2006年2月19日(日)「しんぶん赤旗」

耐震偽装でシンポ

国の「支援」策では自己破産する人も


 「耐震強度偽装問題と被害救済」と題したシンポジウムが十八日、東京・渋谷区内で開かれました。欠陥住宅全国ネットと、同関東ネットの主催です。ヒューザーが販売し、偽装の被害を受けたマンション十五棟の住民・百三十一人が参加しました。国土交通省が偽装事件を発表してから三カ月、住民からは「国の支援策では、自己破産する人が出てしまう」との発言もあり、国に賠償を求める声が次々と出されました。

 必要な強度の15%しかないと発表されている「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)の住民だった男性は、国の支援策にもとづく藤沢市の建て替え案について報告しました。「床面積を80%に縮小し、その上で現在の住宅ローンに加え、二千万円以上の追加負担を求められている」といいます。全財産を処分して同マンションを購入した年金暮らしの高齢者の例などを示し、「提示されている(市の)案は、とうてい受け入れられない」とのべました。

 「グランドステージ稲城」(東京都稲城市)の住民だった男性は、先の見えない生活の中での「住民の悩み」について発言。「マンションを退去して生活が変化した。生活再建に向けた活動と仕事の両立も難しい。精神的、肉体的な負担にマンション住民は耐えている」と訴えました。

弁護士など発言

 弁護士など専門家がそれぞれ発言。中央大学大学院教授の本田純一氏は、住宅ローンの債権放棄を銀行に求めることについて、「ヒューザーに出資している銀行が住宅ローンを貸している場合、鑑定を怠った義務違反を問える可能性がある」と指摘。提携していない銀行についても「一般論としては難しいが、行政が規制緩和を進める中で、市民を守るためには新しく認められなければならない部分がでてくる」とし、「住民が被害を受けている一方で銀行だけがもうけるのはおかしい」とのべました。

 構造設計について説明した藤島茂夫一級建築士は、偽装されていたホテル、マンションを例として示し、「単純に地震力を低減して計算したものだ」と指摘。「偽装されていたことは専門家が見れば分からないわけがない。検査機関はマニュアルの該当項目だけ見て、図面を見ていなかったのではないか」と述べました。

住宅行政を左右

 日本弁護士連合会行政訴訟センター委員の松沢陽明弁護士は、民間検査機関の建築確認事務における偽装見逃しは「公権力の行使であって、公によって補償されるべき」と指摘。「地方自治体は建築確認事務の帰属先として、また国は公務員でないものに公権力の行使をさせた任命権者として、それぞれ賠償責任がある。国は賠償を前提に対応するのが当たり前で、『支援』という立場はごまかしともいえるのではないだろうか」と述べました。

 欠陥住宅全国ネット幹事長の吉岡和弘弁護士は、「この問題の解決が今後の住宅行政を左右することになる」とし、「住民のみなさんがその先頭に立っている」とあいさつしました。

 参加した住民も会場から発言。「国の責任は免れない。支援ではなく賠償でなければ解決しない。このままでは自己破産する人も出る。訴訟も考えている」「住宅ローンが負担になっている。銀行の債権放棄を求めて広く世論に訴えていきたい」などと語りました。


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