2006年3月22日(水)「しんぶん赤旗」
主張
自衛隊の統合運用
命令一下の戦闘をめざすのか
自衛隊は二十七日から、陸海空三自衛隊の指揮・命令を一本化する新しい統合運用体制に移行します。
自衛隊は米軍と同じ常設統合軍に変わり、防衛庁長官の指揮を受けて新設の統合幕僚長が、三自衛隊、二十五万人の巨大な実力部隊を動かすことになります。指揮形態が米軍と同じになることで、日米軍事一体化の強化と海外で戦争する軍事体制づくりが大きく進むことになります。それはまた、「制服組」の政治介入を生む危険と隣り合わせです。
「制服組」主導の危険
自衛隊は、どのレベルであれ、一人の指揮官が陸海空部隊を指揮する常設統合軍になります。指揮体系が米軍と同じになることは共同作戦を効果的に進めるテコになります。
米軍は、一人の指揮官が陸海空などでつくる統合部隊を指揮し、たたかいます。多国籍軍をつくる場合も、同盟国軍が一人の指揮官によって指揮されるのを前提にしています。
統合運用体制移行の背景には、海外の戦場で自衛隊が米軍作戦を分担し、戦闘部隊としての役割を果たさせるというブッシュ政権のねらいがあります。陸海空三自衛隊の各幕僚長がそれぞれ個別に部隊を動かす現行体制では迅速な共同作戦が難しいとして、統合運用体制への移行を求めてきたのです。
小泉政権は、「防衛計画の大綱」(二〇〇四年十二月)で、イラク戦争のようなアメリカの先制攻撃戦争参加を中核とする「国際平和協力活動」を安全保障政策の柱にしました。それはイラクで行っているような輸送などの後方支援に限定されるものではなく、武力行使を想定にふくんでいるのはいうまでもありません。
統合運用体制は、憲法九条改悪を見越して、海外で武力行使を効果的に実施するためのものであり、到底認めることはできません。
統合幕僚長の権限強化による「制服組」の発言力増大も心配です。
統合運用体制は自衛隊創設時から問題になってきました。しかし、政府は、「昔のような弊害を再び繰り返させてはいかん」(一九五四年五月三十一日 参議院内閣委員会 木村保安庁長官、七月から防衛庁長官)として拒否してきました。
自衛隊創設のさい、軍部横行の再来を許さないために、防衛庁設置法で、「官房長及び局長」が自衛隊のすべてについて防衛庁長官を補佐すると明記もしました(一六条)。
このしくみを実質的に変えるのが統合運用です。内局と統合幕僚長の防衛庁長官補佐権限を対等な形にするだけでなく、内局の権限を弱め、相対的に統合幕僚長の権限が大きくなるようにしています。
二〇〇二年までの防衛白書で明記していた「基本的方針の作成について長官を補佐する防衛参事官が置かれている」の表記を〇三年から削除しました。内局の自衛隊統制のかなめである防衛参事官(官房長と局長などから構成)も十人から八人に減らしました。軍事優先政治の危険を軽く考えるわけにはいきません。
過去の教訓をふみつけにし、海外での戦争推進のテコとなる統合運用体制は憲法九条とは相いれません。
歯止めは憲法九条
アジアと世界では、紛争を戦争ではなく話し合いで解決する流れが本流となっています。アメリカ政府も、イラク戦争の失敗にこりて外交重視を示すようにもなっています。
小泉政権の平和と進歩への異常な逆流を許すわけにいきません。
憲法九条を守り抜くことがいよいよ重要になってきています。