2006年1月30日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論 市田書記局長の発言(大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は二十九日、NHK「日曜討論」に出席し、ライブドア事件と社会格差の広がり、耐震偽装事件、米国産牛肉の輸入問題などについて各党代表と討論しました。他党からは、自民党・逢沢一郎幹事長代理、民主党・鳩山由紀夫幹事長、公明党・太田昭宏幹事長代行、社民党・又市征治幹事長が出席。司会は山本孝・NHK解説委員。


■ライブドア事件――

■規制緩和路線にメス入れてこそ改善策でる

 ライブドア事件と小泉「構造改革」路線とのかかわりが議論になり、逢沢氏は「小泉構造改革のせいで事件がおきたというのは結びつけちゃいけない議論だ」などと発言。市田氏は次のように述べました。

 市田 私は、たまたま堀江(貴文ライブドア前社長)さんという人が法律を悪用したということだけではないと思います。堀江さんのような人物を生み出した構造的な問題ですね。一連の商法「改正」で株式分割や株式交換を可能にした。投資事業組合も活用されましたが、これは全部一連の商法「改正」でやられたわけですから、そういう小泉「構造改革」の規制緩和路線の行きつくところが今度の事件だと思います。堀江さん自身が「小泉構造改革のおかげで規制緩和がやられて仕事がやりやすくなった」と。安倍(晋三)官房長官は「小泉構造改革のおかげで堀江さんのような人物が生まれた」とおっしゃっている。両々相まってああいう人物が生まれたわけで、私は小泉「構造改革」の申し子が堀江さんだと(思います)。そこが本質で、そういう規制緩和路線にメスを入れないと改善策も出てこないと考えます。

 鳩山氏は「規制緩和の方向は間違いではない」との立場を示しました。

■社会的格差の拡大――

■政府・与党は国民の痛みがわかっているのか    

 社会格差の広がりについての認識を問われ、各党は「競争すればその時点で勝ち負けが出るのは確かだが、強い人、能力のある人が、まず先頭に立って日本を引っ張っていくという方針は間違っていない」(逢沢氏)、「格差のデータは出ているが、何故にそうなっているかの分析が必要だ」(太田氏)などと発言しました。市田氏は次のように述べました。

 市田 国民の実感、思い、痛みをまったく理解されていない議論だと思います。二〇〇一年以降だけでも、正規労働者は三百万人減っているんです。自然現象じゃないんですよ。派遣労働の自由化(などが)、いわゆる規制緩和万能、「官から民へ」と(いって進められてきた)。鳩山さんは「(規制緩和の)方向はいい」とおっしゃいましたが、私は方向そのものが間違っていると思うんです。何でも「官から民へ」、規制緩和や競争さえすればすべてよくなるという考え方が、こういうことを生み出しているところに問題がある。いま非正規労働者は、働いている人の三人に一人ですよ。若い人の二人に一人、女性の二人に一人は非正規労働者です。年収はだいたい百数十万円でしょう。生活保護世帯は百万を超えている。教育扶助や就学援助を受けている人は、一九九七年以降で6・6%から12・8%へと倍になっています。結婚もできない若者が増えている。若者の暮らしが大変ということと同時に、将来の日本を考えても、少子化の大きな要因にもなっているわけで、私は「格差が広がっていない」なんて認識は、本当に痛みが分かっていないんじゃないかと思います。

■耐震偽装事件――

■競争原理だけ優先、ルール緩和が大きな原因

 耐震偽装事件に議論が移り、鳩山氏はここでも「規制緩和が行き過ぎた」などと発言。司会から「規制緩和の方向はいいというなら、自民党との一番大きな違いは」と問われ、「ムダ遣いは減らすが、公の部分を誰が支えるかというときに、愛情や道徳というものを政治のシステムの中に入れる必要がある」と述べました。逢沢氏や太田氏は「ルール違反を見抜けなかったのが問題」として、「監視強化」を主張。市田氏は次のように述べました。

 市田 国民の命や安全にかかわるような大事な問題ですが、九八年の建築基準法の改悪で、建築確認を民間に丸投げするという規制緩和をやった。私たちはこれに反対しました。こんなことをやれば公平・中立性が失われるし、安かろう悪かろうということになるんじゃないかという指摘をしました。私たちは何でも官がやればいいなどと思っていません。しかし、国民の命や安全にかかわるような問題まで民間に丸投げしてしまうと、結局競争原理だけが優先して(安全がないがしろにされて)しまう。一番の根本は、九八年の規制緩和です。

 しかも、その結果、検査機関にはゼネコンや住宅メーカーが出資してつくったものまであるわけですよ。自分でつくった物件を自分で検査する。不正が起こるのは当たり前で、ルールを踏みにじったことも大きな問題だが、競争のルールを緩和して何でもありということにしてしまったところに大きな原因があると思っています。

 耐震偽装マンションを多数販売してきた「ヒューザー」の小嶋進社長を国土交通省に引き合わせた自民党の伊藤公介・元国土庁長官の証人喚問について、与党は「何でもかんでも喚問が適当なのか」(逢沢氏)、「慎重にやるべきだ。政治家の説明責任には会見、政倫審(政治倫理審査会)などいろいろな段階がある」(太田氏)などと消極的な姿勢を示しました。市田氏は次のように主張しました。

 市田 「何でもかんでも」なんて誰もいっていない。これだけ国民の命と安全が脅かされている。伊藤公介さんには住宅政策研究会から、九九年から〇三年までの間に、政治資金収支報告によると一千万円の献金がされているわけです。この住宅政策研究会にはヒューザーの小嶋さんも入っている。そこから献金を受けて、国土交通省に小嶋さんを引き合わせたわけですね。この間の記者会見では「引き合わせたけれども、何が話されたか自分は全然知らない」と(いわれた)。国民の誰が信じるでしょうか。そういう疑惑が持たれている以上、堂々と国民の前で(語るべきだ)。政倫審は非公開で、本人の弁明の場なんですよ。やはり偽証すれば偽証罪に問われる場で、何もやましいことをやっていないというなら、堂々と証言されるべきだと思います。

■輸入牛肉問題――

■米になめられる姿勢で国民の命まもれるか

 米国産牛肉に危険部位がついているのが発見された問題で、与党は「食品安全委員会が慎重に議論を重ねて結論を出した。日米で合意したルールが守られていなかったことが遺憾千万だ」(逢沢氏)などと述べました。市田氏は次のように政府の責任を追及しました。

 市田 二つ大きな問題があると思います。

 (ひとつは)「二十カ月未満」と「危険部位の除去」の二つの条件がアメリカ側に守られる条件がなかったと思うんですよ。もともとそういう体制がアメリカにないことは明らかでした。食品安全委員会ももろ手を上げてオーケーではなく、懸念を表明されていた。それなのに輸入再開を認めた。しかも(ふたつめに)、日本政府の代表が十二月に査察に行かれて「大丈夫だ。適切だ」といった直後にこれが起こっているわけです。責められるべきはアメリカだというのはもちろんありますよ。しかし日本政府もアメリカいいなりになって、とにかく輸入再開ありきが先行したところに大きな問題がある。

 今度輸入した四十一箱のうち、十三箱を調べられたんですよ。そのうち三つの箱から背骨が出てきた。農水省の検査基準は輸入量の0・5%でいいと。今度は再輸入後初めてなので、たまたま上乗せして十三箱検査したんですよ。それで見つかった。農水省の基準のままだったら見つかっていなかった可能性だってあるわけです。日本政府には何の責任もないようなことをいって、アメリカだけが悪いんだと(いうが)、アメリカも悪いけれども、日本政府の弱腰、アメリカいいなりが大きな問題だと思います。

 また、今後の対策について次のように発言しました。

 市田 アメリカの牛は出生の履歴がまったくないわけですね。全頭検査をやるべきだ。それから危険部位の完全除去をきちっとやるべきだ。今度の事件が起こってから、アメリカの担当者は何といっているか。「交通事故の確率よりも低い」といっているんですよ。なめられているんですね、アメリカに。なめられるような弱腰な姿勢で国民の命を守れるのか。相手がどういう国であっても、日米同盟だということでこんなことまで遠慮して物をいわないのは間違っている。

 それから、調べてみて驚いたんですが、輸入牛肉の査察にかかわる職員は農水省にたった二十三人です。厚労省に二人で、あわせて二十五人しかいないんですよ。これでは、日本も安全を検査する場合に難しさがあるわけで、これも「官から民へ」(の弊害)で、公務員減らしばかりやらずにこういうところをもっと増やさないといけないと思います。

 他の野党も「牛肉や加工品への原産地、BSE検査結果の表示の徹底や、アメリカの牛の生年月日の確認を義務づける法案を作りたい」(鳩山氏)、「日本の基準をアメリカに約束させ、査察もしっかりしなければ輸入再開すべきでない」(又市氏)と主張。与党は「基本的に日米合意をアメリカが守ることに尽きる」(逢沢氏)と述べるにとどまりました。

■今後の国会対応――

■暮らし・米軍再編・憲法大いに議論したい 

 最後に今後の国会にどうのぞむかについて、市田氏は次のように述べました。

 市田 (〇六年度予算案は)定率減税の廃止、高齢者医療制度の改悪などで二・七兆円の負担増ですね。小泉内閣になって五年間の予算編成を見てみますと、その期間だけで負担増が十三兆円にもなっているわけですね。一方で大企業への減税は温存して拡大する。公共事業のムダ遣いには全然メスを入れていない。こういうやり方を改めて、とるべきところからきちんととって、医療や福祉や雇用にきちんと責任を持つ。

 それから米軍再編が大きな問題になってきています。地球的規模でアメリカのやるような先制攻撃の戦争に日本が軍事的に共同で行動できるようにしていこうと。それから、米軍基地の移転の費用まで日本国民の税金で負担させるという異常なことがやられようとしているわけです。これらは憲法とも矛盾する。

 憲法問題も、国民投票法案がいよいよ出されようとしていますけれども、自民党が大会で憲法九条二項を変えることを決めたわけで、海外で再び戦争をする国にしないための議論も大いにやっていきたいと思います。


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