2006年3月10日(金)「しんぶん赤旗」
主張
岩国基地強化
痛みのたらい回しはね返そう
十二日は米空母艦載機部隊の岩国基地移駐の可否を問う山口県岩国市の住民投票の日です。
岩国市と住民の多くは、基地の痛みを増大させる移駐計画に反対し続けています。住民の生活の平穏と安全を守りたいとの当然の願いからです。岩国市民の懸念が杞憂(きゆう)でないことは、日本共産党の市田書記局長が七日参院予算委員会でおこなった論戦でも明白になりました。
住民投票の成功は、沖縄県民が辺野古沖での基地建設を断念させた住民の力を日米両政府に思い起こさせるでしょう。周辺自治体と住民はもちろん全国の関係地域住民が注目しているのもそのためです。
痛み負うのが当然か
小泉首相は、「厚木の部分は(基地の負担が)減るかもしれないけれども、新たにもってこられた地域においては負担になり得る」と答弁しました。基地の痛みのたらいまわしが当然だというのです。こんな論理で新たな負担を押し付けられるのではたまりません。
騒音被害や墜落の危険と共存している厚木基地周辺住民の苦しみは、根源となっている横須賀港の空母母港化の返上で解決する道があります。それをいっさい追求もせず、岩国市民へのたらいまわしですますなど認められるはずがありません。
岩国市民はいまでも、騒音被害や墜落の危険に不安を感じながらの生活を強いられています。厚木基地からの空母艦載機部隊移駐は、この苦しみを増加させるだけです。
岩国基地は新たな移駐で、米軍機だけで百機以上、ほぼ五千人の兵員、沖合一キロ埋め立てで面積も増え、米軍の海外基地のなかでも最大級の基地に変わります。
米軍機が増えれば離着陸回数は増えます。騒音は当然激増します。政府は、岩国基地ではほとんどないかのようにいっていた夜間離着陸訓練(NLP)が、「硫黄島で天候不良等により十分な訓練が実施できない場合にはあり得る」と認めました。硫黄島の天候不良を理由にしたNLPは厚木基地周辺の住民を苦しめています。それを岩国基地でも認めるというのですから、痛みのたらいまわしにすぎないことは明らかです。
頻繁にくりかえされる昼間の地上離着陸訓練による騒音被害も生活の平穏を台無しにします。厚木基地周辺では、昼寝が必要な幼児が寝かかったところを音で起こされるので昼寝をしない、食事中も音で食べるのをやめる、親がベランダから危険を知らせようとしても声が届かない、など深刻な事態をつくりだしています。岩国市民が甘受せよといわれる筋合いはどこにもありません。
政府は、飛行経路を海側に設定するので騒音は減少すると言います。しかし、経路設定を米軍が認めているわけではありません。米軍機は軍事的必要性で飛行します。経路設定で騒音が減少するというのは幻想です。墜落の危険も増えます。米軍人の凶悪犯罪の増加もさけられません。
空母艦載機部隊の移駐は、岩国市民の「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法二五条)を破壊します。市民が拒否するのは当然です。
市民だましに審判を
空母艦載機部隊の移駐は、基地負担激増への道です。岩国市民が生活の平穏と安全を守るため、移駐計画を拒否するのは、憲法が保障する平和的生存権の行使です。騒音が減るとか安全面に最大限の考慮を払うなどという政府のだましを許さず、住民投票を成功させ、移駐計画拒否の審判をつきつけましょう。