2006年2月21日(火)「しんぶん赤旗」

米国の対外軍事援助

インドネシア向け急増

対テロ戦略で大転換


 米国によるインドネシアへの軍事援助が二〇〇七年度予算教書でめだっています。インドネシア軍兵士の教育訓練、武器援助の双方で増額されています。米国は、インドネシア軍による東ティモールでの人権侵害を理由に九〇年代に軍事交流を全面的に停止した経緯がありますが、今回の措置は大転換ともいえるもの。米国防総省が三日に発表した二〇〇六年度版「四年ごとの国防計画見直し」(QDR)で、「テロリスト・ネットワーク」を打ち破ることや、太平洋地域を重視することを打ち出した内容に沿ったものです。(西村央)


 今月初めに公表された米予算教書の国務省予算によると、インドネシアへの二〇〇七年度の対外軍事資金供与(FMF)は〇六年度の九十九万ドル(一億一千万円)から、六百五十万ドル(七億六千万円)へと六倍化しています。〇五年度はゼロですから、米国が今、いかにインドネシアに力を入れているかは明りょうです。

教育・訓練も

 さらに、各国兵士を米国内の軍関係の大学で教育・訓練する国際軍事教育・訓練計画(IMET)では〇五年から〇七年にかけて、七十二万ドル、七十九万ドル、百二十八万ドルへと増加傾向を示しています。〇七年度で百三十余カ国を対象としている対外干渉予算であるIMET全体は、同じ期間でほぼ横ばいであるのと比べ、インドネシアの突出ぶりが目立ちます。

 インドネシア重視の理由について、ラムズフェルド米国防長官は今月六日の会見で、米国がテロ対策での協調を重視する相手国の一つにインドネシアがあるとしています。過去、人権侵害を理由に対インドネシアであらゆる軍対軍の関係を絶った経過があることをあげる一方で、「今は、穏健なリーダーが存在しており、軍事交流は積極的意味がある」と軍事援助再開の理由を述べています。

 こうした方向は、すでに昨年十一月に打ち出されていました。

 同月二十二日、国務省のマコーマック報道官は、インドネシアへの軍事援助の再開を表明。〇六年二月にIMETを、五月に対外有償軍事援助(FMS)を開始することを表明しました。同報道官は、インドネシアの戦略的役割として、イスラム国家のなかで世界最大の人口を抱えていること、東南アジアでの戦略的シーレーンで安全を保障する決定的役割を担っていること、東南アジア諸国連合(ASEAN)内で主導的メンバーであることの三点をあげました。

米企業に限定

 同報道官はさらに、FMF予算については、インドネシア軍の近代化、軍改革を奨励し、対テロを含む米・インドネシアの安全上の目的に沿ったものとすると述べていました。

 FMF予算は、資金供与を受けた国が軍事物資や装備の購入にあてられますが、購入の際の契約先は米国で法人化し、ライセンスを取得した米企業に限定されています。供与された資金が米国の軍事産業に還流する仕組みです。ちなみにこの資金供与でもっとも多額なのはイスラエルで二十三億ドルと巨額です。

 こうした軍事援助は、「テロとのたたかい」でのパートナーシップをうたいながら、相手国を取り込んでいく米国戦略実施の一端を浮き彫りにしています。


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