2006年3月8日(水)「しんぶん赤旗」

市民偽り爆音拡大

岩国基地強化 市田書記局長の質問


 「基地機能強化はやらないといっておきながら、世界最大規模の基地にするのは、市民だましのやり方だ」―。日本共産党の市田忠義書記局長は七日の参院予算委員会で、日米両政府が狙う米海兵隊岩国基地(山口県)への米空母艦載機部隊の移転問題をとりあげ、その危険を三点にわたって告発しました。


130機集中

海外の基地で例なし

 市田氏が指摘したのは、「岩国基地はどういう規模の航空基地か」という問題です。

 米国防総省の「基地構成報告」(二〇〇五年版)によると、米軍が海外に展開する航空基地のなかで、面積は最大規模になっています(提供水域を含む)。

 岩国基地には現在、約五十五機の米軍機が常駐しています。

 これに加えて、在日米軍再編では、米海軍厚木基地(神奈川県)から、五十七機の空母艦載機部隊、千六百人の人員の移転が計画されています。常駐する米軍機は百機を超え、米空軍嘉手納基地(沖縄県)を上回ることになります。さらに常駐する自衛隊機を合わせると、百三十機。市田氏は「これだけの軍用機が集中する基地は、海外に展開している米軍の航空基地の中で世界にない」と強調しました。

米軍の騒音

宮島の上空 わが物顔

 市田氏は、事故の危険とともに、岩国基地周辺の住民が心配している米軍機による爆音被害をとりあげました。

図

 防衛施設庁は、夜間離着陸訓練(NLP)について「いわゆる低騒音機(E2C早期警戒機)は実施するものの、他の空母艦載機については、引き続きできる限り硫黄島で実施する」と説明しています。まるで、岩国基地では戦闘機によるNLPを実施しないかのような主張です。

 市田氏 E2C以外のNLPは絶対にやらないと断言できるか。

 北原巌男防衛施設庁長官 硫黄島で天候不良等により十分な訓練が実施できない場合には実施されることがありうる。

 市田氏は「ジェット戦闘機によるNLPをやる場合があると認めた。重大だ」と指摘しました。

事前訓練の仕掛け

 政府は、昼間の離着陸訓練も「硫黄島で行うのが原則」と説明します。

 しかし、政府のいう夜間や昼間の「離着陸訓練」とは、パイロットが空母への着艦を正しくできるかどうかについて評価する、いわば「技能検定」のことです。その「技能検定」に合格するためには、事前に徹底的に練習をする必要があります。そのために、艦載機が滑走路に着地した瞬間に、エンジンを最大限ふかして再び急上昇するタッチ・アンド・ゴーが頻繁に繰り返されます。

表

 市田氏は、NLP実施前の厚木基地周辺の騒音発生状況(一カ月間)を質問。事前訓練のため電車の通るガード下に相当する100デシベル以上の爆音が、一日当たり五十回にも達することを明らかにしました。(表)

 市田氏は「政府が沈黙して語らない、タッチ・アンド・ゴーが少なくともこれだけあるということだ。岩国では(NLPは)やらないという説明が、いかにいいかげんかはっきりした」と強調。「いくらNLPはやらないといっても、実際には事前訓練の名でものすごい騒音がまきちらされる」と批判しました。

 防衛施設庁は、爆音被害が小さいことを示そうと空母艦載機部隊が移転した場合の騒音予想図を地元に示しています。これには、世界文化遺産・厳島神社のある宮島が、騒音が及ばないかのように、すっぽり外されています。

 市田氏 今でも日本が世界に誇る世界文化遺産の上空を、米軍の戦闘攻撃機がわが物顔に飛びまわっている。絶対に騒音の被害はないと言いきれるか。

 北原長官 確たることを申し上げることは困難だ。

 市田氏は「『これからも飛び続けます』と言っているのと同じだ」と指摘しました。

10年前の飛行ルートで

 しかも、この騒音予想図における米軍機の飛行経路は、九五年当時に米側と調整したもの。昨年十月に打ち出した在日米軍再編計画では、九五年当時とは全く異なり、新たに五十七機もの空母艦載機部隊が飛びまわることになります。

 市田氏 (改めて)米側と飛行経路を相談したのか。

 額賀福志郎防衛庁長官 飛行経路については、日米間で協議中だ。

 市田氏は「十年前の飛行経路で大丈夫だといっても、国民はだれも納得しない」と批判しました。

機能強化ないというウソ

 市田氏は、九六年から始まった岩国基地の拡張工事の目的について政府が「騒音や安全性の問題を改善・除去」「基地機能強化を意図したものではない」と述べていたことをあげ、それが「世界最大級の攻撃機受け入れ可能な基地になっていた。基地強化そのものではないか」と批判しました。小泉首相は「新たにもってこられた地域では負担になりうる」と認めました。

艦載機主力のFA18戦闘機

年平均10回近くも事故

図

 市田氏は、空母艦載機の主力であるFA18戦闘攻撃機の事故の危険を指摘しました。

 防衛施設庁は、厚木基地の空母艦載機の日本国内における過去五年間の事故件数について「墜落及び着陸失敗はなし」「部品落下及び物件投棄は5件」「日本近海の領海外における墜落1件」と説明し、“FA18戦闘攻撃機は安全だ”と印象づけようとしています。

 しかし実態はどうか。

 市田氏が示したのは、米海軍ホームページの統計です。FA18戦闘攻撃機の「クラスA」(死者発生や墜落など被害額百万ドル以上の重大事故)に位置づけられる事故は、過去五年間で四十九件、年平均十件近くにも達します(表)。

 市田氏は、在日米軍関連のFA18戦闘攻撃機の事故も、報道などで確認できた限りでも、一九八九年以降の十五年間で二十三回に及ぶことをあげ、「これでどうして安全といえるのか」と批判しました。

天下り確保に「264億円」

 談合容疑で防衛施設庁幹部が逮捕されている岩国基地の拡張工事で、高級官僚の天下り先であるゼネコンを潤すために費やされた税金が「約二百六十四億円」―市田氏の追及に、北原巌男防衛施設庁長官が認めました。

 同工事の請負金額の総計(千四百十七億円)は、その予定価格の総計(千四百四十八億円)の97・8%。談合のあとは歴然としています。

 市田氏は、談合が是正されると、請負額は平均18・6%下がると公正取引委員会が指摘していることを紹介。「この基準からすると、ゼネコンをどれだけ潤したことになるのか」と質問したのに対し、北原長官が「単純計算すると、約二百六十四億円になる」と答弁しました。

 市田氏は「このお金は、結局、防衛施設庁の天下りを確保するために使われた。国の『防衛』どころか、高級官僚の退職後の生活『防衛』のために、国民の税金が使われたということだ」と批判。関係する自治体では「なんでこんな人たちと話し合わなければならないのか」という声が上がっていることを指摘し、政府の姿勢をただしました。


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