2006年2月24日(金)「しんぶん赤旗」

シリーズ米軍再編 基地強化どこまで

青森・車力(しゃりき)

Xバンド・レーダー(弾道ミサイルを探知)配備狙う

ミサイル防衛の最前線に


 昨年10月末の在日米軍再編に関する日米合意(「中間報告」)は、「ミサイル防衛」で「新たな米軍のXバンド・レーダー・システムの日本における最適な展開地が検討される」としています。これを受け日米両政府は、航空自衛隊車力基地(青森県つがる市)を「有力候補地」に決め、米軍の「ミサイル防衛」のための最前線基地にしようとしています。


□ 目的は米国防衛

地図

 米国防総省の機関であるミサイル防衛庁の二〇〇七会計年度()の予算資料は「最初の前方展開移動型Xバンド・レーダー(FBX―T)を〇六年に日本に配備する」と明記。海外初となる日本への配備を今年行うことを明らかにしています。

 「中間報告」は、こうした計画について「日本に向かうミサイルを迎撃する能力、及び、日本の国民保護や被害対処のための能力を支援する」とし、“日本防衛のため”と説明しています。

 しかし、米ミサイル防衛庁のブックレットは「多目的の前方展開移動型Xバンド・レーダーは大陸間弾道ミサイルと中距離(ミサイル)の脅威から米国を防衛するという国家目標にかなうように開発され、配備される」と明記し、“米国を防衛するための配備”であることを強調しています。

 () 〇七会計年度は、〇六年十月―〇七年九月。

□ 軍事緊張を激化

 もともとブッシュ米政権が進める「ミサイル防衛」計画は敵の弾道ミサイル攻撃に対して「防衛の盾」をつくり、反撃の心配なく核兵器の使用を含む先制攻撃ができるようにするのが目的です。

 しかも、Xバンド・レーダーは弾道ミサイルを探知するため他国の領域内にも電波を放射するため、配備自体がアジア近隣諸国に軍事的脅威を与えるもので、地域の緊張をいっそう高めることにつながります。

 車力基地が狙われているのは、敵の攻撃からXバンド・レーダーを防衛するのに必要な空自の地対空ミサイル部隊(高射隊)が配備されているからとの指摘もあります。

□ 電波障害の危険

 防衛庁の説明によると、Xバンド・レーダーが発する電波は熱を発し、立ち入り制限区域が必要になるとする一方、テレビやラジオなどへの電波障害はないとしています。しかし、米ミサイル防衛庁のXバンド・レーダーに関する説明資料では「家庭のテレビ、ラジオへの影響」について「可能性はある」と認めています。

 また、米本土に配備されたXバンド・レーダーについては、すでに詳細な「環境アセスメント調査」が公表されています。しかし、米軍は昨年十二月、車力基地周辺の「電波環境調査」を実施しましたが、結果は公表していません。

□ 70年代には撤去

 青森県は今月、「Xバンド・レーダーに関する専門的な知見を得たい」とし、三人の「専門家」による検討会を設置しました。うち二人は防衛庁と自衛隊の幹部OBで、もう一人は「ミサイル防衛」計画で中心的な役割を果たしている軍事企業・三菱重工の幹部です。

 地元では、いずれの委員もミサイル防衛に関し「中立とは言い難い」(東奥日報、九日付)との批判が上がっています。これに対し県は「賛否を聞くのが目的ではない」と説明しています。

 米軍はかつて、弾道ミサイル探知という点でXバンド・レーダーと同じ機能を持つレーダー(OTHレーダー)を日本にいったん配備しながら撤去したことがあります。

 このレーダーが一九六〇年代に配備された埼玉県所沢市では、核戦争のための弾道ミサイル探知レーダーだとして市をあげて反対運動に取り組み、七五年に撤去が実現しました。世論と運動を大きく広げれば配備を食い止められることを示すものです。


前方展開移動型Xバンド・レーダーとは

 Xバンド・レーダーは、「X」と呼ばれる周波数帯の電波を放射し、敵の弾道ミサイルを発射段階から探知できるレーダーのことです。車力基地に配備されようとしているのは「前方展開移動型Xバンド・レーダー」(FBX―T)です。

 ユニット構成で、車両や航空機、艦船による移動が可能です。既存レーダーのようにアンテナが三百六十度回転せず、特定の方向に向けて電波を放射するのが特徴です。

 主要ユニットは(1)レーダー本体にあたる「アンテナ・ユニット」(全長十二・八メートル、高さ二・六メートル、重量三十四トン)(2)データ処理などを行う「エレクトロニクス・ユニット」(3)機器を冷却する「クーリング・ユニット」―。これらの総重量は八十九トンに上ります。このほか、「電源ユニット」や、レーダーの操作要員が常駐するユニット、部品の倉庫や燃料タンクなどの施設も必要になるとしています。


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