2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄新基地
この説明では納得できない
額賀防衛庁長官と島袋沖縄県名護市長は、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)の新基地化に合意しました。しかし、名護市が区長らにおこなっている、新基地建設の「基本合意」についての説明会では、反発の声が相次ぎ、「区民に説明できない」との声もでています。村民の約二割が参加して反対集会を開いたばかりの宜野座村でも、区長や村議から不満の声があがっています。住民の怒りも広がっています。
保証はどこにもない
「基本合意」は、「(住宅)上空の飛行ルートを回避する方向で対応」「生活の安全」「自然環境の保全」をうたっています。これほど根拠のない空文句はありません。
政府は、「住宅上空を飛ばない保証があるのか」との地元の心配にたいし、「アメリカに基本合意をふまえ理解を求めていく」とのべるだけです(十二日衆院外務委員会 北原防衛施設庁長官)。それは米軍とどのような協定を結んでも、日本が米軍活動をおさえることなどできないのをよく知っているからです。
米軍機は、着陸すれば事故を起こすおそれがある場合は着陸しないでもう一度やり直しする「ロー・パス」(低高度通過)や、車輪をつけてはまた浮き上がる「タッチ・アンド・ゴー」の訓練を行います。事故防止能力維持のためです。この事実を説明せず、住宅上空を飛ばないというのは無責任です。
「基本合意」は別図で、海上にヘリの訓練コースを明示し、住宅上空をいっさい飛ばないかのように描いていますが、ヘリ訓練が海だけですむはずがありません。普天間基地周辺の市街地上空での旋回訓練をみてもわかるように、名護市街地を戦場に見立てて、旋回しながら戦況判断や着陸地点を見つけだす訓練などをおこなうのは必至です。
米軍は、嘉手納基地と普天間基地の騒音防止協定でさえ平気で破っています。夜の十時から翌朝六時は「制限」するとうたっているのに、深夜、早朝、時間かまわず離着陸し住民を苦しめています。政府は抗議どころか、「(米軍の)運用上必要なものであった」(二〇〇五年二月二十二日衆院予算委員会 町村外相=当時)と米軍をかばうだけです。
アメリカいいなりの日本政府がいう「アメリカとの調整」に期待したり、うのみにするのは危険です。
生活・環境被害も重大です。
名護漁協は、大浦湾が大きく削られることで漁場に重大な影響がでると怒りをあらわにしています。
日本自然保護協会は、西側の浅瀬の埋め立てでジュゴンやウミガメの餌場を失いサンゴ礁生態系に悪影響を与え、大浦湾での埋め立てやパイル打ち込みが海水の動きや堆積(たいせき)物を大きく変化させ、生物群集に悪影響を与えるとして、新基地計画の見直しを要求しています。
市民に新たな苦痛を与える「基本合意」は撤回しかありません。
住民の総意をきけ
名護市民はこれまでくりかえし「新基地ノー」をつきつけてきました。島袋市長が「沿岸案拒否」を公約にしたのは名護市民の意思を無視できなかったからです。自治体が住民の意思に従ってこそ住民自治を基礎にした地方自治です。
自治の本旨に反し、恒久的巨大基地建設を認めた島袋市長に、抗議と怒りが広がるのは当然です。
新基地は、名護市民だけでなく沖縄県民全体の平和と安全にかかわります。民意を無視して新基地化を進めるのは到底許されません。