2006年1月24日(火)「しんぶん赤旗」
“錬金術”進めた規制緩和
逮捕の堀江氏と蜜月自民
■追い風になつた小泉政治
時代の寵児(ちょうじ)ともてはやされ、「不正ぎりぎりのところを進んできた」(証券市場関係者)ともいわれるライブドアの堀江貴文社長がついに逮捕されました。
関連会社が自社の株価をつり上げるためにウソの情報を流す、決算で売り上げや利益を水増しするなどの不正にかかわった疑い。株価を上げるためには「何でもあり」の堀江流“錬金術”に本格的な司法のメスが入ることになりました。
不正の追い風となったのは、小泉内閣と財界が一体となって進めた小泉「構造改革」=規制緩和路線です。
自社株と相手企業の株を交換して企業を買収することができるようになったのは、一九九九年の商法「改正」からでした。
子会社の設立や企業の買収を容易にしたいという財界・大企業の強い要求に沿ったものでした。
株価を上げる“錬金術”である株式分割も二〇〇一年の商法「改正」で、それまであった規制がなくなり、野放しになりました。
そもそもこの制度は、一投資当たりの単価を下げて、多くの株式を多くの投資家に買ってもらうためのものでした。
ところが、ライブドアのやったことは本来の趣旨からははずれ、「突出した異常なもの」(証券業界関係者)でした。株式を百分割するなど株式分割を繰り返すことで株価を引き上げ、株式の時価総額(発行株数に株価を掛けたもの)を増やしました。
こうして規制緩和の流れに乗り、法律の盲点をくぐるようにしてのし上がってきたのがライブドア。「適法だが脱法」といわれつつ、急成長を続けるため、その法も犯した疑い。今、問われているのは、マネーゲームに突き進んだ新興企業の犯罪とそれを生み出した小泉政治そのものです。(矢守一英)
■首相、まだ「別問題」か
ライブドアの堀江貴文社長逮捕の数時間前、小泉純一郎首相は、昨年の総選挙で自民党が同社長を全面的に支援したことについて、「自民党幹部が応援したこととは別の問題だ」(二十三日の衆院本会議)と開き直りました。
しかし、「人の心はお金で買える」と豪語してきた堀江氏を「勝ち組」のリーダーとして天まで持ち上げ、党運営にその協力を仰ぐことまでした小泉・自民党の責任は免れません。
「小泉内閣が構造改革をすすめなければ、堀江氏は出てこなかった」(安倍晋三官房長官)と認めるように、堀江氏が“錬金術”として行った株式分割や株式交換などを可能にする規制緩和を進めたのは自民党政治でした。その反省もなく、事件が発覚したいまでも小泉首相は「官から民へ」といっそうの規制緩和をやろうと叫んでいるのですから悪質です。
その意味で、堀江氏が昨年の衆院選で広島6区から無所属とはいえ、自民党の全面支援を受けて出馬したのも“必然”といえます。
自民党本部で行われた出馬の記者会見には武部勤幹事長が同席し、「考え方はわれわれと同じ」と全面支援を強調。小泉首相も「政治に関心がない層も堀江氏が出馬すれば関心を持ってくれる。エールを送りたい」と持ち上げました。
選挙後も、武部氏は「今後党の運営に関して、堀江さんのアイデアを提供していただければありがたい」とアドバイスを求めました。ライブドアが昨年十一月に発行した雑誌では、堀江氏と武部氏が対談。自民党内からも「堀江氏を『政府保証』した形になった」(加藤紘一元幹事長)の指摘もあります。
「堀江貴文氏と小泉政治はウリ二つの『合わせ鏡』」(経済評論家の内橋克人氏、「朝日」二十一日付)とも指摘される今回の事件。自民党と堀江氏の逮捕は「別の問題」どころか、切っても切れない関係なのです。(高柳幸雄)
■自民幹部らの堀江氏応援語録(肩書は当時)
小泉純一郎首相「新しい時代の息吹ってのかなあ。何か新しい雰囲気、感じますねえ」(「朝日」八月十七日付)
安倍晋三幹事長代理「小泉内閣が構造改革を進めなければ堀江氏は出てこなかった。自民党が変わったことが分かる」(八月十七日のTBS番組で)
小泉首相「君のような若者が政治に入ってくるのはすばらしいよ」(八月十九日党本部で、「朝日」八月二十日付)
竹中平蔵経済財政担当相「役人天国、重税国家がいやなら民営化しましょう。小泉首相、ホリエモン、私がスクラムを組みます」(八月三十日尾道市での街頭演説、「朝日」八月三十一日付)
武部勤幹事長「テレビで見ていたときの彼は生意気だったが、実際に会うとすばらしい若者だった。彼の可能性は誰にも負けないと思う」(九月八日尾道市で、「産経」九月九日付)
武部幹事長「(堀江氏に)党改革で知恵を貸してもらいたい」(「読売」十月四日付)
小泉首相「(堀江氏は)次の選挙に出るといっているようなので、しっかりとした対応、アドバイスをしたほうがいい」(「産経」十月四日付)
武部幹事長「堀江君は、素晴らしい青年だと思うな。少年のように、無限にいろんなものが広がっていく感じがある」「経験も豊富だし、いろいろと勉強もしてるし、ネットワークも広いし、そんな中で、瞬間的に自分が必要なものをキャッチできるよね。そこには、先天的なものがあるなあ」(これに堀江氏も「小泉内閣の規制緩和のおかげで、非常に商売がしやすくなっています」などと応じる)(ライブドア作製パンフ二〇〇五年冬号での対談から)

