2006年3月5日(日)「しんぶん赤旗」

シリーズ米軍再編 基地強化どこまで

横田 日米合同の作戦司令部に

「首都の基地」永久化


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 在日米軍司令部が置かれる米空軍横田基地(東京・福生市など五市一町)―。日米両政府の在日米軍再編計画(「中間報告」)は、(1)米軍と自衛隊の「共同統合作戦調整センター(運用調整所)」の設置(2)航空自衛隊の航空総隊司令部(同・府中市)の移転―を打ち出しました。これらを許せば、横田基地は日米合同の戦闘作戦司令部になり、周辺自治体が求める基地返還はますます遠のくことになります。(竹下岳)

統合戦闘能力を強化

 「日米共同の統合戦闘能力を高めることが重要だ」。在日米軍のライト司令官は一月、都内の講演で「共同統合作戦調整センター」の役割をこう強調しました。

 「統合」とは、一人の司令官の指揮の下で全軍が一体となって作戦を行うことです。米軍は陸海空軍・海兵隊四軍の統合運用を基本にしています。自衛隊も「米軍との共同作戦を円滑に進める」(「防衛白書」二〇〇五年版)ため、これまで別々の指揮系統だった陸海空三自衛隊の統合運用を三月からスタートしようとしています。

 「作戦調整センター」は、統合運用体制に移行する自衛隊が、米軍と一体になって共同作戦を実施するための合同司令部になります。

 米軍と自衛隊はここ数年、海外での本格的な共同作戦もにらんで、イラクやインド洋での軍事協力、共同演習の拡大、情報の共有などを通して一体化を急速に深めてきました。「作戦調整センター」が設置されれば、米軍と自衛隊の頭脳とも言える司令部の機能まで一体化し、両軍の“融合”を一段と進めることになります。

 ライト司令官は「作戦調整センター」を「五年以内に立ち上げたい」との考えを示しています。一方、日本政府は、同センターが具体的にどのような組織になるのかや人員・施設の規模、設置時期などについては「今後、検討する」として明らかにしていません。

ミサイル防衛の中枢

 航空総隊司令部とその関連部隊(注)の移転も重大です。

 同司令部は空自の戦闘部隊の指揮に加え、「ミサイル防衛」における自衛隊の統合司令部の役割も果たします。

 「中間報告」は、航空総隊司令部を横田基地の米第五空軍司令部と「併置」し、「共同統合作戦調整センターを通じて(ミサイル防衛に)関連するセンサー(探知)情報が共有される」としています。

 ライト司令官は「三百六十五日、(日米の)制服組が隣同士で訓練することが大事だ」とし、両司令部の一体化を強調しています。

 しかし「共有」といっても「ミサイル防衛」での情報収集や通信・指揮で決定的に重要な役割を果たす軍事衛星などは、米軍が保有しています。自衛隊がイージス艦などを使って収集する情報は、米軍のシステムを補完するだけです。

 「ミサイル防衛」の対処時間はわずか数分で、迎撃ミサイルを発射するまでの手順は限りなく自動化されることになります。

 自衛隊は日本の防衛に無関係な弾道ミサイルの迎撃にも組み込まれ、憲法違反の集団的自衛権の行使に道を開くことになります。

 (注)関連部隊は、航空作戦のための情報収集などを任務にする防空指揮群と作戦情報隊。航空総隊司令部と合わせ人員は六百人に上ります。

矛盾生む軍民共用化

 「中間報告」は、横田基地の軍民共用化(民間航空機の乗り入れ)についても「検討」するとしています。この問題をめぐり周辺自治体の態度に違いも生まれています。

 瑞穂町の石塚幸右衛門町長は「爆音被害を拡大する軍民共用化を阻止」するためとして、航空総隊司令部の移転を容認(二月十一日)。一方、武蔵村山市の荒井三男市長は、逆に軍民共用化推進を表明しました(二月十四日)。

 米側は、在日米軍の中枢である横田基地を一部であっても民間に開放することには否定的です。

 米シンクタンクのハドソン研究所は〇四年六月、「軍民共用化より軍軍共用化を推進すべきだ」との報告書を発表しています。石塚町長は町議会でこの報告を引用し、態度表明の根拠としました。

 しかし軍民共用化を食い止めたとしても、爆音の元凶である横田基地はそのまま存続し、米軍と自衛隊の司令部の一体化で、その戦略的な位置付けはさらに高まることになります。

 横田基地周辺の自治体は今年二月、政府や在日米軍に対し、人口密集地に位置する同基地の「整理・縮小・返還」を求めています。

 今回の再編計画はこうした要求に反し、横田基地を恒久化することになります。


横田基地をめぐる再編計画

 ▽米軍・自衛隊の「共同統合作戦調整センター」を設置

 ▽航空自衛隊の航空総隊司令部を移転

 ▽軍民共用化を検討


横田基地とは

 在日米軍司令部や第五空軍司令部が置かれる在日米軍の中枢です。3350メートルの滑走路を有し、米軍のアジア太平洋地域の空輸拠点にもなっています。基地所属機は21機にすぎませんが、米本土などからC5やC17といった大型輸送機が頻繁に飛来し、周辺に深刻な爆音被害をもたらしています。


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