2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」

日航、リストラ続行

安全運航への不安消えず


解説

 日本航空が発表した「中期経営計画」は、最大の課題である安全運航に関して何が障害となっているかの分析がなく、昨年十一月に発表した「JALグループ再生ビジョン〜お客様に選ばれ続けるエアライングループを目指して〜」を事実上、踏襲するだけの内容となっています。

 「計画」は当初、二月中旬に発表し、四月から経営方針の柱となるものでした。しかし、経営陣の“内紛”の影響でトラブル続出の根本問題を時間をかけて論議していないため、「信頼回復に向けてグループ総力の結集を」というようなスローガン的イメージが中心の内容となっています。

 既定方針通り、人員を削減し、安全の要である整備部門の海外委託と下請け化を推進するなどコスト削減、リストラ路線の継続で経営の再建を図ろうとする政策の転換にはなっていません。

 日航がトラブルやミス続出を招き、安全運航に支障をきたす事態に至った原因は、一九九三年以降、政府主導による規制緩和策のもと、コスト削減とリストラを柱に、利益を生み出そうとしてきたからです。利益を生まない整備部門の人員を減らし、整備の下請け化、海外委託化を進めてきました。整備の現場では、ベテラン整備士を関係のない職場に異動させたり、人手不足と下請け化によって整備技術を継承することさえできなくなっています。

 シンガポールの整備会社に委託した航空機が、まともに整備されていないことも明らかになりました。海外に安く発注することが、結果的に安全性を低下させています。

 労働組合との関係についても、安全運航をめぐって日航乗員組合が地裁、高裁と勝利して和解に持ち込んでも、会社側は判決に従って対応することを拒んでいます。客室乗務員に対しても、差別と分裂策を持ちこみ、職場環境を破壊しています。こうした労務政策が人為ミスが出やすい職場を生み、安全運航に支障をきたしています。

 経営陣の交代が決まっても、安全運航に支障をきたしている諸政策を見直そうとしていないため、運航乗員や客室乗務員、整備の現場では、失望の声が広がっています。(米田 憲司)


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