2006年4月3日(月)「しんぶん赤旗」
「グアム移転」で見えた
米海兵隊 強化の構図
新基地手に入れ/既存施設返還せず/費用は日本の税金
米軍はグアムと沖縄に二つの新基地を手に入れ、既存基地も返還せず、費用は日本国民の税金から―。これが、「沖縄の米海兵隊八千人グアム移転」案の真相です。
海兵隊強化の狙いあけすけ
日米両政府は、沖縄の米第三海兵遠征軍(IIIMEF)司令部を中心に海兵隊員八千人のグアム移転を合意しました。日本政府は「沖縄の負担軽減のため」といいますが、米側は、海兵隊強化の狙いをあけすけに語っています。
グッドマン米太平洋海兵隊司令官は「海兵隊が複数の場所から太平洋地域の紛争地帯に対処する能力において、グアムが中心的な要素になる」(米軍準機関紙「星条旗」二〇〇五年十一月六日付)と指摘しています。
グアムの主要基地は、アンダーセン空軍基地とグアム海軍基地です。海兵隊は〇一年、アンダーセン空軍基地の旧住宅地区の譲渡を空軍に要求。〇二年に米議会で譲渡が承認されると、「世界最大規模」(米海兵隊)の都市型戦闘訓練施設を建設しました。
同施設を頻繁に使用しているのが、沖縄の米海兵隊です。
今年一―二月にも、TRUEXと呼ばれる大規模な戦闘訓練を実施しました。〇四年には陸上自衛隊に、イラク派兵を想定した都市型戦闘訓練を指導しました。
これに加えて、今回の移転計画では、海兵隊基地(司令部棟、隊舎、住宅など)の新設、既存の空・海軍基地の拡充(訓練場、海軍病院の増築、揚陸施設など)、さらに自衛隊隊舎の建設まで示されています。(「日経」三月三十一日付夕刊)
グッドマン司令官は「首尾よく移転を進めるために、第一級の訓練施設がグアム及びその周辺に求められる」(同前)とも述べ、施設建設がグアム移転の前提条件であるとの考えを示しています。
「グアム移転」を契機に、訓練拠点を拡張・強化し、本格的な出撃基地に変える狙いです。
「8千人」移転数字は水増し
「八千人」の移転という数字自体、水増しです。
日米両政府は、「沖縄の海兵隊一万八千人から八千人を削減する」と口をそろえて説明しています。そうなると一万人が沖縄に残ることになります。
一方、在日米軍司令部は本紙に対して、現時点での沖縄の米海兵隊の兵力は一万二千五百人と回答しました。
沖縄からイラクへ派兵した後、交代部隊が来ない状態がつづいており、一万八千人を大きく割りこんでいます。政府も「(一万八千人は)現実の人数とは別」(大古和雄・防衛庁防衛局長、三月十六日の衆院安保委)と認めています。
一万人を残すとすれば、実質的な削減は二千―三千人にすぎません。しかも、政府はグアムに移転した部隊が沖縄に再展開する可能性も否定していません。
「一万人」の具体的な内訳は明らかにされていませんが、最精鋭部隊の第三一海兵遠征隊をはじめ、〇四年八月に沖縄国際大への墜落事故を起こしたヘリ部隊など、事件・事故を繰り返し、基地被害の元凶になっている実戦部隊は、ほぼそのまま残ることになります。
陸海空一体の運用が可能に
米海兵隊は、沖縄でも新基地を手に入れようとしています。ヘリ部隊の拠点・普天間基地(宜野湾市)に代えてキャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部に新基地をつくる計画です。
これも、単なるヘリ部隊の「移転」ではありません。地上戦闘部隊の基地と隣接し、港湾機能もつけ加えられ、海兵隊の陸海空一体となった運用が可能になります。米海兵隊の次期主力機・MV22オスプレイの配備も想定されています。
この新基地建設費用は一兆円近くになるとの見方もあります。
一方、現在、第三海兵遠征軍司令部が置かれているキャンプ・コートニー(うるま市)について、政府は「土地・建物の返還は未定」(大古防衛局長、三月二十九日の衆院沖縄・北方特別委)と述べ、編成変えによる別の部隊の使用も示唆しています。
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