の充実を図ろうとするもの」(十六日の衆院本会議)と説明しました。
徳目の中には当然のように見えるものもあります。しかし法律に書き込み「達成」を義務づければ、二重の意味で重大な問題となります。
まず、指導要領は文科省の「告示」にすぎません。文科省は法的拘束力があると主張しますが、教育学者からは強い反対意見があります。法律化によって「告示」にはないはっきりした強制力を持つことになります。
教育基本法(一九四七年制定)の原案作成にたずさわった田中耕太郎元文相(後の最高裁長官)は、『ジュリスト』(五二年一月創刊号)で、「教育の目的」は本来学問的問題であり、法律で決めるべきでないと書いています。教育基本法が「教育の目的」を「教育は人格の完成をめざし…」としているのも、戦前の間違った教育目的を正すための最低限の規定であり「これを拡張または強化してはならない」と強調しています。
全体の目標に
また改悪法案が、「道徳」の内容を、教育全体の目標に引き上げ、教育全体を道徳教育に従えようとすることも問題です。
日本教育法学会教育基本法研究特別委員会は「戦前教育が修身を筆頭科目として忠良な皇国民の錬成に集約されたように、教育を全面的に道徳教育に一元化していく志向をみてとることが容易である」(『教育基本法改正法案に対するコメント』)と批判しています。
田中元文相も「『教育勅語』に代わるべき『教育宣言』のごときものを国が制定して…教育の目標を明示すべしとする意見が今日なお跡を絶たない。…(これは)教育の理念や目的を国家や法またはその他の外部的権威がディクテートする(注・命令する)という誤った仕方を踏襲発展せしむるものである」(前出の『ジュリスト』)と警告していました。
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