2006年1月17日(火)「しんぶん赤旗」

基地の街から 米軍再編

70年の我慢 もう限界

神奈川・相模原市と座間市 自治体と住民一体で運動


 「基地の下で七十年、もう我慢の限界」「基地強化反対、早期返還を!」―。神奈川県相模原市の広報「さがみはら」昨年十二月号の一面の見出しです。十一月の緊急市民集会で会場いっぱいの千七百人が拳を振り上げる写真も目立ちます。在日米軍再編「中間報告」による米陸軍基地のキャンプ座間(相模原市、座間市)と、相模原市にある相模総合補給廠(しょう)の強化・恒久化に対し、自治体と住民が怒りの声をあげ、一体となって反対運動を繰り広げています。(洞口昇幸)


地図

 キャンプ座間のすぐ近くのアパートに住む女性(68)は「新司令部設置で、米兵が増えるなら女性や子どもの安全が心配です。私は何かあったら引っ越せるけど、家を持っている人の不安はもっと大きいでしょう」と語ります。

■撤回はがき日米政府へ

 相模原市では、市や議会、自治会連合会などでつくる「市米軍基地返還促進等市民協議会」(会長・小川勇夫市長)が昨年十二月半ばから、「中間報告」撤回を求める十万枚を超えるはがき運動を市民に呼びかけ、防衛庁と駐日米大使館に送り始めています。

 座間市でも、昨年末、米政府へ直接書簡を送りました。

 日米両政府が合意した「中間報告」では、キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部(米本土ワシントン州)を改編した新司令部(UEX)と、陸上自衛隊の海外派兵部隊を指揮する中央即応集団司令部の設置を計画。これに連動して、相模総合補給廠に、陸上自衛隊普通科連隊が配置されようとしています。

 相模原市、座間市の両市と住民らは、「中間報告」が公式に発表される以前から、基地強化・恒久化の動きに反対を表明。

 昨年夏までに集めた新司令部移転反対・基地返還などを求める署名は、相模原市(人口約六十三万人)で約二十一万人、座間市(同約十三万人)で約六万人にものぼり、日本政府も「重く受け止める」と言わざるをえませんでした。

 人口密集地帯にあるキャンプ座間(二百三十四・六ヘクタール、東京ドームの五十個分)や、JR相模原駅北側に広がる相模総合補給廠(二百十四・四ヘクタール)は、両市のまちづくりを妨げています。両市は「新しいまちづくりを進めたい」と、「市是」として基地返還を訴えてきました。

■まちづくり妨げている

 JR相模原駅の北側は、目の前が補給廠です。そのため、補給廠をはさんで北側の住宅街に住む市民は、補給廠の外側を遠回りして駅に行かなくてはなりません。

 補給廠の高いフェンスに沿って歩いていた女性は「駅側に行くにもいつも遠回り。本当に不便」と表情を曇らせます。

 相模原市の同「市民協議会」は、二〇〇四年三月に「相模総合補給廠跡地利用構想」を発表。全面返還を求めつつ、まちづくりにとって緊急に必要な部分として、すでに遊休化している補給廠の北側部分と相模原駅前の野積場部分を、旧県道の復活や地区道路の整備、鉄道の乗り入れを目的に一部返還を要求しています。同年十月には、キャンプ座間の外周部分やゴルフ場部分を道路整備や市民の憩いの場として利用する構想を示し、日本政府と米陸軍に要請しました。

 新日本婦人の会座間支部の鴨居洋子支部長は「キャンプ座間の中には、市内にはない広い競技場や文化施設がたくさんあります」と話します。

 しかし、「中間報告」は、両市民の基地返還への熱い願いに反して、基地の強化・恒久化を押しつけるもので、自治体や市民の怒りに火をつけました。

■署名軽視に憤り感じる

 補給廠近くに住む自営業者の男性(72)は「今でさえ、ヘリの離発着の音や早朝の基地内のトラックの音がうるさい。自衛隊が来たら、もっとひどくなるんじゃないか」と怒ります。

 相模原市自治会連合会の三橋豊会長はいいます。

 「戦前の旧日本陸軍のときから七十年。『もう基地の負担は嫌だ』というのが大多数の住民の気持ちです。日米両政府が二十一万人の署名を軽く見たことに大変憤りを感じています」

 同連合会では、今月二十九日、相模原駅前デッキで基地強化反対の市民集会を開き、各関係省庁に要望書を出すことを予定しています。「断固として、『中間報告』の撤回を求めます」。三橋会長は力を込めて話しました。市民あげての反対運動が、さらに広がりつづけています。

 ▼UEX 米陸軍が全世界への出撃=殴り込み=態勢を強めるため、編成を進めている最新鋭の司令部。自ら戦争の最前線などに出動して、陸軍以外の米軍部隊や他国の軍隊も束ね、実際の軍事作戦を指揮する「戦争司令部」です。イラクで多数の住民を殺害している「ストライカー旅団」などの部隊を率います。


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