2006年5月9日(火)「しんぶん赤旗」

底流 ほん流

労働基本権 政府後ろ向き


 政府が打ち出している「公務員制度改革」にかかわって、公務員の「労働基本権」(団結権、団体交渉権、ストライキ権)が焦点となっています。公務員の労働基本権の確立は、全労連や連合はじめ労働界全体が一致して求めています。

付与前提とせず

 政府は連合との「政労協議」(三月)で労働基本権を付与する公務員の範囲について、「検討の場」を設けることで合意しており、近く具体化される予定です。全労連にも労働三権のどれが必要か幅広く検討していると答えています。

 政府は、労働基本権をはく奪したままで「能力・実績主義」の導入などを柱とする「公務員制度改革」案を打ち出しましたが、労働組合や国民の強い批判にあい、とん挫していました。

 そのため、昨年末の「行政改革の重要方針」で、労働基本権について、「検討する」と表明した経過があります。しかし「中立の立場から議論する」というもので、労働基本権付与を前提としたものではないとしています。

 憲法二八条はストライキ権などの労働基本権を保障していますが、一九四八年に占領米軍の指示でスト権がはく奪されて以来、公務員は一律にストを禁止され、団結権や団体交渉権も厳しく制限されてきました。

 その後も見直しがされず、英仏などで保障されている争議権も一律禁止し、労働協約を締結する権利も認めていません。

 公務員に憲法で保障された民主主義的な権利を保障することは、内部から行政をチェックし、「全体の奉仕者」として国民本位の行政をすすめるうえで不可欠です。

ILO勧告無視

 国際労働機関(ILO)は、結社の自由などを保障したILO条約に違反しているとして、二〇〇二年から三度にわたって、日本政府に対し、労働基本権を付与するよう求める報告と勧告をしています。

 三月の勧告でも、スト権や団体交渉権を制限するのは軍隊や警察などにとどめ、他のすべての公務員に労働基本権を保障すること、消防・監獄職員にも団結権を認めるよう求めています。

 ところが、政府は、労働基本権制約の「代償措置」としての役割をもつ「人事院制度」を形がい化するような給与の引き下げなど、公共サービスを支える公務員制度を脅かす姿勢を続けています。

 全労連は、これまで三回にわたるILO勧告の重要性を受け止め、国際労働基準に沿って公務員制度を民主的に改革すること、全労連との「政労協議」の場を設定することを求めています。

 連合は、「ニュートラル」(中立)という政府の立場はILOの再三の勧告を真摯(しんし)に受け止めたものとはいえないとして、労働基本権の付与を明確にした改革を求めています。

政権服従強いる

 政府の「公務員制度改革」案は、「全体の奉仕者」ではなく、時の政権への服従だけを強いる公務員に変えようとしています。その柱が「能力・実績主義」の導入です。

 現在、公務員の給与は「職務」に応じて決められていますが、「能力・実績」を「評価」して、それによって給与を決める仕組みに変えます。

 これでは、国民の暮らしを破壊する政権のもとで、公務員がいかに国民いじめの「能力」を発揮し、「実績」をあげたかが評価の基準になりかねません。

 そもそも、人事院の機能を縮小して、新たな人事制度を導入するのであれば、労働基本権を与えて労使交渉で勤務条件を決定できるようにすることこそ必要です。

 しかも政府案は、高級官僚の天下りについて、第三者機関の人事院がチェックするのをやめて閣僚の一存で認める制度に変えることも検討しています。

 政官業の癒着の温床にメスを入れるどころか、さらにひどくなるのは目に見えています。

 公務員に憲法で保障された民主的な権利を保障し、天下り禁止やキャリア制度の廃止など、労働者・国民が求める改革こそ求められています。


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