2006年3月22日(水)「しんぶん赤旗」

米軍の全情報「秘密」に

国民への規制 拡大の恐れ

「保護規定」判明


 日米両国政府が検討している「軍事情報保護一般協定」(GSOMIA=ジーソミア)の秘密保護規定があきらかになりました。自民党の久間総務会長(元防衛庁長官)は一月の訪米で、「防衛庁や外務省に検討させる」と約束しており、締結に向けた動きも本格化しています。

 GSOMIAは、アメリカが国民やメディアの目をふさいで、日本を先制攻撃戦争に動員し、軍事一体化をすすめるためにもちだしているものです。軍事一体化をすすめるため、米軍がもつ軍事秘密情報を日本に提供するのに伴い、日本政府に米軍秘密情報を保護させるのが目的です。

 協定第三条は、「秘密の軍事情報とは、情報譲渡国政府の国家安全保障のため、また、適切な保護当局によって秘密にされるよう指定される政府の軍事情報もしくは資料」と定義したうえで、つぎのように規定しています。

 「どのような形であれ、文書、口頭、視覚情報をふくむ秘密情報」「その物理的形状あるいは概観にかかわらずあらゆるものをふくみ、書類、手書きの文書、武器、装備、機械、機器、装置、模型、写真、録音、複製、メモ、写生、図解、原型、デザイン、電算装置、地図及び所管ならびにその他の情報が導かれる製品、物資もしくは品目に限定されない」

 協定がいう軍事情報は、個別の武器・装備にとどまらず、米軍の戦争計画や戦術データ、暗号情報、弾道ミサイル防衛情報、コンピューター通信、情報など軍事分野のすべてにわたります。

 この秘密保護を担保するため、第一条は、「情報受領国政府は、情報にたいして譲渡国政府が与えているものと同程度の保護を与える」と義務付けています。

 これは、米軍の軍事情報の保護を口実に、国民を取り締まりの対象とする、現行の日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法や日米地位協定の実施に伴う刑事特別法の改定、あるいは新たな軍事秘密保護法の制定にもつながりかねません。


米軍情報の秘密保護規定

戦争態勢づくり加速

解説

 米軍再編にかんする「中間報告」(昨年十月)は、「共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる」と明記しました。軍事情報保護一般協定(GSOMIA)の締結はその具体化の第一歩です。

 アメリカが先制攻撃戦争の際、日本に補完的役割を効果的に果たさせるため米軍の軍事秘密情報を日本に共有させる考えです。戦争技術が発達し、いまやコンピューターが作戦計画のカギをにぎっています。軍事一体化を進めるうえで、これまでのような個別の兵器・装備の情報保護では不十分として、コンピューターを中心にした軍事システム全体を保護する必要からGSOMIA締結が浮上してきたのです。

知る権利を奪う

 現在、軍事保護と称して国民を取り締まり対象にしている法律には、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法と日米地位協定の実施に伴う刑事特別法があります。前者は、米軍が日本に提供した武器・装備にかんして「不当な方法」で「防衛秘密を探知し、または収集した者」は十年以下の懲役。後者は、「合衆国軍隊の機密」について「不当な方法」で「探知し、または収集した者は十年以下の懲役」と規定しています。

 GSOMIAの締結で、現行法の改定、あるいは包括的な軍事秘密法の制定もあり得ます。

 政府はいまでも「秘密指定」を理由に軍事情報を隠しています。米軍の動きを知ろうとすると刑特法適用の危険もあります。協定締結は、状況をさらに悪化させ、国民の知る権利やマスコミの取材権を根こそぎ奪う暗黒政治を生み出す危険があります。

憲法違反は明白

 戦前の軍機保護法(一八九九年制定、三七年改定)は、一般人が軍事施設を「測量、撮影、模写、複写、複製」することを禁止しました。小学生が写生会で鉄橋を通過する軍用列車を書くことも禁じられました。国民は軍事動向を知ることもできなかったのです。

 GSOMIAは、国民、メディアが日米軍事一体化の動向を知ることも許さない、憲法違反の協定であることは明白です。

 政府がこれまで「結ぶつもりも意図もまったくない」(一九八八年五月十七日衆院内閣委員会 岡本外務省安全保障課長)といってきたのはこうした事情があったからです。(山崎静雄)


 GSOMIA(軍事情報保護一般協定) アメリカが軍事協力国に軍事情報の保護を義務付けた協定。秘密情報の保護義務のほか第三国政府への移転原則禁止、目的外使用の禁止などを規定。締約国はルクセンブルグ、タイ、シンガポールなど十六カ国。類似の協定に、情報保護一般協定(二カ国)、秘密軍事情報保護保全措置協定(十二カ国)、その他五種類(十カ国)がある(米国務省「treatys in force2005」より)。秘密保護規定は共通。


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