2006年5月4日(木)「しんぶん赤旗」

憲法守る多数派結集へ 改憲の真相 広く国民に

憲法集会での志位委員長のスピーチ(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が三日、「5・3憲法集会」でおこなったスピーチ(大要)は次のとおりです。


 みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫でございます。

 いまのお話をうかがって、私たちの宝である憲法九条を守ることは、アジアと世界にたいする私たちの責任だと痛感しました。(拍手)

誰の目にも明らか――

「海外で戦争できる国」に変える狙い

写真

(写真)スピーチをする志位和夫日本共産党委員長

 私たちは、今年の憲法記念日を、憲法を壊そうという勢力と、憲法を守り生かそうという勢力との、激しいたたかいのなかで迎えました。

 私は、この間の情勢の進展で大切なことは、なぜいま改憲か、何のための改憲かが、改憲勢力自身の行動によって、だれの目にも明らかになってきたことにあると思います。

 私は、小泉純一郎首相と憲法について何度も討論してきました。首相がいつも決まっていうセリフがあります。それはこういうものなのです。「憲法を変える目的は、現に存在する自衛隊を憲法に書き込むだけです。海外での戦争など毛頭考えていません」。

 しかし、憲法を変えて、「自衛軍が持てる」と書き込めば、どうなるか。あるものを「書き込むだけ」ではすまない。日本が「海外で戦争ができる国」に変えられてしまう。ここに狙いがある。そのことが、改憲勢力自身の行動で明らかになったのが、この一年だったのではないでしょうか。(拍手)

 第一に、具体的な改憲案をつくってみたら、狙いがはっきりしました。昨年十一月に、自民党は「新憲法草案」なるものを決めました。これは、憲法九条二項を削除して、「自衛軍を持つ」と明記しただけではありません。「自衛軍」の任務として、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」への参加を明記しました。私は、国会で、「この規定は、海外での武力行使を意味するものではないのか」とただしました。首相は、あいかわらずごまかしの答弁でしたが、印象深かったのは、自民党席から飛んできたヤジです。「そんなことあたりまえだろ」(笑い)。首相はごまかしたが、ヤジは真実を語ったわけであります(笑い、拍手)。マスコミもいっせいに「海外での武力行使に道を開く」と書きました。改憲案を具体化してみたら、狙いはだれの目にもはっきりしました。

「米軍再編」の目的――

基地強化とともに日米の軍事一体化 

 第二に、「米軍再編」という現実の動きを通じても、狙いがはっきりしてきました。

 「米軍再編」には、二つの柱があります。

 一つは、米軍が世界に“殴りこみ戦争”をするさいの基地強化のおしつけです。一昨日、日米両国政府は「米軍再編」の「最終報告」なるものを決めました。ここで基地強化のおしつけについて、何と書いているか。「日本国政府による地元との調整を認識し、再編案が実現可能であることを確認した。……この計画を速やかに、かつ、徹底して実施していくことを確約した」。

 冗談ではありません。「地元との調整」とは何をもっていうのでしょうか。山口県岩国市では、「空母艦載機移転反対」の民意が、住民投票と市長選挙の二度にわたって示されたではありませんか(拍手)。沖縄市長選では、「新基地建設反対と政府にきっぱりといいます」と公約した革新共闘の東門みつ子さんが、堂々の勝利をかちとりました(拍手)。全国で自治体ぐるみのたたかいがこれだけ広がっているのに、相手は「徹底して実施」――一つ残らずごり押ししようという。こんな強権的宣言は絶対に許すわけにはいきません(大きな拍手、「そうだ」の声)。基地強化のおしつけを許さないたたかいは、これからだということを訴えたいのであります。(拍手)

 同時に、「米軍再編」とは、基地強化だけではありません。米軍と自衛隊が、ともに訓練し、ともに戦争にのりだす態勢をつくる――日米の軍事一体化に、もう一つの目的があります。“その邪魔になるのが憲法だ。憲法九条を変えろ”――この要求が、アーミテージ氏をはじめとする米国政府筋からくりかえし寄せられています。

 昨年十一月にテレビ朝日が、「米軍再編の衝撃 “戦争の町”の自衛隊」という特集番組を放映しました。米国ワシントン州のフォートルイス基地の奥深くに、地図にのっていない町があり、ここに市街戦を想定して五十二のビルや住宅などの施設を設置し、イラクから帰還した米陸軍の第一軍団の部隊が、陸上自衛隊と合同の訓練をやっている。場面は、建物への突入作戦にうつります。ここで米兵が「敵が見えたら撃て、撃ちつづけるんだ」と命令する。そうすると自衛隊員が「敵二名射殺」と答えます。訓練を終わった米兵がインタビューをうけ、こういいました。「将来、本当の戦場で一緒にたたかえることを楽しみにしています」(どよめき)。番組の最後に、米戦略予算・査定センターのグレノバビッチ所長が登場し、「憲法九条を改正しようという動きもあります。日米の部隊が共通の利益を守るために一緒にたたかったとしても驚きません」とのべました。

 ぞっとする番組でした。すでに日米両軍が「本当の戦場で一緒にたたかう」――「人を殺す」ための訓練を公然とはじめているのであります。そのためには、「九条改正」が必要だということが、米軍関係者の口からも平気ででてくる。事態はここまできています。

 九条改憲の狙いが、「海外で戦争ができる国」づくりにあることは、いまや明りょうであります(拍手)。私は、この真相を広く国民に伝えきれば、国民の圧倒的多数は“改憲ノー”の声をあげると信じて疑いません(拍手)。そのために力をあわせようではありませんか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

国民投票法案――

無色透明の形式法の整備ではない

 憲法にかかわって、この国会で問われている二つの法案について、訴えたいと思います。

 一つは、国民投票法案です。なぜいま国民投票法案なのでしょうか。その魂胆がよこしまであります。自民党の船田元・憲法調査会長は本音をいいました。「憲法改正にむけ、通常国会で国民投票法案を成立させ、政党間協議の入り口まで今年後半にはたどりつき、来年、本格的な協議に入りたい」。つまり、これは無色透明な形式法の整備ではありません。九条改悪という真っ黒い意図と結びついた法案であることは、当事者のこの言明からも明らかであって、この強行を阻止するためのたたかいを急速に強めることを心からよびかけたいと思います。(拍手)

教育基本法改悪――

廃案めざし国民的運動を急速に強めよう

 いま一つは、教育基本法改悪法案です。政府・与党は、改定法案を国会に提出しましたが、この動きも憲法改定と連動した動きです。

 これは、この動きがおこった出発点からそうでした。一九五三年に、当時の池田勇人・自由党政調会長とロバートソン米国務次官補による会談がおこなわれ、「覚書」が交わされました。これを読みますと、日本が再軍備をすすめる障害として、憲法上の障害――憲法第九条とともに、平和教育の障害があるとのべています。この「覚書」ではこうのべています。

 「日本人は占領八年間において何事が起ころうと銃をとるなと教えられた。かかる教育によって最も影響を受けたのは、最初に徴募を受けるべき若者達である」。「愛国心と自己防衛の自発的精神が日本において成長する如き気分を啓蒙と啓発によって発展することが日本政府の責任である」。「憲法改正および国論という問題は、日本の政府および国民が、自己のやり方で処理せねばならぬ」

 私は、二つの点が大切だと思います。一つは、憲法改定問題が、教育基本法改定問題とセットで提起されているということです。もう一つは、憲法を変えようという勢力がいう「愛国心」なるものは、「若者に銃をとらせる」ためのものだった。みなさん、このことを忘れてはならないのではないでしょうか。(拍手)

 政府が提出した教育基本法改定法案は、現行基本法の第一〇条――「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」を改変し、政府が、「教育振興基本計画」を策定できるなど、現行基本法がきびしく禁止している国家権力による教育内容への介入・支配を、公然とすすめる条文がもりこまれています。これは、教育の目的を、一人ひとりの子どもの「人格の完成」から、国家のために役立つ人間づくりへと、根底から変質させるものであり、私たちは断じて許すわけにはいきません。(拍手)

 政府の改定法案には、「教育の目標」の一つとして「国を愛する態度」がもりこまれました。私たちは、民主的な市民道徳を身につけるための教育を大切だと考えています。その一つとして、「他国を敵視したり、他民族をべっ視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神をつちかう」ことも重要だと主張してきました。同時に、民主的な市民道徳の内容は、憲法と教育基本法からおのずと導き出されるものであり、一人ひとりの子どもの「人格の完成」をめざす教育のなかでこそ、つちかわれるものだと思います。

 教育基本法を改定し、あえて「国を愛する態度」を書き込もうという動きには、子どもたちのすこやかな成長を願うこととは無縁の、危険な狙いがあります。すなわち憲法を変えて「戦争をする国」をつくるうえでは、自衛隊が海外で武力行使ができるようにするだけでは足らない、「戦争をする国」に忠誠を誓う人間を育てあげることが必要だ――ここに狙いがあるのではないでしょうか。(拍手、「そうだ」の声)

 こうした狙いをもって、「教育の目標」の一つに「国を愛する態度」を書き込み、その「目標の達成」を教育現場に義務づけたらどうなるか。それは、第一〇条の改定と結びついて、特定の政治的立場に立つ「愛国心」を教育現場におしつけ、憲法で保障された内心の自由を侵害する重大な危険をもたらすことになることは明らかであります。そのことは、東京都で、政府が「強制はしない」と答弁していたにもかかわらず、「日の丸・君が代」を強制して、従わない先生を処分していることからも明らかです。(「そうだ」の声、拍手)

 みなさんに訴えたい。憲法改悪に反対するたたかいをひきつづき大きく発展させながら、教育基本法改悪を許さない国民的運動を急速に強めようではありませんか。(大きな拍手)

国民的多数派結集へ――

改憲反対の一点で力を合わせよう

 草の根から「九条の会」が大きく広がるなど、全国津々浦々から平和を願う大きなエネルギーがわきおこっています。みなさんとともに憲法改悪反対の一点で国民的な多数派をつくるために、全力をあげてたたかいぬく決意を申し上げて、あいさつとします。ありがとうございました。(大きな拍手)


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