2006年3月9日(木)「しんぶん赤旗」

岩国基地は機能強化

日本の空から爆音なくせ

参院予算委 市田書記局長の質問


 日本共産党の市田忠義書記局長が七日の参院予算委員会でおこなった質問(大要)は次のとおりです。


写真

(写真)米軍岩国基地の強化・騒音問題で質問する市田忠義書記局長=7日、参院予算委

市田 談合でゼネコンに総額いくら潤わせたか

施設庁長官 約264億円だ

 市田忠義書記局長 日本共産党の市田忠義です。

 いま国民の大きな批判を浴びている防衛施設庁の官製談合について、まずお聞きします。

 岩国基地の拡張工事、一九九六年から二〇〇五年までの間にすでに契約された請負額、予定価格、その総額はそれぞれいくらか、端的に金額だけお答えください。

 北原巌男防衛施設庁長官 平成八年度以降本年の二月末現在までにおける岩国飛行場滑走路移設にかかわる工事の契約概要ですが、請負金額は約千四百十七億円です。予定価格は約千四百四十八億円です。

岩国基地工事は談合の跡が歴然

 市田 請負金額は予定価格の97・8%、岩国の工事は初めから談合でやられていたという指摘がありましたが、今の落札率を見ても談合の跡が歴然としている。

 公正取引委員会がこう言っています。「談合が指摘されて是正されると、平均18・6%安くなる」と。この基準からすると、工事を請け負ったゼネコンを総額いくら潤わせたことになるか。

 防衛施設庁長官 約二百六十四億円になります。

 市田 談合が摘発されても、不当に手にした、いま言われた二百数十億円、これはぬれ手でアワで懐に入れたまま。納税者である多くの国民は、自分たちの税金がそういうところへ行っているんだから返してほしいと。総理、この国民の声にどうお答えになりますか。

 小泉純一郎首相 政府としても、談合防止のためにどのような改善策を講じていかなければならないか、いま真剣に検討しているところでございます。今後ともこのような貴重な税金を使う事業がこのような談合によって被害を受けることのないように、公正な競争を促進するように、そしてまた談合排除のために全力で取り組んでいきたいと思っております。

 市田 このお金は結局、防衛施設庁の高級職員の天下り先を確保するために使われた。国の「防衛」どころか高級官僚の退職後の「生活防衛」のために国民の税金が使われた、そういう性格の問題であります。

 いま米軍再編について、「どうしてこういう人たちと話し合わなければならないのか」「施設庁解体ということを言われているけれども、なくなる省庁と話して一体何になるのか」と、関係する多くの自治体でそういう声が聞かれます。防衛庁長官、この怒りの声にどう答えられますか。

 額賀福志郎防衛庁長官 私は、こういう再発防止のために、施設庁のこれまでの歴史的な経緯あるいはまた人事の停滞、あるいはチェック体制がなかったこと等々を総合的に考えて、施設庁の出直しを図った方がいい。そのためには、解体をして、きちっと庁内のチェック体制をしき、監視体制を整備することによって出直す。と同時に、入札制度を競争原理を働かせる、再就職問題についてもそれ相応の対応措置をとっていくこと、そういうことを総合的に考えていきたいと思っているわけです。


市田 130機の軍用機集中 世界に例をみない

 市田 ところで、米軍の岩国基地というのはどういう規模の航空基地か。外務省にお聞きしますが、アメリカの国防総省の「基地構成報告」二〇〇五年版、米軍が海外に展開する航空基地の中で米軍岩国基地は面積でどういう位置にあるか、それだけ端的にお答えください。

 河相周夫外務省北米局長 「米軍基地構成報告」二〇〇五年版に従いますと、米国以外に所在する航空施設の中で、面積でいうと岩国飛行場は第三位に入っております。ただ、この面積につきましては、提供水域の部分も含めた数字になっておるようです。

 市田 (を示しながら)これは、アメリカの国防総省の報告によって作った資料ですが、提供水域も含めると岩国が六千五百六十七エーカー、嘉手納空軍基地が四千九百三十、世界最大規模の航空基地であります。そして、軍人数でいうと、あるいは常駐する戦闘攻撃機の機数でも世界有数であります。今行われている移設拡張工事で、陸上部分はこれまでの一・四倍になります。東京ドームの百六十八倍の大きさになる。

 人員も大幅に増えるし、常駐する戦闘攻撃機は、いま嘉手納が約百機ですが、ここへ五十七機来るわけですから、最大規模の戦闘攻撃機がこの岩国に来る。百機態勢。その他の米軍機や自衛隊機を合わせると、およそ百三十機と言われています。これは防衛施設庁の報告でもそうなっています。これだけの軍用機が集中している基地が、米軍が海外に展開している航空基地の中にほかにありますか。

 北米局長 手持ちの資料をちょっと持っておりませんので、答弁は差し控えさせていただきます。

 市田 世界にないんですよ。改めて調べてくださいよ。われわれは自主的に調べました。客観的な資料で調べました。世界一なんですよ。

 そして、岩国に移駐してくる五十七機の空母艦載機、そのうちFA18という戦闘攻撃機が四十九機です。既に配備されているFA戦闘機と合わせますと、FA18だけで合計八十五機になります。これは大変危険な戦闘機なんです。

 防衛施設庁は、関係する自治体の問い合わせに、厚木飛行場所属の空母艦載機の日本国内における過去五年間の事故は非常に少なかった。部品落下および物件投棄は五件、日本近海における墜落一件と、そうお答えになっています。大したことないんだと。

 そこでお聞きします。米海軍の公式ホームページでは、FA18ホーネットの「クラスA」―「クラスA」というのは死者あるいは墜落などによる被害額が百万ドル以上、そういう重大事故にランクされる事故、二〇〇三年度と二〇〇四年度、それぞれ年度別に、件数だけ端的にお答えください。

グラフ

 北米局長 米軍航空機の運用については日本政府の方で個々説明する立場にはございませんけれども、ご指摘の米海軍のホームページによれば、FA18の事故、「クラスA」に関して言えば、二〇〇三年度十三件、二〇〇四年度十四件というふうに記載されております。(グラフ



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  他に、テューレ空軍基地(グリーンランド、約23万4千エーカー)、ディエゴガルシア海軍支援施設(英国領、7千エーカー)がある。テューレは米軍の航空部隊も航空機もほとんど常駐しておらず、ディエゴガルシアは港湾施設・通信施設を含めたもので空軍常駐部隊も常駐配備機もなく、比較対象にならない。


市田 主力のFA18戦闘機は年平均10回近く事故

 市田 そのとおりであります。二〇〇〇年からの五年間を見ますと、「クラスA」の事故は何と四十八件で、年平均十件であります。しかも、いまのは世界でありますが、在日米軍関係のFA18の事故も頻発しているんです。

 いろんな資料で調べてみました。一九八九年以降の十五年間に、確認できるだけで二十三回に及んでいます。このパネル(下の表)、見にくいでしょうけれども、見えないぐらいたくさん起こっているんです。それぐらいたくさんFA18ホーネットというのは事故を起こしています。これでどうして安全と言えるのか。

 防衛施設庁は関係自治体への説明で、夜間の離発着訓練、いわゆるNLPを岩国でやるのは低騒音、騒音の少ないE2Cだけだから大したことはない、そういう趣旨のことをおっしゃっています。

 そこでお聞きしますが、E2C以外の他の艦載機のNLP、夜間離発着訓練は絶対にやらないと、硫黄島が天候不良など緊急時にも絶対やらないと断言できるか。岩国市への防衛施設庁の回答ではどうなっているか、どういう回答をしたか読み上げてください。

 防衛施設庁長官 十二月二十一日に、次のように回答さしていただきました。

 2プラス2共同文書におきまして、空母艦載機離発着訓練のための恒常的な施設が特定されるまでの間、現在の暫定的措置に従う旨が示されており、現在も岩国飛行場が予備飛行場として指定されていることや空母艦載機が所在する厚木飛行場が予備飛行場として指定されていることから、空母艦載機の移駐後の岩国飛行場についても予備飛行場として指定され、硫黄島で天候不良等により十分な訓練が実施できない場合には空母艦載機離発着訓練が実施されることがあり得ると考えていると。

 市田 いまのは重大な答弁なんですよ。ジェット戦闘機による夜間離発着訓練NLPをやる場合もあると。やらないやらないと言っていたけれども、やる場合もある。これ重大なんです。

 そこで、お聞きしたいんですが、では昼間の離発着訓練は岩国で行うのか、端的にお答えください。やるのかやらないのか。

 防衛施設庁長官 いわゆる空母艦載機離発着訓練につきましては、硫黄島でやることが原則でございます。

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市田 事前訓練の騒音回数は

施設庁長官 百デシベル以上は月1499回

離発着訓練とは一体なんなのか

 市田 そういう説明を聞きますと、岩国ではほとんど飛ばないんじゃないかと、多くの国民の皆さんはそういう錯覚に陥られると思うんです。

 そこで、私、大事な問題は、一体、離発着訓練とは何かということだと思うんです。政府は、広島県への説明で、空母艦載機離発着訓練とは、着艦信号官が着艦ごとにパイロットを監督し評価する訓練、すなわち監督官が試験をして、テストをする、そういう場合のことを空母艦載機離発着訓練という。その中で夜間にやるものだけをNLPというと答えています。そして、空母艦載機離発着訓練が実施される場合には、在日米軍司令部からの連絡を受け、公表するとともに、各防衛施設局を通じ速やかに関係自治体にお知らせしていると。

 要するに、分かりやすく言うと、政府が原則として硫黄島でしかやりませんと言っている離発着訓練というのは、空母への着艦を正しくできるかどうかのいわば技能検定試験なんですよ。練習は含まれてないんですよ。試験のことを離発着訓練という。試験の前には猛勉強するんです。その技官が見てないもの、すなわち事前の訓練はこの離発着訓練には入らない。徹底的に練習しなかったら、試験にとおらない。だからタッチ・アンド・ゴーなんてしょっちゅうやられているんですよ。艦載機が着陸体勢に入って、車輪が地面に着くと同時にエンジンを最大限吹かして再び急上昇する。これタッチ・アンド・ゴーと呼ばれています。

 厚木基地の現状を見ますと、例えば空母キティホークが横須賀に入港するのは、過去五年間のデータを見ますと、年間平均二百十一日間です。その間、正式な離発着訓練が行われるまで事前訓練、タッチ・アンド・ゴーが頻繁に行われている。事前訓練、どれぐらいやられていますか。

 防衛施設庁長官 米軍の運用にかかわる問題でございますので、その正確な状況は把握はいたしておりません。

事前訓練の名で騒音まきちらす

 市田 極めて無責任なんですね。それでよく、騒音被害はないなどとよく言えたものだ。

 どれぐらいやっているか。NLP直前の一カ月間の厚木基地周辺の朝六時から夜十時までの騒音発生状況、NLPがやられる前ですよ、いわゆる事前訓練。その時期の厚木基地周辺の朝六時から夜十時までの騒音状況調べたら、大体どれだけの事前訓練やっているかは類推できます。

 そこでお聞きしますが、二〇〇四年七月七日から十六日にかけてと昨年の一月十八日から二十三日にかけて行われたNLP訓練の直前一カ月間の騒音発生状況はどうだったか。これは広島にも、山口、岩国にも説明されています。その中で、九〇デシベル以上および一〇〇デシベル以上の騒音はこの期間に何回あったかと、それだけ端的にお答えください。

 防衛施設庁長官 十六年度(〇四年度)におきましては、二回硫黄島にてNLPが行われております。一回目は十六年七月でございますが、その直前の一カ月につきまして、九〇デシベル以上の騒音発生回数は、九〇デシベル以上一〇〇デシベル未満が千八百八十三回、一〇〇デシベル以上が千百九十六回となっております。二回目のNLPが十七年(〇五年)一月に行われていますが、その前に行われました事前訓練におきまして、九〇デシベル以上を申し上げますと、九〇デシベル以上一〇〇デシベル未満が千四百十二回、一〇〇デシベル以上が千四百九十九回となっているところであります。

 市田 これ、すごいことなんですよ。いま、およそ一カ月間のことを言われましたけれども、一日にしますと、例えば九〇デシベル以上が六十四・九回。これは〇四年六月八日から七月六日の間です。そして、一〇〇デシベル以上が一日四十一・二回。およそ一カ月間の合計の騒音回数は、いろんなデシベル全部合わせますと、なんと六千二百二十九回なんですね。〇四年十二月十九日から〇五年一月十七日までですと、なんと五千二百八十五回。およそ一カ月ぐらいの間にこれだけの騒音回数。事前訓練というのは通告も何もないんですよ。勝手に米軍が練習と称してやるものなのです。

 「離発着訓練は硫黄島でやります。だから大丈夫だ」と言っているけれども、政府がなかなか沈黙して語らないタッチ・アンド・ゴー、少なくとも、いま言っただけでもこれだけあるということが明らかになったと思います。

 私は、岩国でこういうことをやらないという説明がいかにいいかげんか。いくらNLPはやらないといっても、実際には事前訓練の名でものすごい騒音がまき散らされている。離発着訓練やらなくても日常の離発着でも騒音はまき散らされているんですよ。しかも、その範囲は大変広範囲です。

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地図

市田 厳島神社に被害ないのか

施設庁長官 確たることいえない

 市田 広島県は防衛施設庁への質問書で、「岩国基地の至近距離には世界文化遺産であり、雅楽や神能(かみのう)など歴史のある無形の文化財を今に伝えている厳島神社が所在する」「米空母艦載機の移駐による騒音の増加等が本県の文化・観光・産業や瀬戸内海の静穏な環境に及ぼす影響は計り知れません」と述べています。

 大体、日本が世界に誇る文化遺産、その上空を米軍の戦闘攻撃機がわが物顔で飛び回る。今でも飛んでいるんですよ。だから、厳島神社では、あそこで修行しているお坊さんまで修行にならないと、こんなことでは困ると。あそこにはお寺もあります。神社もあります。弥山(みせん)というところに真言宗の修行場があるんです。

 そこでお聞きしますが、絶対に厳島神社、弥山、あの辺りに飛ばない、騒音の被害はないと、そういうふうに言い切れるのか。広島県にはどういう回答しているか、回答したその文を読み上げてください。

 防衛施設庁長官 先ほど私が申し上げた九〇デシベルにつきましては、ご承知のように厚木の話でございまして、岩国に行きますと沖合に出ますので、いま申し上げた数字はぐっと少なくなります。

 宮島等につきまして回答した内容でございますが、航空機騒音が宮島およびその周辺地域における生態系への影響、厳島神社および同神社における雅楽等無形の文化財への影響および宮島及び周辺観光地に与える影響について確たることを申し上げることは困難であるが、今回の日米間の検討の過程においては、地元の状況も踏まえ、基地周辺に住む住民の生活環境が現状よりも著しく悪化することがないよう十分留意したところである(と回答)。

 市田 そういうごまかしの答弁やったら駄目ですよ。私は、厚木で事前訓練やられて、これだけの騒音が起こっているでしょうと、言ったんですよ。(施設庁長官は)離発着訓練という監督官が見てやる訓練ではなくて、事前訓練をやっているというのはよく分からない、米軍の運用にかかわることで知らないと言ったけれども、これだけの騒音があるということを発表しているじゃないかということを言ったんです。

 いま厳島神社の上を飛ばないとは、確たることを申し上げることは困難だ。十分に留意するといった。何が留意か。いまも飛んでいるんですよ。そして、これからも確たることは言えないと。これからも飛び続けますということを言っているのと同じじゃないですか。大体、政府の説明には根拠がないんですよ。騒音の予想図=コンター図を作って騒音被害は少ないということを証明しようとしているけれども、宮島だけがすっぽり外れているというのは恣意(しい)的なんです。

 この騒音予想図を作る際の飛行経路について、地元にどう説明しているか、私読みました。沖合移設に伴う環境影響評価の際に想定した飛行経路と同一でありますと、そう言っているんです。この環境影響評価は一九九五年の話ですよ。一九九五年当時のアメリカ側と調整した飛行経路だということなんです。十年前の想定で作られたもので将来の安心を担保するなど絶対にあり得ない、いいかげんなことを言ったら駄目です。

 広島はもう一つ懸念を表明しています。「本県においては、低空飛行訓練による騒音被害の実態があり、艦載機の移駐により、こうした訓練の増加につながることが予想されます」と。これは当然の疑問だと思うんです。そんなことはないと言えますか。

 これは外務省、防衛庁が返事出しているそうですけど、管轄は外務省だそうですから、北米局長でも結構です。広島にどう答えたか。

 北米局長 低空飛行訓練に関しましては、米軍の運用にかかわる問題であり、ご指摘のような状況が生じるかについて政府として一概には申し上げられないが、いずれにせよ、改めて米側に訓練に際しては安全面に最大限の考慮を払うよう申し入れを行う考えであるという回答をしております。

 市田 要するに、米軍の運用にかかわる問題だから、政府として一概に低空飛行訓練、やるかやらないか、増えるかどうかは言えないと。

 アメリカ本国では、低空飛行訓練、どこを飛ぶかって全部明らかにしているんですよ。ヨーロッパでも明らかにしている。日本国内だけ、これは米軍の運用にかかわることだからといって、飛行経路も明らかにしない。そして、地元への説明でも、ご指摘のような状況が生じるかについて政府として一概に申し上げられない。いずれにせよ、改めて米側に対して訓練に際しては安全面に最大限の考慮を払うよう申し入れを行う。ただ申し入れを行うというだけの話。結局、何もはっきりしてない。何もはっきりしてないのに大丈夫だ、安全だ、騒音はこれ以上ひどくならないと、そう説明しているだけであります。


市田 基地強化そのものだ

首相 ある程度負担になる

 市田 そこで、総理にお伺いしたいと思うんです。そもそも一九九六年に始まった岩国基地の拡張工事というのはどういう目的だったか。岩国市への政府の説明はこうでした。

 「騒音や安全性の問題を改善、除去するため、地元の長年の要望にこたえて実施するものであり、基地機能の強化を意図したものではない」と、そういう説明を岩国は受けていた。そのために沖合一キロに新しい滑走路を造る。ちょっとはましになるかなと思っていた(岩国市は受け止めていた)。そこに世界最大級の攻撃機を受け入れる。基地機能の強化を意図したものでないと言いながら、最大級の攻撃機受け入れ可能な基地になっている。

 総理、これは基地の強化そのものじゃないでしょうか。これ以上の基地強化はやらないと言いながら、これだけの米軍機、戦闘機がたくさん来る。これを基地機能の強化と言わずして何と言うんでしょうか。総理、いかがですか。

 首相 これは日本全体における米軍基地の再編の問題であって、一部が減れば、沖縄が減ればほかのところに移転しなきゃならない。いままでなかったところに飛行場ができれば、それはいままでなかったところにできた地域においては基地のある程度の負担になる。

 厚木の問題においても、厚木の部分は減るかもしれないけれども、新たに持ってこられた地域においては負担にはなり得る。しかし、全体で考えれば、抑止力の維持と基地負担の軽減を考えてやらなきゃならないのが、日米間の米軍の再編成であり、日本にとっては安全の保障のための抑止力の維持であり、沖縄の基地負担の軽減であるという全体を考えていただきたいと思います。

 市田 そうすると、やはり岩国は基地機能の強化をやらないと言っていたけれども、今度は基地機能の強化だということを事実上今お認めになりました。これは重大だと思います。基地機能の強化やらないと言いながらやると。約束違反じゃないですか。いかがですか。

 防衛庁長官 今度の米軍再編は、小泉総理がおっしゃったように、負担の軽減と抑止力の維持のバランスをどう取るかという話です。

 岩国基地につきましては、ご指摘のとおり、騒音とか、一方で周辺に工業地帯があるとか危険性もあるので一キロ沖出しをして、地域の安全を図るということの目的のために沖出しをしたわけであります。今回、厚木基地から空母艦載機を岩国に移転をした場合、一方で海上自衛隊の飛行機十七機を、これをまた厚木の方に持ってきたりいたします。

 そういうことを総合的に考えてみますと、岩国飛行場の滑走路移設事業が完了し、空母艦載機が移駐された後の騒音状況を予測した結果によれば、陸上部における、いわゆるうるささが七五以上の住宅防音装置が必要な区域は、現行の区域と比べて、そのほとんどの区域が減少します。具体的に面積的に言えば、現行の千六百ヘクタールから約三分の一の五百ヘクタールに減少します。また、この区域に所在する住宅防音工事の助成対象世帯については、現行の一万七千世帯から約四千世帯に減少すると。総合的にはそういう騒音値的なものは減少していくということになります。

 市田 今の騒音がどうなるかという調査をする上で十年前の飛行経路でやっている。そんな騒音予想図を、だれが信用できるんですか。ええかげんなことを言ったら駄目ですよ。新しい飛行経路は米軍と了解したんですか。

 防衛庁長官 いま具体的な飛行経路とかあるいは訓練の状況については日米間で協議中であります。

 大詰めの作業をしているところでありますけれども、住民の皆さん方に具体的なデータに基づいてどういうふうに説明するかを考えた場合、やっぱり既存の飛行経路あるいはまた既存の訓練、そういったことを参考にして示すのが当然だと思います。


市田 圧倒的自治体は負担増大ごめん

質問の瞬間にも騒音被害は拡大

 市田 まだ交渉中で、どこを飛ぶかも分からないんです。しかも、米軍というのは飛行経路どおり飛ばないんですよ。天候が悪かったら別のところを飛んだり、傍若無人な飛び方をしているというのは多くの日本国民が知っていますよ。そういうええかげんな、十年前の米軍と相談したそういう飛行経路で今度も計算して大丈夫だという言い分は、国民はだれも納得しない。

まちづくりには米軍はいらない

 それから、負担の軽減と言うけれども、何も岩国基地だけが負担が増大するんじゃないんですよ。直接関係している自治体だけでも、北海道、青森、茨城、神奈川、東京、石川、山口、広島、福岡、宮崎、鹿児島、沖縄。全国十二都道県、自治体数にして四十三という空前の規模です。

 そして、その周辺の自治体も含めて百三の自治体が(反対している)。例えば安保OK、基地OKだと、これまで基地の重圧に耐えてきたけれども、これ以上の基地負担の増大はごめんだと言っている。いわゆる保守的な立場の首長さんもこんなことはごめんだ、沖縄の県知事もそう言っている。座間の市長さんも相模原の市長も。座間の市長は何と言っているか、「ミサイルを撃ち込まれても断固阻止する」と。相模原の市長は何と言っているか、「戦車でひき殺されても私は反対する」と。

 沖縄では、この間の日曜日、三万五千人の人々が集まって、シュワブ沿岸部の基地建設反対で集会を開きました。あるいは鹿児島県の鹿屋には空中給油機が移駐される予定ですが、市長さん先頭に市民の一割、八千二百人の人が集まって大集会が行われた。何と言っているか。鹿屋の市長さんは、「国は地域の理解なしに進めないと言ってきたが、地元に何の説明もなく頭ごなしにやってきた」「二十年、三十年、五十年先を見て対応しなければなりません」、「町づくりに米軍は要らない」、そういうあいさつをしました。

 それから、先ほどの空母艦載機の訓練の問題でもう一言言っておきたい。あの岩国でも基地機能の強化はやらないといって約束しておきながら、世界でも最大規模の戦闘機が配備される。そして、提供水域も含めれば面積も世界最大規模のそういう基地になると。言わば、これ、市民だましのやり方だと思うんです。

 大体、空母艦載機の訓練そのものが国民だましから始まった。アメリカが十二隻の航空母艦を持っているけれども、海外に母港を置いているのは日本だけであります。一隻だけであります。横須賀です。恒常的に艦載機の訓練をやっているのも、アメリカ本国以外では日本だけであります。

 空母ミッドウェーが横須賀を母港にするとき、外務省は何と言ったか。当時の大河原アメリカ局長は参議院の決算委員会で、おおむね三年だと、しかも母港化じゃないんだ、「家族居住計画」だと。こう言ってごまかして三十二年間もいまだに居座り続けている。そのときも、艦載機の訓練はやりません、おおむね三年だと言いながら傍若無人に日本の空飛び回っているじゃないか、そんな政府の言うことを一体だれが信用するか。

責任果たすのが政治の役割では

 空母艦載機による騒音被害というのは耐えられない状態なんです。私は厚木基地周辺の住民の皆さんにお聞きしてきました。いまこうして質問している瞬間にも騒音被害に苦しめられている。

 例えば、神奈川県座間市では、今年一月、耳元で電話が鳴り続けるぐらいの七〇デシベルの騒音が何と五百七十七回であります。大声の会話ぐらいの八〇デシベル以上が二百三十三回。騒々しい工場の中、もう学校では授業にならないと、これぐらいの九〇デシベルの騒音が六十八回。自動車のクラクション、電車の通るガード下、そして耳が痛くなるような一〇〇デシベル以上が三回あった。先ほど紹介したNLPの事前訓練が行われた昨年の一月には、何とこの一〇〇デシベル以上が五十二回あった。東京・町田市の第五小学校では、二〇〇四年の一年間で九〇デシベル以上の爆音が三百三十二回あった。厚木基地の滑走路の中心から十四キロも離れた神奈川県藤沢市の辻堂小学校では、昨年の十月下旬、九〇デシベルの騒音を記録しているんです。

 こういう声も聞きました。わが家には一歳の娘がおり、通常の生活のリズムであれば午前中と午後に一時間ぐらいのお昼寝をする日課となっておりますが、寝かかったところを騒音で起こされてしまい、お昼寝はしない。食事中に飛行機が飛べば、音に驚き食べるのをやめる。洗濯物を干すのにベランダに出れば、子どもの泣き声も聞こえずに、けがをしていても気付かないでいる。危険を子どもに知らせようとしてもその声が騒音で聞こえない、と。

 しかも、先ほど言ったように、新しく配備されるスーパーホーネットの爆音というのは、これまでのホーネットと比べても出力が違うんです。35%もレベルが上なんですよ。

 厚木基地の周辺に住む人々の爆音被害というのは一刻も早く解消しなければなりません。だからといって、この人たちは騒音を岩国に持っていってくれればいい、そんなことは言っていないし望んでいない。基地被害を訴えて騒音をなくせと頑張っている住民はこう言っておられます。「痛みを知る人間として、岩国に持っていけ、それは言えない、人の道に外れる」。関係自治体の首長さんも、「移転先の住民の憤りと不安の思いを察すると手放しでは喜べない」と。

 国民のだれ一人にもこんな思いをさせない、これが総理、政治の役目じゃないんですか。米軍機による爆音被害を日本の空から全部なくしてほしい、この願いを受け止めて責任を果たすのが政治の役割ではないでしょうか。

 そのことを最後に述べて、私の質問を終わります。


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