2006年2月17日(金)「しんぶん赤旗」

韓国 貧富の格差是正へ

政府 “最大の国政課題”

新自由主義からの転換示唆


 韓国政府は今年、貧富の格差に象徴される「二極化」の解消を最大の国政課題に据えました。大統領側近は「このままでは二つの韓国に分かれてしまう」と危機感をあらわにしています。盧武鉉大統領は新年演説で、雇用の創出、福祉の拡大で解決を図ると強調しました。(面川誠)


 韓国統計庁が七日に発表した二〇〇五年の資料によると、所得水準を五段階に分けた場合、最上位二割と最下位二割の月平均所得の格差は、都市労働者で五・四三倍、全国では七・五六倍に達しました。

 都市労働者の所得格差は、一九九七年末に外貨不足から経済危機に陥ったのを契機に四・四倍(九七年)から四・九六倍に悪化。二〇〇三年に五・二二倍、〇四年に五・四一倍に拡大しています。

■IMF融資が

 大統領官邸に設置された両極化解消の「特別企画チーム」は十四日、大統領ホームページに「奇跡と絶望、二つの大韓民国」と題する文章を掲載。国際通貨基金(IMF)からの緊急融資を受けることになった一九九七年の経済危機が二極化を誘発したと指摘しました。

 IMFは極端な緊縮財政、国内産業の「構造調整」、「市場開放」という新自由主義政策を融資の条件に課しました。多くの労働者が失業し、国内外の投資家による投機が急増し、貧富の格差を急激に拡大しました。

 「特別企画チーム」は「韓国資本主義はIMF事態を契機に、抱えていた経済・社会的矛盾を一挙に吐き出してしまった。韓国社会が『二〇対八〇(富裕な二割とその他の八割)』という『二つの大韓民国』に分かれてしまった」と振り返っています。

■雇用安定策を

 李炳浣・大統領秘書室長は十五日の講演で、「このままいけば、朝鮮半島は三つのコリア、つまり貧富の格差による二つの大韓民国と北朝鮮に分かれるかもしれない」と危機感を訴えています。

 盧大統領は一月十八日の新年演説で、両極化の解決方法として、(1)雇用の創出(2)正社員とパートタイマーなど非正規職の賃金格差縮小(3)福祉などセーフティーネットの拡充―を推進すると言明、新自由主義政策からの転換を示唆しました。

 雇用創出では、公共サービス事業にかかわる公務員の増員に言及、「『小さな政府』ばかりを主張するのではなく、この分野で安定した雇用を作り出し国民向けのサービスの質と生活の質をともに高めるべきだ」と強調しています。

 セーフティーネットの拡充については、一九九七年に比べ社会保障費は三倍以上増えたものの、まだ不十分だと指摘。「韓国の国家予算規模は国内総生産(GDP)比で27・3%にすぎない。日本の37%、英国の44%、スウェーデンの57%に比べあまりに低い。福祉予算の比率はさらに低い。先進国は予算の半分以上だが、韓国は四分の一にすぎない」と述べ、国の役割を強める考えを示しました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp