2006年2月22日(水)「しんぶん赤旗」
天下りで業界支配
元幹部2人が連絡役
OB受け入れ企業を優先
施設庁談合
「ほとんどの工事はOBがいる会社に取らせる。OBに飯を食わせないといけないし、もったいなくてよその会社には仕事を出せなかった」―。官製談合事件の舞台となった防衛施設庁建設部の元幹部の言葉です。建設部は、同庁の工事の発注権限を握る技官の集団で、出先機関を含めて約八百人が所属。退職した職員を受け入れた企業に優先的に工事を配分するなど、天下りで業界を支配してきました。
このうち、中堅ゼネコンに天下った元同庁建設部長と元東京施設局長の二人が、同庁と受注予定企業のOBとの仲介・窓口役だったことが関係者の話でわかりました。
元幹部二人による仲介は一九九五年ごろから始まりましたが、官製談合防止法が成立した二〇○二年以降は「窓口役」をOBではない大手ゼネコン幹部に変更しました。同庁側が官製談合の発覚を恐れ、連絡方法を変更したとみられます。
関係者によると、同庁は長年、同庁ナンバー3で技術系トップの技術審議官や建設部長らがOBの天下り企業に優先的に工事を割り当てる受注調整を行っていました。当初は直接、各社OBに調整結果を伝えましたが、九五年ごろを境に、東京都内の中堅ゼネコンに天下った元防衛施設庁建設部長(九三年退職)と岐阜市内の中堅ゼネコンに天下った元東京防衛施設局長(九五年退職)の二人を仲介させるようになりました。元建設部長が建築、元東京局長が土木で仲介役を務めました。
二人はほぼ毎月、防衛施設庁を訪問。近く入札がある工事について受注予定社を書き込んだ一覧表を渡されました。この表をもとに、受注予定企業のOBに「本命」であることを連絡したといいます。連絡を受けた会社は、工事を発注する地方の各防衛施設局の担当課長らに接触。入札予定価格などの入札情報を入手していました。
落札企業に天下り18人
本紙の調べによると、今回、生沢守容疑者らの再逮捕容疑となった工事を落札したゼネコン各社に防衛施設庁OBの組織「施友会」メンバーが計十八人、天下りしています。
内訳は五洋建設四人、東亜建設工業、鉄建建設、りんかい日産建設、西武建設、株木建設、東洋建設、大本組が各二人。
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解説
二重三重の税金ムダ遣い
防衛施設庁発注の空調工事から始まった官製談合事件が、米軍岩国基地と佐世保基地の土木建築工事をめぐる新たな談合事件に発展しました。
今回摘発された官製談合は、岩国基地の「中央地区地盤改良工事」などです。しかし、二〇〇一年度から〇四年度までに発注された七百六十七億円に上る同基地関連工事の平均落札率は97・2%で、工事全般で談合が行われていたと見るべきでしょう。
佐世保基地の同期間の発注工事額は百九十億円で、平均落札率は97・3%です。
公正取引委員会が試算したところ、談合による不当利得率は平均で18・6%にもなりました。
両基地の四年間の合計工事額九百五十七億円の18・6%といえば、約百八十億円にもなります。
一方、防衛施設庁の幹部らは、ゼネコンなどに工事を割り振るさい、天下りしたOBの人数や年収総額に応じて受注額を決め、天下りを多く受け入れた企業ほど、大きな工事を受注できるようにしていました。
そこには、ゼネコンは基地の工事でボロもうけした金で、防衛施設庁の天下り官僚を顧問として受け入れ、同庁は国民の税金で自分たちの老後を守るという官・業の醜い癒着構造があります。
岩国基地の滑走路移設工事は、総事業費二千四百億円で、全額を「思いやり予算」から支出するものです。
「思いやり予算」は、もともと日本が負担する義務のないもので、二重三重の税金のムダ遣いです。騒音被害に加えて、重税という形でそのツケを押しつけられるのは国民です。(橋本伸)