2006年4月27日(木)「しんぶん赤旗」
国民には「痛み」米軍強化に税金
ローレス米国防副次官は、在日米軍再編の日本側負担が約三兆円(今後六―七年間)に達することを明らかにしました。安倍晋三官房長官も「とんでもない金額」というほど、ばく大な出費を日本に押しつけようというものです。
基地に年1兆円
すでに日本は「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)として、年間二千三百七十八億円(二〇〇五年度)もの税金を、米軍のために提供しています。
沖縄の米軍基地を県内でたらい回しにするためのSACO経費や基地周辺対策費などを加えた、在日米軍の駐留のために負担している経費総額は、年間で六千四百七十九億円(同)に達します。
在日米軍再編で米側が要求する約三兆円を、六年間で換算すれば、年間五千億円。その経費が上乗せされれば、年間一兆円以上を米軍のために負担することになります。
政府自身が前例のないことを認める在沖縄米海兵隊のグアム移転費はじめ、これだけの巨額の経費を、米軍のために注ぎ込むことは、主権国家としての財政のあり方として、重大な問題を投げかけるものです。
小泉・自公政権はこの間、介護保険施設の居住費(ホテルコスト)・食費を自己負担とする改悪や、障害者に負担を強いる障害者「自立支援」法の実施など、国民への「痛み」押しつけを連続的に強行してきました。そのうえ今国会では、高齢者に負担増を押しつける医療改悪法案の成立も狙っています。
ホテルコスト導入、障害者への負担強化、今回の医療改悪(〇六年十月実施分)で減らされる年間の国費は、合計で約三千二百六十億円。それをはるかに上回る費用を、在日米軍再編のためにつぎ込もうというのです。
先制攻撃の支え
三兆円もの費用を投入して実施するのは、在沖縄米海兵隊のグアム移転や、キャンプ・シュワブ沿岸部への新基地建設(沖縄県)、キャンプ座間への米陸軍新司令部の創設(神奈川県)、岩国基地への米空母艦載機部隊の移駐(山口県)などです。
こうした再編計画を打ち出した昨年十月の日米共同文書は、その「指針となる考え方」として、「米軍のプレゼンスは不可欠」「(在日米軍の)能力は強化」をあげました。ブッシュ米政権による先制攻撃戦略を支える米軍基地態勢の恒久化・強化こそが、基地再編の目的というわけです。
だからこそ、基地を抱える自治体・住民は「基地の恒久化・強化は許されない」「黙っていると百年先も基地の街」と、一斉に立ち上がったのです。
世界中から非難を浴びている、米軍の先制攻撃戦略のためには、自治体・住民が反対しても三兆円――。小泉政権が、これに踏み出せば、基地周辺住民だけでなく、小泉政治のもとで「痛み」を押しつけられてきた日本国民全体に、その怒りが広がることは避けられません。(田中一郎)