2006年4月2日(日)「しんぶん赤旗」

NHK改革

スクランブル化の提案

公共放送になじまない


 政府が三十一日に閣議決定した「規制改革・民間開放推進三カ年計画」の中で、焦点の一つとなっているのがNHK「改革」です。昨年末の規制改革・民間開放推進会議の最終答申を受け、受信料制度など公共放送の根幹にかかわる見直しを早急に行い、二〇〇六年度早期に一定の結論を出すことを明記しています。

 「小さくて効率的な政府」の実現に向けて規制改革・民間開放を重点的に取り上げた答申は、メディア環境の変化の下、通信と放送の融合を促進させようというものです。放送は産業としか位置付けられておらず、「新規参入機会の開放と公正な競争環境の整備」といった「競争」の理念ばかりが目立ちます。

 「民間にできることは民間に」。その流れの中で提起されたのは、スクランブル化の導入です。スクランブル化とは、電波の暗号化で受信料未払い者には映像が見られないシステムです。「三カ年計画」では、BSデジタル放送のスクランブル化について早期に結論を得るとし、地上デジタル放送のスクランブル化の是非を含む受信料制度のあり方などについても、早期の見直しを盛り込んでいます。

 三月の衆院総務委員会でNHKの橋本元一会長は、スクランブル化について「限られた受信者に情報を届けるという限定的な方式は、公共放送の役割になじまない」と否定しています。

 放送法第七条には、NHKは「あまねく日本全国において受信できるように…国内放送を行う」とあります。全国どこでも分け隔てなく視聴できるから公共放送なのであり、ここに風穴をあけることは、将来の民営化にもつながりかねません。

 NHKは言論報道機関です。ジャーナリズムが産業の側面だけで語られていいのか。先の総務委員会では、日本民間放送連盟会長の日枝久氏も「単なる産業論や経済論だけではなくて、文化という面もご議論いただきたい」と発言しています。「デジタル時代のNHK懇談会」委員のノンフィクション作家・吉岡忍氏は、放送文化を置き去りにしたNHK「改革」論議に警鐘を鳴らします。

 最大の問題は、受信料の担い手である視聴者を脇に置いたまま、NHKの将来が決められようとしていることです。電波は誰のものか。論議の主役は、私たち視聴者のはずです。(板)


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