2006年5月16日(火)「しんぶん赤旗」
「暗躍」チェイニー副大統領
CIA工作員漏えい
令状なし盗聴の承認
ブッシュ米政権の支持率低落の要因となっているスキャンダルや人権侵害で、チェイニー副大統領が大きな役割を果たしているとの暴露が十四日までに相次ぎ、「史上最強の米副大統領」と言われる同氏の「暗躍」ぶりへの批判が改めて高まりつつあります。
暴露の一つは、中央情報局(CIA)秘密工作員実名漏えい事件に関するものです。米国では、権限のない者による工作員名漏えいは情報要員身元保護法違反の犯罪です。同事件では、チェイニー氏の首席補佐官だったリビー氏が偽証などの罪で起訴されており、チェイニー氏自身がどこまで関与していたかが大きな関心事となっています。
同事件の発端となったのは、ウィルソン元駐ガボン大使がイラク戦争開始後の二〇〇三年七月六日付のニューヨーク・タイムズに掲載したコラム。▽イラクが核兵器開発のためにニジェールからウランを輸入しようとしているとの情報の真偽を確かめるため〇二年にニジェールに派遣された▽その証拠はなかったと報告したのに政府はこれを無視しイラクに侵攻した―と指摘。政府のイラク政策を批判しました。
今回明らかになったのは、このコラムへのチェイニー氏の書き込みメモです。メモには、「彼らは、この種のことを以前にしたことがあるのか」「彼の妻が彼を大名旅行に送ったのか」などと書かれています。
事件を捜査しているフィッツジェラルド特別検察官は十二日付のリビー訴訟関連文書で、このメモがチェイニー氏のウィルソン・コラムへの強い関心と、CIA秘密工作員だったウィルソン氏の妻への注目を示すものとして重視しています。
チェイニー氏にかかわるもう一つの暴露は、ブッシュ大統領が裁判所の令状なしに国家安全保障局(NSA)による盗聴を承認した問題に関係しています。十四日付のニューヨーク・タイムズは、チェイニー氏が〇一年九月の対米同時テロから数週間後に、国内電話と電子メールの盗聴、傍受を主張していたことを、二人の米情報機関高官によるとして明らかにしました。
当時のNSA長官は、新CIA長官に指名されたヘイデン国家情報副長官。近く連邦議会で始まる同氏の指名承認公聴会でも、盗聴問題への同氏の関与に焦点があてられようとしており、この問題へのチェイニー氏の深い関与の暴露は、これにも影響を及ぼしそうです。(坂口明)

