2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張

若者解雇策撤回

規制緩和に突きつけた「ノン」


 フランス政府が、若者の解雇をしやすくすると国民から批判を浴びた「初採用契約」(CPE)の撤回を表明しました。

 年頭にドビルパン首相が突然提案して以来、すべての主要労組と高校生を含む学生団体が反対運動にたちあがり、世論の六、七割が導入に反対してきました。“解雇しやすくして雇用を増やす”という口実を付けた規制緩和の提案に、「ノン」の審判がくだされた結果です。

ルールの勝手な変更

 CPEは、企業が二十六歳未満の青年を雇用する場合、これまで三カ月以内に限られていた試用(見習い)期間を二年間に延ばし、その間は正当な理由がなくても一方的に解雇できるようにするという制度です。

 若年層の失業率が高いというのがその理由ですが、解雇しやすくすれば雇用が増えるという説明は、国民を納得させることはできませんでした。「若者を使い捨てにする」という批判が急速に広がりました。

 批判は若年層にとどまりません。労働者の中からも、これまでの解雇規制が骨抜きになるという批判が高まりました。

 働くものが雇い主の勝手な都合で解雇されないようにするルールは、働くものの権利の中核です。フランスでは長年の運動で、雇い主が無期限(正規社員)契約の労働者を解雇しようとする場合、事前通告や解雇理由を示す義務を課せられるなど、厳しい規制があります。

 財界などからは、「国際競争力の強化」やコスト削減を狙って、雇用・解雇の条件をもっと規制緩和してほしいと、労働力市場の「柔軟化」を求める動きが強まっています。無期限契約の労働者を減らし、有期限(非正規)契約の労働者を増やす傾向は強まっており、二十九歳未満の労働者では、三分の一以上が有期限雇用になっています。

 若年層での解雇規制の緩和が、労働者全体の権利を掘り崩すことになるという批判は、切実で根拠があると国民にうけとられました。

 勝手なルール変更は許さないと、労働組合と学生団体がCPE反対でスクラムを組み、全国的な共同行動を成功させるなかで、国民の中でも反対の世論が急速に広がりました。みずからの問題としてたちあがった若者や労働者は、「歴史的勝利」(高校生連合委員長)、「一致した行動による成功」(労働総同盟全国書記)と評価しています。

 CPE導入にあたってフランス政府は、ドイツの連立政府など世界各国でもこうした規制緩和が広がっていると宣伝しました。しかし、フランスの労働者・国民は、そうした宣伝もはねのけ、規制緩和では雇用は守れないという判断を下したのです。フランス国民のたたかいが、ヨーロッパなど世界的な規制緩和の流れに及ぼす影響も、決して小さくありません。

日本でも安定雇用を

 日本でも雇用問題とくに若者の雇用問題は、日本社会の未来がかかった重要な課題です。小泉内閣は「構造改革」の中で企業が正社員を減らし、パートや派遣などの非正規雇用を増やすのを応援する一方、国際的に遅れた日本の解雇規制などの制度をさらに緩和しようと「労働契約法」などの制定をたくらんでいます。

 安定した仕事・人間らしく働ける職場をという願いは、国を問わず、全国民の願いです。不当な規制緩和を許さず、雇用と権利を守り発展させるために、日本でも力をあわせることがいよいよ大切です。


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