2006年2月5日(日)「しんぶん赤旗」

日米上陸訓練

危険増す“殴りこみ”部隊化


 先月末まで米国西海岸で陸上自衛隊と米海兵隊の共同上陸訓練が行われました(一月九日―二十七日)。

 訓練は、「島嶼(とうしょ)防衛」を理由に、米海兵隊の手ほどきで、陸上自衛隊が強襲上陸能力を身につけることを目的にしたものですが、自衛隊の海外での戦争態勢づくりを加速させることにもつながります。アジア諸国民の対日警戒心を大きくさせ、地域に緊張を持ち込むことにもなります。

■中国をけん制

 陸上自衛隊が渡米して、上陸訓練を行ったのは初めてです。米海軍コロラド基地(カリフォルニア州サンディエゴ)の海岸で、百二十五人が戦闘服に防弾チョッキやライフジャケットを着用、銃を持ってゴムボートを操り、強襲上陸作戦の訓練をかさねました。

 この上陸訓練について、地元紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙は「中国への対抗意識が高まるなかで力を誇示することになりかねない」、「日本が小島を奪われたら、取り戻すことができることを中国に警告するためのもの」と指摘しています(一月九日付)。日本でも「南西諸島への侵攻を想定した訓練」との指摘もあります(「琉球新報」昨年十二月二十一日付)。

 上陸訓練が中国への軍事的けん制だとする見方には根拠があります。「防衛計画の大綱」(二〇〇四年十二月)は、日本への本格的な侵略の「可能性は低下」としながら、「島嶼部に対する侵略への対応」と記述しました。防衛計画の前提となる日本をめぐる情勢分析は、「核・ミサイル戦力や海・空軍力の近代化」「海洋における活動範囲の拡大」をあげて、中国の「動向には今後も注目」すると明記しています。中国を事実上仮想敵扱いする重大な記述です。

 しかも、小泉政権は、額賀防衛庁長官が、中国と台湾との間の紛争に米軍が介入した場合、自衛隊が「対応していく」(〇五年十一月)とのべ、麻生外相も、中国は「軍事的な脅威になりつつある」(〇五年十二月)とのべています。

 これでは、小泉首相の靖国神社参拝の強行によって行き詰まっている中国との関係を改善するどころか、悪化させるだけです。小泉政権は、日中関係に、軍事的な緊張要因を持ち込み、対立をあおるようなことをすべきではありません。

■「遠征」に参戦

 日米上陸訓練は、ブッシュ政権がすすめる地球的規模の米軍再編を具体化するという点でも重大です。

 米政府は、同盟国に「海外展開でほんとうに使い物になる部隊の確立」を求めています(〇三年十二月 ファイス米国防次官=当時)。世界のどこでも先制攻撃戦争を行えるようにするためです。「遠征作戦の共同訓練」重視もそのひとつです。陸上自衛隊が、“殴りこみ”部隊である米海兵隊の上陸訓練に参加し、上陸作戦能力をもつのは、アメリカいいなりに海外で米軍とともに上陸作戦ができるようにするためです。

 憲法九条の改悪をあてこんで、いまから海外で武力を行使できるようにする自衛隊の侵略的強化は絶対に認めるわけにはいきません。

 アジアでは平和の流れが大きくなっています。日本も加盟する東南アジア友好協力条約は、「紛争の平和的手段による解決」を明記しています。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認の憲法をもつ日本の出番です。

 日米軍事一体化による軍事同盟の侵略的強化は、アジアと世界の流れと日本の役割に背くものです。(山崎静雄)


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