2006年4月28日(金)「しんぶん赤旗」

最大手の民間検査機関ERI社長

建築会社社長を兼任

公正さに疑問 設計と審査一体


 耐震強度偽装事件で、元一級建築士・姉歯秀次容疑者の偽装を見逃していた民間最大手の指定確認検査機関「日本ERI」(本社、東京都港区)の鈴木崇英社長が二〇〇二年五月まで、建築関係会社の社長を兼任していたことが二十七日、分かりました。建築物を設計する側と審査する側の一体ぶりを示すもので、民間検査機関の公正中立性が問われます。


 鈴木氏が社長を兼任していたのは、都市開発では日本有数のコンサルタント会社「UG都市建築」(本社、東京都港区)。千葉市の幕張メッセなど大規模開発の企画・提案や、マンションなど建築物の設計・販売を手掛けています。同社は姉歯容疑者が偽装して注目を集めた構造設計も行っています。

 一九九九年十一月にERIを設立した鈴木氏は同社の社長になりました。設立当時、鈴木氏はUG社の社長も務めていました。ERIは二〇〇〇年三月に国土交通相から民間検査機関の指定を受けて審査・検査業務をスタート。ところが、鈴木氏はUG社の社長も続け、両社の社長を兼任していました。

 鈴木氏は〇二年五月にUG社の社長を退任。しかし、現在も顧問をしています。また現在のUG社代表取締役と同専務の二人も、二〇〇〇年五月から〇二年六月までERI社の役員とUG社役員を兼任していました。両社は社屋ビルも隣接する場所にあります。

 建築基準法は民間検査機関の役員や職員、その構成について「業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること」と定めています。審査側と申請側のトップを同一人物が兼ねることは、公正さに大きな疑念を生じさせます。ところが、国土交通省は通達で審査側と申請側の役員兼任を認め、最大で民間検査機関役員の三分の二まで兼任できるようにしているのです。

 ERIの担当者は本紙の問い合わせに「UG社が設計した建築物を審査しているかどうかは答えられない。制度上、当社が審査することは可能です」としています。

 国交省住宅局建築指導課の担当者は「基準の範囲内であれば、社長兼任であっても適正な業務はできると考えている。基準の改定は検討していない」と言います。


 日本ERIの耐震偽装見逃し 元一級建築士の姉歯秀次容疑者が構造計算書を偽造したことについて、ヒューザーのマンションなど、十五件の偽装見逃しがこれまでに判明。同社の見逃し件数はイーホームズの三十七件に次ぐものです。昨年十二月、事件を受けて国土交通省は同社の立ち入り検査を行いました。また、姉歯氏の偽装以外に、札幌市の浅沼良一・二級建築士による偽装を五件、設計者の計算ミスによる強度不足を一件、見逃していたことが発覚しています。


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