2006年1月23日(月)「しんぶん赤旗」

追及 米軍再編

変質する日米共同演習

米揚陸艦使い上陸訓練


 「鉄拳のごとく強靭な意志と体力で厳しい訓練をやり遂げるという意味で名付けられた」

 「鉄拳(アイアン・フィスト)作戦」と名付けられた陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練が九日から二十七日まで、米海軍コロナド基地(カリフォルニア州サンディエゴ)などで行われています。

 自衛隊の準広報紙「朝雲」十九日号は、その「厳しい訓練」の様子を「『水陸作戦の基礎を徹底的に叩き込んでやろう』とする教官役の海兵隊員と、技術をどん欲に学ぼうとする陸自隊員」と紹介。訓練に参加した海兵隊一等軍曹は、同紙で「陸自隊員はよく学び、素晴らしい。将来が楽しみだ」と語っています。

 米軍と自衛隊が一体となって海外での共同作戦を可能にする態勢づくりを進める在日米軍再編―。その下で日米共同演習・訓練も大きく変質しています。

 「鉄拳作戦」では、米揚陸艦を使っての強襲上陸訓練まで計画しています。米軍事専門紙「マリンコー・タイムズ」五日付電子版などによると、陸自部隊は、ドック型揚陸艦カムストックに乗り、エアクッション型上陸用舟艇(LCAC)で上陸訓練を実施。カムストックの出港は二十四日ごろで、訓練では海岸への夜間急襲を想定しています。

 計画通り実施されれば、海外で米揚陸艦を使っての初の本格的な上陸訓練になります。

■計画先取り “戦える軍隊”へ

■共同図上演習にも変化

 「鉄拳作戦」で、米側は「われわれは彼ら(陸自)に、海兵遠征隊(MEU)が行うのと同様のひとまとまりの小規模訓練を体験させる」としています(「マリンコー・タイムズ」五日付電子版)。海兵遠征隊とは、六時間以内に出動可能な即応態勢を維持し、特殊作戦能力も持つ、文字通りの海外“殴り込み”部隊です。

 訓練に参加している陸自部隊は、長崎県佐世保市にある相浦駐屯地の西部方面隊普通科連隊の百二十五人。同市の米海軍佐世保基地には、強襲揚陸艦エセックスをはじめ、四隻の揚陸艦が配備されています。このうち二隻(フォート・マクヘンリーとハーパーズ・フェリー)は、「鉄拳作戦」で陸自部隊が乗り込む予定のカムストックと同型艦です。

■統合任務部隊に

 「鉄拳作戦」に部隊を派遣した西部方面隊は二十三日から、米陸軍第一軍団との日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ」(熊本県の健軍駐屯地)も予定しています(二月四日まで)。指揮所演習とは、実際に部隊を動かすのではなく、図上だけで行うものですが、この演習でも変化が起きています。

 第一軍団の基地フォート・ルイス(ワシントン州)の機関紙「ノースウエスト・ガーディアン」十二日付電子版は、今回の演習について「第一軍団が統合任務部隊の司令部として参加することが、これまでの演習とは異なる」と指摘。陸自の西部方面隊も「統合任務部隊・九州」として演習に参加するとしています。

 統合任務部隊とは、陸・海・空などの各軍のうち、二種類以上の軍で構成する部隊のことです。統合化が進んでいる米軍との共同作戦を強化するため、自衛隊もそうした部隊運用(統合運用)の態勢づくりを進めています。

 前出の「ノースウエスト・ガーディアン」によると、第一軍団は、今回の演習で「統合任務部隊オリンピア」を編成。同部隊は「主にカンザス州、ワシントン州、ハワイ、日本からの二千人以上の(米軍)兵士によって構成される」としています。第一軍団は「オリンピア」を実戦でもつくり、イラクに展開しています。

 同紙は、第一軍団のデュビック司令官が今回の演習について「われわれが太平洋のどこででも行わなくてはならない、多くの二国間での統合任務を訓練する良い機会だ」と述べていることも紹介しています。

 第一軍団の司令部は、昨年十月に日米両政府が合意した在日米軍再編計画で、「改編された司令部」としてキャンプ座間(神奈川県)への移転が狙われています。計画では、同司令部は「(海外へ)展開可能で統合任務が可能な作戦司令部」と特徴付けられています。海外への“殴り込み”専門の戦争司令部です。今回の演習はこうした計画を先取りするものです。

 しかし陸自は、前述の「鉄拳作戦」も「ヤマサクラ」も、訓練・演習の「細部についてはお答えを差し控えたい」として明らかにしようとはしません。

■海外で爆撃訓練

 陸自は昨年十―十一月、フォート・ルイスで、第一軍団所属の海外“殴り込み”部隊=ストライカー旅団から、イラクでの戦闘の教訓や方法などを実地で学ぶ市街戦訓練を行っています。同年七月には航空自衛隊が、グアムの米空軍アンダーセン基地とその近くにある空対地射爆場で、海外で初めての実弾を使った爆撃訓練も行っています。

 こうした共同演習・訓練は、在日米軍再編の下で、自衛隊が“戦える軍隊”になるため、米軍とのいっそうの一体化を図っている姿を浮かび上がらせています。(田中一郎)


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