2006年2月16日(木)「しんぶん赤旗」
主張
岩国市の住民投票
国の圧力許さない意思示そう
アメリカのローレス国防副次官は、額賀防衛庁長官に、「地元調整のことはよく聞くが、日本にとって何が重要かをしっかり考えるべきだ」とのべました(十日)。米軍再編にかんする「中間報告」(昨年十月)が関係自治体の猛反発で進展しないため、“生ぬるい”とばかりに日本を詰問したのです。地方の声をふみつけにするような日米両政府の態度を放置するわけにはいきません。
こうしたなかで、山口県岩国市は、米空母艦載機部隊の岩国基地移駐を「容認できない」として、賛否を問う住民投票を行います(三月十二日)。「中間報告」発表後初のとりくみであり、全国的にも重要です。
■地方自治守らねば
小泉首相は、米軍再編について「地元の自治体と事前に協議し了承をもらったら米側と交渉する」(二〇〇四年十月)といっていました。しかし、事前の相談どころか、いまだに詳細な情報も提供せず、日米合意を一方的に押し付けようとしています。「理解を得たい」「誠心誠意説明する」は口先だけで、やることといえば自治体の意思をかえりみない理不尽なことばかりです。防衛施設庁地元調整実施本部が地方防衛施設局に、地方議会の基地再編反対決議を阻止するよう電子メールで指示していたのは、その端的な事例です。
米軍再編の地方への押し付けは、憲法の地方自治の原則に明確に反するものです。米軍再編は、米軍機の騒音や墜落、米軍犯罪を伴います。自治体が住民の平穏な生活と安全を脅かす米軍再編に反対するのは当然です。米軍再編の押し付けをやめよという地方の正当な声で、政府を包囲する必要があります。
岩国市の住民投票は、地方自治を守るうえで全国的な意義をもち、米軍再編に反対する自治体の願いを反映する大事なとりくみです。
岩国基地再編で、岩国基地には厚木基地から米空母艦載機五十八機が移駐し、戦闘機だけでも九十機をこえる巨大な航空基地に変わります。
昼夜を問わない米軍機騒音は岩国市民を苦しめるだけでなく、山口、広島両県の広域に騒音被害をもたらします。世界文化遺産である厳島神社(広島県)も例外ではありません。低空飛行訓練も激増します。米兵が増えるため、市民への凶悪な米軍犯罪の増加も心配です。
地方の被害に目を向けないで、一方的に米軍再編を押し付けることはきわめて不当です。政府が、地方への新たな負担となる米軍再編を、「負担軽減」というまやかしで進めるなど絶対に許されません。
在日米軍の再編は、日本をアメリカの先制攻撃戦争の足場にするものです。岩国基地に厚木基地の海軍航空部隊を移駐させ、岩国基地の海兵隊航空部隊と統合して、“殴りこみ”機能をいっそうつよめるのもそのためです。再編によって生まれ変わる米軍と自衛隊の基地は、アメリカの戦争政策の中心的役割を担います。日本をアジアと世界の平和を脅かす震源地にさせてはなりません。
■憲法九条を生かそう
いま、アジアと世界では、戦争で紛争を解決するやり方に反対し、平和的解決を求める声が大勢となっています。国連憲章よりも戦争禁止を徹底した憲法九条をもつ日本国民として、この平和の世界的とりくみに合流し、加速する積極的役割を果たすことが求められています。
岩国市での住民投票を成功させるなど米軍再編反対のとりくみは、住民生活の平穏と安全を守るとともに、世界の平和に通じています。