2006年1月27日(金)「しんぶん赤旗」

緊張連続の遠距離通勤

NTT見せしめ配転

通信労組組合員が同行手記


地図

 NTTが二〇〇二年五月、十一万人に及ぶリストラを強行し、「五十歳退職」に応じなかった労働者に見せしめの広域配転や嫌がらせを繰り返しました。あれから四年。当時、群馬県で働いていた飯野和子さん(55)と金子恵美子さん(57)は、いまも埼玉県内の職場に長時間通勤を余儀なくされています。これに対し、全労連NTTリストラ闘争本部と通信労組は十九、二十の両日、「主婦であり、家庭を守りながらの長時間通勤を余儀なくされている二人を早期に群馬に戻し、当たり前の生活ができるように」と、NTTの身勝手を告発する「遠距離通勤体験ツアー」を実施。体験した同労組の笹本さつきさん(56)に手記を寄せてもらいました。


■乗り換え3回

 午後五時半。埼玉県志木市にある職場を出て、暗くなった路地から路地へ脇目もふらず小走りに進む飯野さん。追いかけるが、ついていくのが大変。駅前の小さな通りを車の間をぬって渡る。東武東上線・JR武蔵野線・埼京線を乗り継いでJR高崎線へと乗り換え三回。通勤ラッシュの人ごみのなかを必死に二人を追いかける。

 金子グループは高崎線に、飯野グループは上越・長野新幹線に。飯野さんは一本乗り遅れると、次の列車まで二十分も待たなくてはならない。

 金子さんは最寄りの籠原駅まで四十五分。六つ手前の北本駅くらいから座れるようになり、三つ手前の吹上駅で全員が座る。籠原駅から約五分ほど暗いシャッター通りを歩き、駐車場へ。バスの便はなく、ほっとする間もなく十四キロをマイカーで約三十分かけて自宅(大泉町)に到着した。

 金子さん宅では、地元の「金子さんを支援する会」のみなさんが心づくしの料理や地酒、手打ちそばを用意してくれ、交流会がもたれました。

 毎回の裁判にバスを仕立てて傍聴に参加している「支援する会」のみなさんから「健康で文化的な生活をはく奪されている。力を出して、地元に戻れるよう私たちも頑張りたい」と力強い支援の言葉がおくられた。

 金子さんの夫、光国さんは「母ちゃんの勤続三十年式典に夫婦で招待され、NTTはいい会社だと思っていたら、二年と経たないうちにこのリストラ。『二人でヤルベ』と決意した。母ちゃんを勝たせたい」。恵美子さんも「これが私の生きざまだから、頑張っていきたい」と支援へのお礼と決意を語った。

 交流会で午前五時半起床を確認。ツアー参加者は緊張のうちに就寝。

■定期代年100万

 翌朝、「支援する会」ご夫婦も参加。信号待ちで日の出を見る。籠原駅で車両が五両連結され、全員大宮まで座れる。大宮着八時四分。埼京線、武蔵野線、東上線と乗り継ぎ八時四十二分に志木駅着。志木駅前では、全労連・通信労組埼玉支部・東京支部の仲間の駅頭宣伝に合流。群馬県労会議の参加者は「今日、起きられるか心配だった。この緊張感をいつも味わっているのかと思うと、気の毒に思う。会社は年間百万円もの定期代を出して何を考えているのか。裁判にはバス一台で乗り込みたい」とあいさつ。

 志木駅から職場の埼玉センタまでは、徒歩で約十分。九時半から、埼玉センタへ要請し、総務課長が対応した。

 全労連の寺間誠治幹事が「飯野さん、金子さんは主婦であり、家庭を守りながら、四年間も長距離通勤を余儀なくされている。何としても地元に戻してほしい。持ち株会社や地元事業所にも要請しているが、職場で動いてもらうことが大事だ」と要請の趣旨を説明。総務課長は「上長から話は聞いているが、人事はセンタでは決められない」としながらも、「おっしゃることは十分わかった。きちっと上に伝える」と回答した。

 「体験ツアー」参加者からは、乗り換えが多いことや、必ずしも座れるとは限らないこと、運よく座れても眠ったりする時間はないこと、最寄り駅からはマイカーで自宅まで緊張を強いられる大変な通勤だ―と感想が出された。全労連闘争本部・通信労組は、引き続き飯野・金子さんを地元に戻す一万人署名にとりくむ。


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