2006年2月14日(火)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

市田書記局長の発言

(大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は十二日、NHK「日曜討論」に出演し、ライブドア事件や防衛施設庁の談合事件、米国産牛肉の輸入再停止問題などについて各党代表と討論しました。他党からは、自民党・武部勤幹事長、民主党・鳩山由紀夫幹事長、公明党・冬柴鉄三幹事長、社民党・重野安正国対委員長が出席。司会は山本孝・NHK解説委員。


■皇室典範改定 じっくり検討を

 冒頭、女性・女系天皇を容認する皇室典範改定について各党が考え方をのべました。市田氏は次のように発言しました。

 市田 今度の国会の施政方針演説で小泉首相が今国会で(改定法案の)成立を期すと、言われたわけですけれども、私たちはもともと、落ち着いてじっくり検討するべき性格の問題で、急ぐべきではないというのが基本的なスタンスです。

 もし皇室典範改定ということになれば、皇位について、男女の区別を設ける合理的根拠はないということ、それから、皇室に対する国民の負担、国庫支出を新たに広げることはすべきではない。こういう二つの中心点を視野に置きながら、総合的にじっくり検討すべきだと思います。

■小泉「改革」は影ばかり

 ライブドア事件などこれまでの国会審議を振り返って鳩山氏は同事件を「小泉改革の影の象徴」としつつ、「規制緩和は必要だ」と発言。市田氏は日本共産党の論戦を踏まえ、次のように指摘しました。

 市田 小泉「改革」の「光と影」ということがいわれていますが、私は影ばかりだと思います。耐震偽装問題、ライブドア問題、それから社会的な格差の広がりと貧困の増大、こういうことをもたらした土台には小泉「構造改革」、規制緩和万能路線があったと思うんです。

 国会論戦で驚いたのは、小泉首相は最初は「格差が広がっていない」と言い、その次は「格差があってどこが悪いのか」と開き直りました。私は、一国の総理が「格差があってどこが悪いんだ」と言うのは、政治家として失格と言われても仕方がない、重大な発言だと思います。

 たとえば、二〇〇一年に三千六百万人だった正規労働者が、〇五年では三千三百万人へと三百万人減り、新たにパート・派遣の人が二百万人以上増えたのです。与党は国会での議論で、去年の二カ月分だけとって「やや非正規労働者が減っている」と言いましたが、全体としてこの間、正規労働者の給料の半分ぐらいの非正規労働者が増えて格差が非常に広がっているのは客観的事実だと思うんです。そこにやはり目を向ける必要があると思います。

■官僚の天下りと企業献金禁止を

 防衛施設庁の官製談合事件が生じる根っこにあるのは何か、どう防止するのか。「公務員改革を徹底的にやらなければいけない」(武部氏)、「防衛施設庁は特殊なもの」(冬柴氏)などの主張を受け、市田氏は次のように指摘しました。

 市田 小泉内閣になってから起こった談合は、今度の問題だけではなくて、成田空港の電気設備工事をめぐる談合、旧日本道路公団の橋梁(きょうりょう)談合、それから阪神高速道路の遮音壁をめぐる談合もありました。

 私は二つ大きな問題があると思います。

 現行法では、高級官僚が民間企業に天下りするのは退職後二年間だけ禁止することになっている。ところが今度の防衛施設庁の官製談合はどういう形で行われたのかというと、「防衛施設技術協会」というのをつくって、二年間そこにいて、そこから関連の民間企業に天下った。私はこれは耐震偽装ならぬ「天下り禁止偽装」だと思う。こういうことをやめて、やはり国の行政機関と密接な関係のある民間企業や、特殊法人や認可法人、外郭団体、こういうところには期限を定めずに、天下りを全面的に禁止する。

 そして、企業・団体献金を禁止する(のが二つ目)。そうしないとやはり再発は防止できないと思います。

■基地押しつけをやめ全容解明を

 また市田氏は、同事件に関して防衛施設庁を解体すればいいという考え方が出ていることに反論しました。

 市田 防衛施設庁を解体しても今度の問題は解決しない。むしろ問題の本質をごまかす言い分だと思うんです。

 事件の真相、全容を究明するということが一つです。それから先ほども言ったような、天下りを明確に禁止するということをやらなかったら、防衛施設庁を防衛庁に合体したからといって問題の解決にはならない。

 しかも防衛施設庁がやっていることは、空調設備だけではないのです。米軍再編に基づく米軍基地の押しつけに反対する自治体の決議があがらないように、(圧力の)メールまで送りつけて押さえつけている。税金の盗み取りをやりながら、米軍再編による基地の押しつけをやっているわけです。そういうことを含めて、問題の全容を国会の中でも明らかにすることが再びこういうことを起こさない道です。

 ところが、天下りをきちんと明確に禁止するということについて武部さんは何も言わない。逃げのままだ。

 冬柴、武部両氏は、公務員の早期退職や公務員が民間に移ることをあげ、天下りが絶対ダメだとは言えないと主張。鳩山氏は天下り禁止期間を二年から五年に延ばすことで十分だとしました。市田氏は次のように主張しました。

 市田 共産党は民間企業一般に公務員が再就職することがだめだとは言っていません。国の行政機関と密接な関係にある営利企業、特殊法人、外郭団体などへの天下りは退職後二年の禁止期間を五年にしただけではだめで、期限を定めずに全面禁止してこそ、再発防止する最も確かな道だと言っているのです。関係のない民間企業に再就職するのはいいと思うんです。関係のあるところへの天下りは、「職業選択の自由」ということで野放しにするのはやはりよくないという立場です。

■米国産牛肉も全頭検査を

 米国産牛肉の輸入再開の条件をどう考えるのかについて、日本の国内並みの検査を実施することをアメリカに求めるのかと問われて市田氏は次のようにのべました。

 市田 今度の輸入再開にあたって、月齢二十カ月未満ということと、危険部位の除去、この二つの条件が満たされればという話だったのですが、もともとアメリカにそういう体制がないのです。アメリカには牛の出生の履歴がなく、目視で二十カ月以下かどうか判断するという体制です。アメリカの検査官自身がそういうことを調べる体制がないと言っていたことを知っていて、しかも事前に日本の調査団が査察に行かなかった。輸入再開を決めてから日本の調査団が行って、「適切だ」と言った後にああいうこと(背骨付き牛肉が輸入されようとしていたこと)がはっきりしたわけです。

 しかも今度は、「へたり牛」二十頭が食肉加工されていたという事実も明らかにされたわけです。

 食肉処理施設で、食肉処理前に牛が歩行可能かどうかをちゃんと目視検査するということになっている。国際基準でいけば全部の牛を検査する必要があるのに、5%から10%の抜き取り検査だけだったということも明らかになった。

 これについてアメリカの農務長官は「BSEに感染した牛か、水にぬれた床で滑った牛か見分けようがない」と、こういう本当にけしからんことを言っています。前の(農務次官が)「交通事故の確率に比べれば少ない」と言ったのと同じで、日本はなめられている。もっと毅然(きぜん)と、日本と同じ基準でやらない限り輸入再開はだめだとはっきり言う。全頭検査をきちんとやるという体制が必要だと思います。

■伊藤元長官の証人喚問必ず

 最後に、耐震強度偽装事件で、マンション販売会社「ヒューザー」の小嶋進社長との結びつきが指摘されている自民党の伊藤公介元国土庁長官の証人喚問の対応が議論になりました。武部氏は「伊藤さんを何がなんでも守ろうとは考えていない」とする一方、「確度の高い違法、不法の疑いがなければ(証人喚問は)軽々にやるべきではない」と主張。冬柴氏は「政治倫理審査会、参考人招致、証人(喚問)という順序を踏むべきだ」と先送りをにじませました。

 市田氏は「当然私は証人喚問すべきだと思います。『住宅政策研究会』から一千万円の献金を受けているわけですから。それに口利きをやったということはすでに明らかになっている。国会の場で調べる必要があります」とのべました。


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