2006年5月11日(木)「しんぶん赤旗」
米軍の拷問・虐待を追及
国連委で聴聞
軍事法廷103件、89人が有罪
米代表団が明かす
スイス・ジュネーブで開催中の国連拷問禁止委員会で五、八の両日、イラクやアフガニスタン、グアンタナモ収容所での米軍による拷問・虐待について、米国に対する聴聞が行われました。旧ソ連・東欧諸国や途上国の強圧措置を批判してきた米国が、今回は追及される側に立たされました。
スティムソン米国防副次官補は、米軍収容施設での死者が百二十人に上り、そのうち二十九人の死亡が拷問や虐待に起因する疑いがあることを明らかにしました。
その上で同副次官補は、拷問・虐待の疑惑が指摘されたすべての事例を調査した後、百三件の軍事法廷を開き、八十九人が有罪判決を受けたと弁明しました。そのうち十九人が一年以上の禁固刑になったと述べ、国連拷問等禁止条約に照らして「説明責任を果たしていく」と言明しました。
ロイター通信によると、ニューヨークに本部を置く人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は先週、五十四件の軍事法廷が開かれただけで、禁固刑になったのは四十人だけだと、拷問禁止委員会に訴えていました。
スティムソン発言について、同団体は「透明性ある行為として歓迎する」が、「虐待行為の広がりを考えると、法廷の数も有罪者の数も少なすぎる」と指摘しました。
米代表団の団長を務めたベリンジャー国務省首席法律顧問は、イラク・バグダッド郊外アブグレイブ収容所での事件から教訓をくみ取り、「より厳格な法律、手続き、訓練、監視機構を持つに至った」と述べました。
しかし、米中央情報局(CIA)が第三国に秘密収容所を設け、被拘束者を収容・尋問しているとの疑惑には、そのようなことはないと答えるにとどまりました。
拷問等禁止条約 「拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは、刑罰に関する条約」の略称。公務員等が情報収集などのために身体的、精神的に重い苦痛を故意に与える行為を「拷問」と定義。これを刑法上の犯罪とすることなどを定めています。一九八四年の国連総会で採択され、八七年に発効。締約国は昨年七月現在百四十カ国。日本は九九年に加入。