2006年5月18日(木)「しんぶん赤旗」

パート労働規制 EU諸国では ?


 〈問い〉 日本の派遣労働者やパート労働者の待遇(賃金や労働条件)は、正規の労働者に比べて、あまりにもひどいと思います。EU諸国では、この面で規制があると聞きますが、ドイツ、イタリア、イギリス、フランスなどではどんな状況ですか?(奈良・一読者)

 〈答え〉 EU諸国では、パートタイム労働者とフルタイム労働者の違いは労働時間の長短だけであり、パートでもフルタイムでも同一労働同一賃金の原則がつらぬかれるなど非差別・均等待遇の原則が確立しています。

 EUパートタイム労働指令(1997年12月)は、「雇用条件に関して、パートタイム労働者は、パートタイムで労働するという理由だけでは、客観的な根拠によって正当化されない限り、比較可能なフルタイム労働者よりも不利なとりあつかいを受けないものとする」と規定しています。

 イギリスやイタリア、ドイツ、フランスなどの欧州各国は、この指令を受け、国内法で同一労働同一賃金の原則を明記しています。有給休暇についても、フルタイム労働者と平等なとりあつかいを受ける権利を保障しています。さらに、フランスやドイツでは、社会保険への加入義務もパートもフルタイムも均等にしています。

 フランスやオランダ、スウェーデンでは、労働者の希望によってフルタイムかパートタイムかを自由に選択でき、パートからフルタイムへ、フルタイムからパートへの転換がさかんにおこなわれています。

 なお、国際労働機関(ILO)も1994年にパートタイム労働条約(175号)を採択し、パートであることを理由にして賃金を低くすることを禁止し、その他の権利、労働条件、社会保障についても、比較しうるフルタイム労働者と同等にすることを明記しています。日本政府はまだ批准していません。

 つぎに、派遣労働については、EU派遣労働指令案ができていますが、まだ採択にいたっていません。しかしドイツやフランスでは、派遣労働に対する法的規制が存在します。

 フランスでは、派遣労働に関して、対象業務の制限はありませんが、あくまで一時的な雇用であり、常用労働者の代替を防ぐために、派遣事由を限定しています。契約期間は、原則として最大18カ月に限られ、契約更新は原則的に不可能となっています。また、派遣労働者と派遣先の労働者との均等待遇が法律で定められています。

 ドイツでは、派遣期間の上限が撤廃されましたが、正規労働者と比較した均等待遇原則が強化されています。また、3カ月を超える派遣労働者は、派遣先事業所の従業員代表委員会選挙の投票権をもつに至っています。ドイツでは、労働者派遣制度が厳格に運用されており、日本で問題となっている偽装請負といった問題はほとんどみられません。(筒)

 〔2006・5・18(木)〕


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