2006年4月14日(金)「しんぶん赤旗」

米軍機の訓練移転

狙いは日米一体化

使用回数制限を撤廃 爆音・事故の危険激増


 政府は在日米軍再編の一環として嘉手納基地(沖縄県)など米軍航空基地の戦闘機訓練を航空自衛隊基地に一部移転する計画を関係自治体に説明しています。移転先の自治体や住民からは「絶対容認できない」との声が噴出しています。政府の説明から見えてくるのは…。(榎本好孝)


地図

 政府は、訓練の「移転元」を米空軍嘉手納基地、同三沢基地(青森県)、米海兵隊岩国基地(山口県)の三基地とし、米軍機の機種は嘉手納のF15戦闘機、三沢のF16戦闘機、岩国のFA18戦闘攻撃機としています。

 「移転先」は千歳(北海道)、百里(茨城県)、小松(石川県)、築城(ついき、福岡県)、新田原(にゅうたばる、宮崎県)の各空自基地と空自部隊が配備されている三沢の六基地。訓練は空自との「共同訓練」として行うとしています。

 訓練の規模は、二つのタイプ(▽タイプ1=米軍機・空自機とも一―五機程度で一―七日間程度▽タイプ2=同六―十二機程度で八―十四日間程度)を想定し、今年度から強行する構えです。

 これまで日米間などで取り決めている移転先五基地(三沢を除く)の日米共同使用の条件については、年間の総使用日数と訓練一回当たりの使用期間は維持しつつ、年間の訓練回数は撤廃するとしています。

 例えば、千歳の共同使用の条件は「年約四回、一回約三日から二十日まで、年六十日以内」。今回の計画では「年約四回」という制限をなくすことになります。つまり年五回以上の訓練を想定しているということです。

新たに施設建設

 日本共産党の仁比聡平参院議員の調べでは、千歳での日米共同訓練の実施回数は過去七年間でわずか一回。それが年五回以上、総使用日数で六十日実施できれば、爆音被害や事故の危険がはるかに増大することは明らかです。他の四基地も事態は同じです(表)。

 百里基地を抱える小美玉市議会は、今回の計画に反対する決議(十一日)で「年間回数撤廃は、数多くの訓練を行うことが可能となり」、「騒音の加重や安全、安心面の懸念など、住民生活に大きな影響を与える」と批判しています。

 政府は「移転訓練(特にタイプ2)の完全な実施のためには、追加的な施設が必要になる」と、米軍のための新たな施設建設=米軍基地化まで行おうとしています。

あらゆる機種が

 しかも政府は訓練の「移転元」を「当面は、嘉手納、三沢、岩国の3飛行場にする」と、「当面」の措置としています。将来、米空母艦載機などの訓練移転も否定していません。嘉手納基地にはしばしば米本土から米空軍の戦闘機部隊が前方配備されています。こうした戦闘機の訓練が移転される危険さえあります。

 しかも、政府は「将来における日米共同訓練のための自衛隊基地の使用拡大に向けて努力する」と、移転先の基地も拡大しようとしています。あらゆる米軍機が全国各地の空自基地を飛び回り、爆音や事故の危険をまき散らすことになります。

 政府は訓練移転の目的の一つに、米軍航空基地周辺への「訓練活動の影響を軽減する」ことを挙げています。なかでも嘉手納基地の騒音軽減を強調してきました。

 しかし在日米軍再編を担当するローレス米国防副次官は「訓練を減らすことが目的ではなく、空自との共同訓練を拡大して同盟を強化する」(昨年十二月十三日)と述べています。狙いは、日米航空部隊の一体化=共同作戦能力の強化です。

部隊の撤去こそ

 政府は、嘉手納基地も空自との共同使用にする計画を明らかにしています。訓練を移転しても空自戦闘機部隊との共同使用になれば負担の軽減にはまったくなりません。

 嘉手納基地を抱える沖縄市議会は、沖縄近海でのF15墜落事故への抗議決議(一月十八日)で「F15戦闘機の嘉手納基地からの全面撤退を強く求める」としています。必要なのは、訓練移転ではなく部隊の撤去です。

 過去7年(※)の日米共同訓練の実績〔回数=実施年(米軍機の使用日数)〕日米共同使用の条件
千歳基地1回=99年(12日以内)年約4回、1回約3日から20日、年60日以内
百里基地3回=01年(4日)、02年(9日)、04年(10日以内)年約4回、1回約3日ないし15日、年約4週間
小松基地3回=01年(2回計8日)、05年(3日)年約4回、年約4週間
築城基地2回=02年(12日以内)、04年(10日以内)年4回、1回約2週間以内
新田原基地1回=00年(12日以内)年4回、1回約2週間以内

 防衛庁が日本共産党・仁比聡平参院議員に提出した資料などから作成(※)1999年-2005年


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