2006年2月12日(日)「しんぶん赤旗」

シリーズ米軍再編 基地強化どこまで

岩国 常駐機アジア最多に

住民投票で問われる


 常駐百三十機に―。日米両政府は、昨年十月末の在日米軍再編に関する合意(「中間報告」)で、米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機部隊を米海兵隊岩国基地(山口県)に移転する計画を打ち出しました。強行されれば、常駐機数ではアジア太平洋地域で最大規模の米軍航空基地に変ぼうします。岩国市は「これ以上の基地強化には反対」として、住民投票(三月十二日)で市民の意思を問います。(竹下岳)


■艦載機移転の計画

図

 本紙の調べによると、岩国基地には現在、米軍機が五十―五十八機、海上自衛隊機三十四機が常駐しています。

 在日米軍司令部は、本紙の問い合わせに、厚木基地の空母艦載機部隊(六十六機)のうち五十八機が岩国基地への移転対象になっていると回答しました(日本政府の説明では五十七機)。また、岩国の海上自衛隊機十七機が厚木に移転することになっています。

 差し引きで岩国には百三十機前後が常駐。アジア太平洋地域で最多の航空機を擁する米空軍嘉手納基地(沖縄県)の百機体制を大きく上回ることになります。(表)

 しかも、常駐する米軍のジェット戦闘機だけでも約百機(九十九機)(嘉手納は五十四機。このほか約二十機のジェット機が常駐)。このうち、主力のFA18戦闘攻撃機は八十五機にのぼり、この中には、従来の型よりもエンジン出力が35%増大し、いっそう深刻な爆音被害をもたらす最新鋭のFA18E/Fスーパーホーネット二十六機も含まれます。

 加えて、米側は米海兵隊普天間基地(沖縄県)所属のKC130空中給油機十二機の移転まで要求しています。

■地球規模の拠点に

表

 岩国基地では現在、滑走路を沖合一キロに「移設」する新滑走路の建設工事(総事業費二千四百億円)が進んでいます。基地面積は一・四倍と大幅に拡張されます。厚木からの空母艦載機部隊の移転は「(二〇〇八年度の)滑走路移設事業完了後」(「中間報告」)とされており、「移設」工事が“呼び水”になっています。

 工事は、米軍機の「騒音や事故の危険の軽減」を建前に進められ、政府も「基地機能強化を意図していない」と説明してきました。厚木からの部隊移転は、政府の説明にもまったく反するものです。

 米軍が進めている海軍と海兵隊の航空部隊を統合運用する計画(TAI)も、厚木からの部隊移転の大きな理由です。

 この計画は「より少ない機数で(これまでと)同等またはより大きな戦闘能力を提供する」(米国防総省)のが狙いです。日本政府も、厚木・岩国の部隊統合で「柔軟な運用を可能にする」と説明し、作戦能力の向上を強調しています。

 厚木・岩国の両部隊はこれまで、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争などに参戦してきました。両部隊を一体的に運用し、戦闘能力を高めることで、岩国基地は文字通りの地球規模の出撃拠点として飛躍的に強化されることになります。

 加えて、米軍が計画しているハワイまたはグアムへの空母追加配備が実行されれば、米海軍佐世保基地(長崎県)が寄港地として重視され、岩国がその空母艦載機部隊の展開拠点になるとの指摘もあります。

■爆音拡大は不可避

 政府は、艦載機部隊の移転について騒音範囲予測図(コンター)を示し、人口密集地などの騒音被害は小さいと説明。岩国基地の滑走路「移設」工事が完成すれば「周辺住民の生活環境が現状よりも著しく悪化することはない」としています。

 しかし、自治体・住民からは疑問の声が噴出しています。政府も騒音範囲を左右する飛行ルートについては「日米両政府間で決定したものではない」とし、何の保証もないことを認めています。

 中国地方全域に爆音被害を及ぼしている低空飛行訓練も日常化される危険があります。

 厚木基地では、硫黄島でのNLP(夜間離着陸訓練)の直前に空母艦載機が激しい離着陸訓練を終日行い、爆音をまきちらしています。政府はこの事前訓練について「正確に把握していない」として、爆音の激増との因果関係を認めようとしません。しかし、この期間に住民の苦情が集中することは、政府が岩国市などに提出した資料にも明確に示されています。

■利権構造の解消が先決

 防衛施設庁による談合事件は岩国基地にも及んでいます。

 政府は厚木から岩国に千六百人の兵員が移駐するとしています。さらに軍属や家族が加われば、巨大な施設の整備が必要です。

 政府によると、米軍用住宅は一戸あたり約三千二百万円(家族住宅)、部隊の司令部などが置かれる隊舎は一棟あたり約四億一千万円です。

 格納庫や倉庫、弾薬庫、駐機場などをあわせれば、巨額の税金が費やされることは確実です。政府は、移転計画の前に、同庁の利権構造をただすことこそ必要です。


 日米両政府は、三月の在日米軍再編「最終報告」に向け、動きを強めています。重大な段階を迎えている今、米軍基地はどう再編・強化されようとしているのか、シリーズで見ていきます。


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