2006年2月9日(木)「しんぶん赤旗」
どうみる まちづくり3法見直し
野放し 大型店に一部歯止め
大型店の歯止めない郊外出店が中心市街地の疲弊や都市の無秩序な拡散を引き起こしています。なんらかの規制を求める世論と運動におされ、小泉内閣はまちづくり三法の見直しに踏み切り、都市計画法の改定案を今国会に提出しました。実効あるものとなるかどうかが問われています。(大小島美和子)
■都市計画法改定
政府は、野放し状態の大型店出店を都市計画法の土地利用規制で抑制しようとしています。都市計画法は、土地を用途別に区分し、それぞれに建築できる建物の用途や規模を定めています。改定案は床面積が一万平方メートルを超える大型店について、建設してもよい区域を狭め、制限します。
工場のある工業地域や用途指定のない郊外への出店はできないとします。十二種類の用途指定地域のうち出店できるのは三地域となります。
また、開発を抑制するはずの市街化調整区域で、大型店建設を可能にする抜け道だった二十万平方メートル以上の大規模開発の特例措置を廃止します。
都市計画法の適用区域内の面積でみると、改定により大型店が出店できる地域は87%から3・5%に減少します。
しかし、一方、床面積一万平方メートル以上の大型店が都市計画法で定めた用途地域のどこに出店したかみると、地方都市では55%、三大首都圏では70%が商業系二地域と準工業地域です。これらの地域は改定案では出店が「できる」地域になっています(国土交通省の審議会資料)。制限地域がこれで十分とはいえません。とくに準工業地域は、さまざまな建物が混在し、大型店の出店が急増している地域です。
■規制に抜け道も
改定案は新たに出店規制した地域でも、部分的に規制をはずし、大型店の出店に道を開く仕組みを設けています。都市計画を補う地区計画に「開発整備促進区」を新設。そこでは、一万平方メートルを超える店舗の出店ができるようになります。
また、都市計画の提案者に開発業者を入れ、処理期間を短縮して、大型店のための用途変更をしやすくしています。
一方、出店が広域的影響を与える場合の用途変更は、都道府県の関与を強め、周辺市町村の意見を反映できるようにしています。また、同法改定を提言した国土交通省の審議会報告は、規制を解除する際には、住民参加と公正・透明な都市計画手続きを求めています。
■立地法見直さず
今回のまちづくり三法の見直しは、「商業調整の禁止」条項(一三条)をもつ大規模小売店舗立地法(大店立地法)には手をつけていません。
同条項は、大型店出店が既存商業に与える影響をみて、出店の調整をすることは競争を制限するとして、大型店の抑制策をとろうとする自治体の手足を縛ってきました。都市計画法の十分な運用を妨げるものであり、廃止が必要です。
欧米諸国では、地方に規制の権限を与え、大型店の出店は抑制または厳しく規制しています。
日本共産党は一九九八年のまちづくり三法制定の国会論議で、大店立地法や現行都市計画法が「大型店の出店を規制する歯止めにはまったくなり得ない」(吉井英勝議員、同年四月十六日の衆院本会議)と指摘。山下芳生参院議員(当時)らが大型店出店に欧米並みの規制を求める日本共産党の修正案を提案しました。二〇〇四年五月には国会議員団が「大型店・商店街・まちづくりに関する政策提言」を発表。大型店の出・退店にルールを設け、自治体が自らまちづくりについて決める権利の尊重を求めています。
■世論におされて
歴代政府と自民党は、米国政府と日本の流通大手の要求に沿って、一九九〇年代以降一貫して大型店出店の規制を緩和してきました。大規模小売店舗法(大店法)を弱めて九八年にはついに廃止を決定(二〇〇〇年施行)。大型店出店を個別に規制する機能をなくしました。
一方、政府は、現在のまちづくり三法(大店立地法=大規模小売店舗立地法、改定都市計画法、中心市街地活性化法)をつくり、大型店の出店抑制は「都市計画」の手法でおこなうとしました。
しかし、これは大型店出店の歯止めとはなりませんでした。大型店は郊外で増え続け、何万、何十万平方メートルもの敷地をもつ大型店も乱立。その影響を受けて、中心市街地の商店街や百貨店、スーパーが店舗を閉め、寂れる事態が各地で相次ぎました。大型店の撤退も各地で問題となっています。
この事態を受け全国の商業者や自治体関係者、住民から大型店の出店規制を求める強い声があがりました。政府は是正を迫られ、今回の法改定提案に至りました。
しかし、見直しと改定法案策定では、流通大手や財界代表が規制強化に強く反対。昨年十二月には、経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)で、奥田碩トヨタ自動車会長(日本経団連会長)ら民間議員が「構造改革に逆行する」などとして法改定過程に横やりを入れています。
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■大型店規制関連年表
1973年 大店法制定(74年施行)90年 米国、日米構造協議中間報告で大型店出店調整期間の1年程度への圧縮を要請
91年 大店法による商調協・事前商調協を廃止
94年 1000平方メートル未満の大型店の出店原則自由化
97年 米政府、規制緩和要望書で、日本政府に大店法の廃止を要求
98年 大店法廃止・まちづくり3法成立
2000年 同3法施行
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