2006年4月5日(水)「しんぶん赤旗」

核燃再処理の試運転

中止求めた運動を無視

青森


 青森県六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場で、プルトニウムを取り出す試験運転が三月三十一日から始まりました。核燃料サイクル計画を強引にすすめる政府・電力会社などにたいし、地元住民や関係者の不安や批判が強まっています。


 原燃と安全協定を締結し、試運転の開始を認めた三村申吾青森県知事に対して、同県の核燃料サイクル施設立地反対連絡会議、反核実行委員会、核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会の反核三団体が共同で抗議。日本共産党も参加する立地反対連絡会議は、これとは別に独自に集めた約五千人分の署名を提出し、試験の中止を要求しました。

岩手県側からも

 抗議は、再処理工場から排出される放射性廃液が三陸の海産物に影響を与えることを心配する岩手県側からも続きました。宮古市長と市議会議長は安全協定締結や試運転をすべきでないとする抗議文を三村知事と兒島伊佐美原燃社長に送付しました。

 試験運転を開始した三月三十一日には、宮古市と山田町、岩泉町、田野畑村、普代村、川井村の六市町村長が連名で抗議文を原燃に送付。

 「住民に広く説明がなされるまで安全協定締結や試運転をすべきでない―という再三の要請をないがしろにされた」と批判し、再度、岩手県民対象の説明会を複数会場で開くことを要求しました。

3団体が共同で

 青森県では、県が核燃料サイクル施設の立地受け入れを決めた一九八五年以降、それぞれ反対運動を続けてきた反核三団体が、今年一月から初めて共同行動を展開しました。

 七十三団体と三十八個人が賛同した試運転の中止を求める共同アピールを発表し、県と原燃に提出。三村県知事が出席しての意見聴取の場などで、放射能による環境汚染、臨界事故などの危険、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地すら見通しがないこと、根拠のない「プルトニウム利用計画」など、さまざまな問題点を追及しました。

 青森県弁護士会(小田切達会長)も、三村知事に対して、「再処理の技術は未確立で、安全対策も不十分」として協定締結に反対する意見書を提出するなど、試運転中止を求める世論が、広がりました。


原発より危険な“放射能化学工場”

 再処理工場は、原発の使用済み燃料から、燃え残りのウランと、新たに生成したプルトニウムを取り出す工場です。もともと核兵器の材料であるプルトニウムを取り出す技術を転用したもので、原発以上に危険で未成熟な技術です。

複雑

 再処理工場は、硝酸や有機溶剤など化学物質を使い、強い放射能をもつ物質を大量に扱うことから、「放射能化学工場」ともよばれます。工程は複雑で、機器の数は約一万、配管の長さは千三百キロメートルにも及びます。

 再処理の工程は、図のとおりです。

 まず、使用済み燃料を数センチの長さに細かく切断し、硝酸で溶かします。燃料を溶かした硝酸溶液から、プルトニウムとウランを分離・抽出。純度を高めたり(精製)、硝酸を蒸発させる(脱硝)などの工程を経た後、最終的に「ウラン酸化物」と「ウラン・プルトニウム混合酸化物」がつくられます。

 日本原燃によると、二〇〇七年八月までの試運転期間に、約四百三十トンの使用済み燃料から三トン強のプルトニウム(うち核分裂性プルトニウムは約二トン)を取り出す予定です。

 その後、本格操業に移行し、一一年からは、設計能力限界の年間八百トンを再処理する計画です。

危険

 海外の再処理工場ではプルトニウムによる臨界(核分裂の連鎖反応)事故、爆発による被ばく事故、廃液漏れ事故などが多発。茨城県東海村の再処理工場でも、一九九七年に爆発・火災事故が発生。放射性物質が施設外に放出され、作業員三十七人が被ばくしました。

 六ケ所村の工場でも試験段階ですでに、硝酸溶液漏れや貯蔵プールの水漏れなどトラブルが多発しています。東海村の工場より規模が大きいだけに、事故が起こった場合の影響が懸念されます。

 通常の運転時も、使用済み燃料から出る放射性物質のクリプトン、トリチウム、ヨウ素などを海や大気に垂れ流します。

 また、再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の処理・処分も未解決の問題です。

矛盾

 プルトニウムの使い道にも、めどがたっていません。もともと、再処理で取り出したプルトニウムは、高速増殖炉というタイプの原発で使う予定でしたが、事故が起こるなどして実現の見通しは立っていません。

 そのため政府は、本来ウラン燃料を使う原発で、プルトニウムを混ぜた燃料を使用する「プルサーマル計画」に固執しています。二〇一〇年度までに原発十六―十八基に導入する計画ですが、プルサーマルは、経済性も悪く、原発の危険性を高めるだけです。

 核兵器の材料となるプルトニウムの過剰状態が続くと、「利用目的のないプルトニウムをもたない」としてきた政府の“国際公約違反”の事態が長期にわたって続くことになります。

図

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