2006年3月11日(土)「しんぶん赤旗」

公務員削減目標を明記

「行革推進」法案国会提出 公共サービス低下


 政府は十日の閣議で「行政改革推進」法案を決定し国会に提出しました。公共サービスの低下をもたらす公務員の総人件費削減をはじめとする五項目を重点分野とし、具体的な数値目標を明記しました。

 小泉純一郎首相は閣議決定の際、「今国会の最重要法案だ」と述べ、早期成立を指示。安倍晋三官房長官は「小さな政府をつくっていく方向を示した意義ある法律だ」「連立政権が続いていく限り基本的な政策」だと述べました。

 法案は「基本理念」で「効率的な政府」を実現するには民間の「活力が最大限に発揮されるようにすることが不可欠」だと強調。政府・地方自治体が実施する事業について「民間活動の領域を拡大」するとして、公共サービスを民間任せにしていくことを求めています。

 その上で、(1)公務員の人件費削減(2)政府系金融機関の統廃合(3)三十一ある特別会計の整理合理化(4)独立行政法人の「見直し」(5)国の資産・債務圧縮―の重点五分野の「改革」の段取りも提示。五年間を期限に首相を本部長とする「行政改革推進本部」を設置します。

 最大の目玉にしている公務員の総人件費削減では、国家公務員を二〇〇六年度以降の五年間で5%以上純減する目標を明記。地方公務員も同様に4・6%以上純減することを求め、そのために国が基準を定める分野の職員(教育・警察・消防・福祉関係)削減へ基準の「見直し」を打ち出しました。


解説

「行政改革推進」法案

「数字先にありき」の公務員削減

 「行政改革推進」法案は、「小さな政府」「官から民へ」の掛け声の下で、社会保障や国民向けサービスを切り捨てる「簡素で効率的な政府」の実現に向け、「改革」の基本方針や重点項目を盛り込んだものです。小泉内閣は今国会の最重要課題に位置付けています。

 同法案は基本理念に「事務及び事業を可能な限り民間にゆだねて民間活動の領域を拡大すること」を掲げています。「民間にできることは民間に」の立場で、公共サービスを企業のもうけのために開放することが目的です。すでに政府が国会に提出した、行政機関と民間企業が競争入札して公共サービスの担い手を決める「公共サービス改革法案」(市場化テスト法案)と一体のものです。

 法案の最大の目玉としているのは、公務員の総人件費削減です。国家公務員の定員を二〇〇六年度以降の五年間で5%以上純減する目標を明記しています。しかし、数字先にありきで、なぜ5%なのかという根拠は経済財政諮問会議などの場でも何ら示されていません。国家公務員数は定員管理法制によって極限まで減らされています。さらに減らせば、国民への公共サービスを大きく後退させることになります。

 法案は地方公務員も五年間で総数の4・6%以上純減することを求めています。そのために、地方公務員のうち国が基準を定めている分野(国基準分野)について、基準を低めて強引に削減することを打ち出しています。福祉、教育、消防、警察―国基準関連は、いずれも住民の暮らしに直結する分野で、サービスの悪化につながります。

 特に数の多い教職員については、「児童及び生徒の減少に見合う数を上回る純減」をさせるとしました。

 さらに法案は、国・地方公務員の「給与制度の見直し」=賃下げを打ち出しています。公務員給与引き下げは、民間労働者の給与引き下げと連動し、官民で賃下げ競争を加速させる事態を引き起こします。

 公務員削減の先にあるのは国民への負担増と大増税です。ウシオ電機の牛尾治朗会長は、政府自らが身を切って「まず小さな政府を実現しないと、増税論議などとんでもない」(〇五年一月二十日の経済財政諮問会議)と述べています。消費税増税など将来の大増税への地ならしというねらいがあります。

 また法案は、現在八つある政府系金融機関を統廃合や民営化で一つに集約し、〇八年度から新組織に移行するとしています。中小企業向け政府系金融機関は中小零細企業に貸し出しを行い、営利を重視する民間金融機関を補完しています。政策金融の縮小は中小零細企業への金融支援を貧困化し、日本経済の基盤を弱めることになりかねません。(小林拓也)


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