2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

マイワシ 漁獲低迷

回復の見通しは?


 日本近海のマイワシは、漁獲量が激減したままの状態が十年もつづいており、「このままでは回復しないのではないか」と漁業関係者が心配しています。マイワシ回復の先行的な目安とされる増加率の最新データでも回復していないことがわかりました。

 太平洋側マイワシの漁獲量は、ついに五万トンを割りこみ四万八千トン(二〇〇四年)に落ち込みました。豊漁時の一九八八年は四百四十九万トン。近年は、その百分の一の漁獲量で推移しています。

 とくに深刻なのは東シナ海・日本海側の対馬暖流系のマイワシ。八九年の百九十九万トンに対し〇三年には千百トンまで落ち込みました。

漁業者まかせに

 水産庁漁業資源課では「マイワシ資源の状況は漁業者に知らせている。とくに禁漁にはしていないが、日本海側はあまりに少ないので漁業者も漁獲対象にしていない」と話しています。水産庁は漁業者まかせです。

 回復の見通しはどうなのか―。漁業資源の専門家・川崎健東北大名誉教授は、「回復の兆候はあるのだ」といくつかの事実をあげます。

 例えば、前回増加傾向に転じた時と同様に、マイワシが南下。土佐沖での産卵が確認されています。

 川崎さんは、実際にマイワシが前年より増えているのかどうかの増加率を調べてみました。

 この結果、増加率は一九九五年を境にたしかに上昇に転じたことがわかりました。ところが二〇〇〇年以降は、増加率が再び下降。速報値でもプラスに転じていないことが判明しました(グラフ参照)。

 川崎さんは「今、マイワシの資源はどん底だから、とりすぎれば立ち上がれなくなる」と心配します。カリフォルニア産マイワシが増加に転じたのは、禁漁の成果なのだと説明。「増加率の立ち上がり時期の禁漁は必要なこと。漁業者にしても元も子もなくなるようなことはしたくないはずだ。水産庁は傍観しているだけでなく生活補償も含めて漁業者とよく話し合う必要がある」と強調しています。

過剰漁獲の結果

 川崎さんはマイワシやマサバが立ち上がれないと魚種交代のサイクル(図参照)にも影響すると警告しています。

 マサバの漁獲量は九〇年を境に上昇に転じ、二〇一〇年ころにピークを迎えると予想されたのに九〇年代半ばから下降、立ち上がれない状況が続いています。

 川崎さんは「これはマサバの若年魚の過剰漁獲の結果と考えられる。マイワシへの影響は予測がつかない。自然の摂理である魚種交代サイクルの危機」と強調します。(松橋隆司)

グラフ
図

 魚種交代のサイクル マイワシの増減と他の魚の増減にみられる関係。これには図のように二重の関係があります。一つは、カタクチイワシが増えるとマイワシが減るという関係。もう一つは、マイワシが減ると、サンマが増え、次はマアジが増え、最後はマサバという順序関係です。マサバがピークのころマイワシが増え始めます。


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