2006年2月12日(日)「しんぶん赤旗」
偽造キャッシュカード被害
なぜ? 心当たりない
「キャッシュカードも通帳も手元にあるのに大金をとられ、ショックです」――。兵庫県伊丹市の淡本潤子さん(52)=主婦=から訴えが寄せられました。偽造キャッシュカードによる預貯金不正引き出し被害です。十日には、金融機関に被害補償を義務付ける預金者保護法が施行。補償対策は進展しましたが、犯行そのものは、依然としておきています。(兵庫県 喜田光洋)
■兵庫・伊丹市 淡本さんの場合
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淡本さんと母親(76)は、伊丹市内のみなと銀行支店に口座をもっています。淡本さんは、パーキンソン病で歩行が不自由な母親を助けるため、昨年四月に母親のキャッシュカードをつくって預かり、代わってお金を何度かおろしていました。
■いま100万円が…
昨年十二月二十一日朝、淡本さん宅に、みなと銀本店(神戸市)から「お金が不審なおろされ方をしています」と電話が。前日の二十日、他行のATMを使って母親の口座から九十九万円が二回、この日は隣の宝塚市内のみなと銀ATMで七十三万七千円が引き出されたといいます。さらに、「あ、いま百万円おろされて、残高がマイナスになりました…」。合計三百七十一万七千円の被害でした。
「びっくりしました。同時に、なぜ、と思いました。カードは誰にも渡したことはないし、暗証番号も誰にもいってない。情報を盗まれた心当たりはまったくなく、偽造カードで引き出すことなどできるはずがない、と安心していたのに」
偽造キャッシュカード犯罪の従来のおもな手口は、「スキマー」という小型の磁気情報読み取り装置を使ってカードの磁気データをこっそり読み取り偽造カードをつくる、スキミングと呼ばれる方法。暗証番号は生年月日から類推するなどして、現金を引き出します。
最近頻発している新たな手口は、盗撮です。ATMに小型隠しカメラを設置し、入力する暗証番号やカードに記載されている口座番号などを把握して、偽造カードをつくるもの。昨年十二月、埼玉県信用金庫で四十五口座から三千二百五十四万円が不正に引き出されたのは、この方法とみられています。同じ盗撮にあったUFJ銀行などのカードは防犯のために秘密の番号が設けられていますが、同信金のカードにはこれがなく、盗撮した情報だけで容易に複製できた、とされています。
■原因不明のまま
預金者保護法が成立し、偽造・盗難キャッシュカード被害は、カードに暗証番号を書いていたなど本人に過失がある場合を除いて、原則として金融機関が補償することになりました。しかし、犯行は減っていません。銀行は、偽造が難しいICカードの導入など防犯対策を始めていますが、ばく大な費用がかかるため一気にすすむ状況ではありません。
淡本さんの被害はみなと銀が補償し、先月末に全額戻りました。しかし、どうやって偽造カードがつくられたのかは不明のまま。みなと銀は盗撮を否定しています。
淡本さんは訴えます。
「私のような被害は、注意のしようがないし、いつ誰が同じ目にあってもおかしくありません。ちゃんとした対策をとってほしい」

