2006年2月22日(水)「しんぶん赤旗」
米軍移転費用負担は「国益」と発言
麻生氏はどこの外相?
麻生太郎外相は、二十日の衆院予算委員会で、沖縄の米海兵隊約七千人のグアム移転費用を日本が負担することを「日本の国益につながる」と、当然視しました。
負担軽減は欺瞞
麻生外相は「七千人減るというのは極めて大きな数字だ」とし“沖縄の負担軽減”になると強調しますが、沖縄県民にとって、移転計画は「負担軽減」といえるものではありません。
移転対象とされているのは、米海兵隊の司令部要員や後方支援部門が中心です。しかし、実際に県民の重圧になっている部隊は、臨戦態勢維持のために横暴な訓練を繰り返す実戦部隊です。沖縄の実戦部隊は、いまも数々の被害と苦痛を与えています。
▽米海兵隊普天間基地のヘリが市街地にある沖縄国際大学に墜落(二〇〇四年八月)▽金武町では住宅地と隣り合わせにあるキャンプ・ハンセン内で都市型戦闘訓練―。
だから日米両政府が移転方針を打ち出した際、地元紙は社説で「歩兵や砲兵など実戦部隊が残るのであれば基地の『危険性』はそのまま残る。数さえ減れば負担軽減になるという考えは欺瞞(ぎまん)と言うしかない」(沖縄タイムス、昨年十月三十日付)と批判。基地を抱える自治体の首長からは「将校がいなくなり前線兵士だけが残れば、沖縄はサファリパーク状態だ」(辺土名朝一北谷町長=当時)という声まであがったのです。
そのうえ、日米両政府は名護市沖には海兵隊の航空部隊のために最新鋭基地の建設まで狙っています。「負担軽減」どころか負担強化です。
先制攻撃の拠点
麻生外相は、「アジア太平洋地域には不安定な要素がある。グアム基地の強化は、結果として日本全体の安全保障上、役に立つ」ともいいます。
しかも重大なのは、グアム移転の狙いは「太平洋における兵力構成の強化」(昨年十月の日米共同文書)のためです。
ブッシュ米政権が推進する地球規模での米軍再編は、先制攻撃の戦争をたたかうため、米軍を世界のどこにでも迅速に展開できる、より機動的な軍隊につくりかえ、再配備するのが目的です。
ファーゴ米太平洋軍司令官(当時)は「グアムが持つ戦略地政学上の重要性は、強調してもしすぎることはない」とのべ、グアムの軍港改修や航空基地の施設建設計画があることを証言しています(〇四年三月の米下院軍事委員会)。
今回の移転計画は、こうした米戦略上の拠点にあるグアムを、先制攻撃戦争のための一大根拠地として強化しようというものです。「日本全体の安全保障上、役に立つ」どころか、世界と日本の平和にとって危険極まりありません。
移転費用は総額で約七十六億ドル(約八千百三十二億円)で、米側は「半分ないし四分の三程度の負担」を希望していると報じられています。「『負担軽減』に名を借りた、米国のための米軍再編・強化への財政補完そのもの」(日本共産党の笠井亮衆院議員)です。
これを「国益」といって当然視する。麻生外相は、いったいどこの「国」の外相なのでしょうか。(田中一郎)