2006年2月10日(金)「しんぶん赤旗」
高速道を全線建設へ 国幹会議
ムダな道路 なぜつくる
首相の言明は空証文に
国土交通相の諮問機関である国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が七日、政府の高速道路整備計画の全線建設を決めました。道路公団民営化押しつけにあたって、「無駄な道路はつくらない」とした小泉純一郎首相の言明は完全に空証文となり、小泉「改革」の粉飾ぶりが、ここでも鮮明になっています。
国幹会議は、高速道路整備計画(九千三百四十二キロメートル)のうち、まだ工事に着手していない千二百七十六キロメートル区間の工事方式を検討しました。旧道路公団から衣替えした東日本、中日本、西日本の三高速道路会社に千百五十三キロメートル区間を建設させ、採算性に乏しい百二十三キロメートル区間については、国と地方自治体が税金を使って工事する「新直轄方式」に振り分けました。
とくに無駄遣いの批判が強い第二名神自動車道などごく一部の工事については、着工時期の判断を先送りしました。しかし、北側一雄国交相が「整備区間から落としたわけでない」とのべた通り、全線建設は不動の方針で、「一度決めた高速道路計画は止まらない」という状況です。
■無駄と浪費、採算性も無視
道路公団をめぐる問題で、大きく問われた問題は二つありました。
▽無駄と浪費を重ねて積み上げた道路公団の四十兆円にのぼる借金をどうするのか▽採算性も必要性も無視した高速道路建設計画をどう止めるのか――小泉首相は、道路公団の民営化さえすれば、すべての問題が解決すると言い張り、国会で「無駄な道路はつくらない」と宣言してみせました。
その“論理”はこうです。
九千三百四十二キロメートルの高速道路整備計画には、政府・与党の協議でさえ「抜本的見直し」を求める声があがる不採算路線もある。公団民営化によって、道路建設を民間会社がおこなう仕組みにすることで、民間のコスト意識が働き、おのずと不採算区間の工事は見送られる――。
ところが、七日の国幹会議を前に、国土交通省が各高速道路会社への工事の割り振り案をつくって根回ししており、各社の側はこれに異論を唱える余地などありません。もともと、民営化会社が建設を拒否しても、国交相が命じることができる仕組みになっているのです。実際、会議では日本経団連の奥田碩会長が「民営化会社の人が経営に責任をもつということが欠落している」となげくほど、国交省主導で、あくまで政府の計画通り無駄な道路建設を続けることが決められました。
さらに問題なのは、税金投入の「新直轄方式」による積み上げです。小泉首相はこれについて、「民間の会社ができる部分と、民間がやってくれないんだったら税金投入してでもつくりたいという地域がでてくる」(二〇〇四年二月、衆院予算委)とのべています。結局、いかようにも無駄な道路建設を継続できる仕組みがつくられたのです。
■巨額の借金をまわさせない
小泉首相は、道路公団民営化にあたって、四十兆円を超える巨額の債務を「四十五年間かけて返済する」と公約しました。それは、道路建設に税金を三兆円投入し、金利も4%という水準が続くことを前提にした、ガラス細工のような計画です。政府は、新たな道路着工をすべてやめれば、借金返済は三十五年間でできるという試算もあわせて提示しています。巨額の借金をこれ以上国民にツケまわししないためにも、無駄な高速道路建設に突き進むことは許されません。
高速道路整備計画そのものも全面的に見直し、新たな建設を凍結して、無駄と浪費を抜本的にあらためるべきです。
(T)

