2006年4月19日(水)「しんぶん赤旗」

安全軽視で業務改善勧告

スカイマーク

“規制緩和の旗手” 今や


 航空産業の規制緩和の旗振り役として、一九九八年九月に新規航空会社としてはなばなしく参入した「スカイマークエアラインズ」。現在、経営はIT業界出身の西久保慎一会長兼社長が、創業当時の旅行会社エイチ・アイ・エス=HISから引き継いでいますが、相次ぐ整備ミスや不完全な運航管理のため、十七日には国土交通省から異例の業務改善勧告まで受けています。なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか。(米田 憲司)


整備は他社まかせ

 スカイマークは、ボーイング767型機を三機リースして、東京(羽田)―福岡便として初就航。その後、大阪(伊丹)―福岡、大阪―札幌、東京―鹿児島、東京―徳島、東京―関西と幹線に次つぎと就航していきました。

 重整備など本格的な機体の整備は大手航空会社が協力し、自社による整備は運航整備が中心です。諸経費を抑えるため、パイロットは外国人や大手航空会社の退職者、客室乗務員は契約制(後に正社員に採用)といった徹底したコスト削減策で出発しています。

 スカイマークやエアドゥ(札幌―東京)など新規航空会社が就航当時から問題になっていたのは、航空法との関係でした。同法は航空の安全と秩序、公共性の維持を目的にしています。その根幹には「自社運航の原則」「自社整備の原則」があります。また免許基準では「申請者(企業)が事業を適確に遂行するに足りる能力を有するものであること」と規定しており、新会社の事業形態では航空法に抵触していることになるからです。

ドル箱路線に参入

 航空輸送業は鉄道、バスなどと同様に公共性の高い事業のため、安全性はもちろん、もうかる幹線だけに参入を認めてしまうと、採算の合わない路線の切り捨てにつながってしまいます。

 新規参入会社が幹線だけに就航できたのは、政府の後押しのもとで利用客の多い幹線なら格安運賃でも採算が取れると見込んだためです。規制緩和の目的である自由競争で航空会社がしのぎを削れば、利用客にとってもプラスという訳です。

 就航当初、新規参入会社や政府の思惑は功を奏しましたが、大手が安い運賃で横並びにしたため、結局、便数の多い大手に利用客が戻ってしまいました。「道民の翼」エアドゥは経営破たんし、スカイマークも大赤字を抱えていくことになります。四月十三日には東京―徳島線から撤退し、二十一日には東京―鹿児島線が続きます。

 十一日の衆院国土交通委員会で参考人として出席したスカイマークの西久保社長は「安全は当然の前提だが、収益性が確保されなければ望むべくもない」「整備期限が過ぎて運航していたのは組織が完全でなかったから」「整備士が少なくなれば、それにあわせた事業規模にするだけ」などと述べ、その方向を変えるつもりはまったくない、といい切りました。

問われる政府責任

 質問した与党の議員ですら「安全に自信がなければ休業せよ」というほど。北側一雄国交相も苦い顔をしながら公共交通事業者としてのあり方を批判しました。

 航空労組連絡会によると、スカイマークの職場では労働条件の悪さから運航乗員や整備士等が職場を去り、安全性の確保が十分にできない状態に陥っているといいます。 労組との交渉にも一切応じず、「整備の不備による航空機事故は起きていない」と豪語する西久保社長の認識も問題ですが、航空法の趣旨を規制緩和策でねじ曲げて、運航能力も整備能力もない航空会社を設立させてきた政府の責任が、今改めて問われています。


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