2006年5月7日(日)「しんぶん赤旗」

「介護難民」生み出す

療養病床削減撤回を要求

“地域医療は崩壊”と危ぐ


 全日本民主医療機関連合会(全日本民医連・肥田泰会長)は、長期入院患者が入る療養病床削減を盛り込んだ政府・与党の医療改悪法案の「撤回」を求めた要望書やアンケートを、三月末から全国のほぼすべてにあたる約九千病院に送付し、賛同と意見を求めています。四月末までに二百二十三施設が賛同の意思を示すなど、同病床削減反対の運動の輪が広がっています。

民医連アンケート 賛同広がる

 医療改悪法案では、医療保険と介護保険適用あわせて三十八万床ある療養病床を廃止・削減し、六年後までに十五万床にすることが提案されています。七月実施の診療報酬改定では、同病床のうち「医療の必要性が低い」とされる「医療区分1」の患者の入院基本料を大幅削減しました。

施設整備が先

 要望書では、同病床の削減・廃止計画は、医療や介護を必要とする患者・利用者から、療養し介護を受ける場を奪い「介護難民」「療養難民」を生み出すと批判。診療報酬改定の抜本的是正と、七月実施中止も求めています。

 アンケートには、「難民」を生み出す危険性を危ぐする声が多数寄せられています。

 「特に過疎地域においては、移転先の施設もなく、自宅療養にしても現役世代は共働きが多く、介護に疲れたといろいろな事件が起こっている中で、それに拍車をかけるようで切なくなります。まず高齢者施設の整備が先ではないでしょうか」(北海道)

政府が誘導

 「現在入院中の医療区分1の方の多くは、独居や老夫婦世帯で、とても在宅医療はできない人たちです。厚労省の急性期病床・医療療養病床の削減という、現実を理解していない政策には一致して反対してゆきたい」(大阪)

 「安定はしていても常に医療を必要としている患者は大勢います。老健(老人保健施設)を併設していますが、老健には移せず、家に帰ることができない患者のため、赤字を覚悟で診療をつづけるつもりです」(山梨)

 政府・厚生労働省は、二〇〇〇年十一月の医療法改悪で、結核、精神、感染病床以外の「その他病床」に、「一般病床」と長期入院患者が入る「療養病床」の区分を新設し、〇三年八月末までにどちらになるか届け出るよう医療機関に求めました。このとき、長期入院患者が多い医療機関が「療養病床」に届け出るよう誘導しておきながら、今回の医療改悪法案で療養病床の大幅削減を盛り込みました。こうした政府の姿勢にも怒りは集中しています。

 「療養病床は、最近、政府の政策として制定されたばかりであり、朝令暮改も甚だしく、これに振り回された患者及び病院は大変困惑しています。介護は自宅でということでしょうが、自宅で療養介護できないので病院や施設に入らざるを得ないこれらの患者が、まさに難民になることは目に見えます。もっと長期的な視点で政策を決めるべきです」(東京)

 「さっそく要望書を提出。数年前に国の政策として実施された療養病床を一片の法律で廃止されたのでは、患者の不幸のみならず病院経営者は返済不能に陥ることになる」(埼玉)

 「医療現場では体調を崩す者も多いほど献身的に医療を行っている。政策によって、右往左往させられる事で、現場は混乱し正常な医療活動ができない」(大阪)

 「はじめに医療費削減ありきの政策は患者の健康だけでなく、病院ではたらく医師や労働者の生活を脅かすことをもっと国は考えてほしい」(茨城)


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